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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス
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武具魔法付与研究クラブ

 レーンたちと別れ、ウェインは魔法学院に向かっていた。

 しかし『瞬活』 (しゅんかつ)。色々なことができる技術で魅力的ではあるが……魔法使いに使いこなすのは難しいのではないかと思っていた。

 瞬活で集中するのと、魔法で集中するのと、意識の上では被る。少なくとも上級魔法を使っている間には、瞬活で集中するヒマはなさそうだった。

 エルやアヤナに教えなかったのは、ウェインがテストとして選ばれたからだろうか。

 単純に、まだレーンはエルやアヤナを戦力として見ていないからだろうか。


 さて。『悪夢の草原』に出発する前に、ウェインはやっておきたいことがあった。

 ギルドで買ったショートソードだ。あれに魔力を流し込み、強化しておきたい。

 これはギルドでも街の武器屋でもできたことだが、ウェインは魔法学院で行うことにした。色々な部署が魔法の付与を行っているが、ウェインが目を付けたのは『武具魔法付与研究クラブ』(通称、付与研)だった。

 ここは部長とも知り合いだし、手堅い仕事をする。

 付与研のドアをノックし中に入ると、部長のジャンが手を挙げて出迎えてくれた。

 年齢は30歳くらいだろうか。彼は長年、魔法学院にいる。もう卒業か除籍じゃなきゃおかしいはずだ、と誰もが口を揃えて言う男。だが実際のところはよくわからない。ウェインの席が勝手に職員室にあるようなものかもしれない。


 彼とはウェインが魔法学院に入学した時からの付き合いだ。言わば最古参である。

「ウェインじゃないですか。どうしました?」

「久しぶり、ジャン。実はこの前、冒険者ギルドでショートソードを買ったんだけど」

「逸品ですか?」

「いや、安物。ただこの前サーベルが折れちゃって、まあ転向中だったしさ」

「え? あのサーベル折れちゃったんですか? あー、もっと強化しとくんだった……」

「敵の武器と力が異常だったから、まあしょうがないさ。で、このショートソードを強化してほしいんだけど」

 ジャンは目の前に鞘ごと出されたショートソードを、受け取った。

「ウェインのことだから、切れ味強化とかじゃないですよね」

「高質化だけでいいよ。少しでいいんだ。折れにくくなれば、それでいい。どれくらいかかるかな?」

「一晩でできますよ」

「いや、値段のほう」


 するとジャンは手を叩いた。

「新聞で読みましたよウェイン。国境線での戦いで大活躍したって」

 大活躍はしてないのだが。

「そこでウェイン、相談と行きましょう。このショートソードの鞘に、我が部のステッカーを貼るということは認めてもらえますか?」

「え? いいけど?」

「それと、誰かにこの剣について質問されたら、『付与研で付与した』って宣伝してください。そうすればお代はいりません」

「別に構わないけど……それだけでいいの?」

「はい。付与研は、街の武器屋や魔法の店、ギルドなんかに押されて、財政的には魔法学院の支援なしにはやっていけない状況です。だが先人たちのノウハウは山ほどある。そこらの武器屋の外注先じゃ付与できなくても、付与研ならできるなんてのは数多い。だからここは、世界の皆にもっと付与研のことを知ってもらうことが必要です。そのための広告なんですよ」


 ウェインは肯いた。

「ノウハウがあるのは知ってるよ。大量生産される『数討ち』とは違ったオーラ出るし。出来上がりもいい。でも、そんな広告だけでいいの? ステッカーだけ? 誰も見ない・聞かないかもしれないんだよ?」

「いいですよ。ウェインに協力してますって宣伝だけで、こっちもやれるんですからね。で、どうでしょう?」

 ウェインに断る理由はない。

「じゃあジャン、お願いするよ。近く『悪夢の草原』に行く予定だから、納期だけは頼んだよ。他は心配していない」

「任せてください。あー、でももっと時間があれば、色々といじれるのに」

「俺は基本、白兵戦なんかしないからさ。あ、そうだ。最近、腕利きの剣士と知り合ったんだ。今度紹介するよ。なかなか面白い剣を使っていたし、『付与研』にはもってこいかもしれないな。カネ払いも悪くないとは思うが……今度聞いてみる」

「ありがとうございます」


 こうして、ウェインのショートソードには多少の魔力が込められた。



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