作戦立案
さて、時を少し巻き戻そう。
日曜日の夜、実行する作戦の内容を練っていたそのさ中に。
そもそも、この事件は5時間目の体育の後に女子の下着が盗まれているという事に端を発する。
この状況には色々説明が必要なのだが、代々の伝統で、春先から夏休みまでは
女子はバレエ、男子は校外マラソンという男女分かれてのカリキュラムがあるのだ。
特に男子のマラソンは、熱中症の原因にもなりかねないし、事実この5年後にそれが問題となって廃止となっている。
が、この時期には廃止されていないので、当然この狂気のカリキュラムがある。
このマラソンもどちらかというとバレエをする女子と男子を離れさせるがための校外放流だったそうだ。
校外マラソンも、女子のバレエ演習の時間は男子どもを校外に放流するために考えられてはいる、一応。
まず、スタート時は全員点呼の上で校門から送り出されて、指定の4か所に設置されている紙切れを回収し
それを校門前にいる体育教師に渡すことでゴールとなる。
その4か所を通るには相応の距離があり、男子はそこを走らないと校内に戻れない、
つまり、紙を回収するために校外を走る必要があり、結果として女子のバレエの時間は男子は校外にいることになる、という設計だ。
なのだが、この設計が甘々で、4か所というのは毎回決まっているし、その箇所に無造作に置かれた箱に紙切れが入っているだけだ。
個人で動くという前提においてはこれである程度運用できるだろう。
だが、人が共謀するという脆弱性を全く考慮していない。
そのため、不良どもの間ではパシリに代理で紙を回収させて、
その間は時間をつぶして、パシリから紙を受け取ってあたかも走りましたと主張してゴールするというサボりに使われていた。
そして今回発生した下着泥棒もこの制度の穴を突いて行われたのだろう。
不良どもはパシリに紙を回収させ、彼らは裏口から行内に戻り、下着泥棒を行い
そのスケープゴートとして肉団子のカバンに、彼らの戦利品である下着の一部を忍び込ませる。
そして、問題発覚後の犯人捜しで肉団子のカバンから下着が発見される、と。
では、この状況を防ぐにはどうすればいいか。
不良の行動を止める?いや、俺にはその力はない。
不良の行動を修正する、そうだな、これだ。
奴らが肉団子のカバンに入れたその下着を奴らのカバンに返してやればいい。
それを遂行するには、マラソン時の紙切れ問題があるのだが、、、
軍資金として5000円札が確認できた。
これがあれば行けるだろう。紙切れの入っている無人の箱は当日の午前中に配置される。
であれば、昼休み中にタクシーで4か所を廻れば俺にも5時間目に校内にいる時間を作ることができる。
作戦としてはこんなもんだろう。
ノートにまとめた作戦を読み返し、作戦の成功を確信し、眠りについた。
そして迎える月曜日、事件当日。