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おまじない祓い  作者: 襟巻
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其の弐

毎日掲載しようかな

自宅のベージュ色のドアに鍵をかけ、私は歩き出す。平日の朝ということもあり小学生から社会人まで沢山の人が道を歩いている。私は少し背徳感を感じながらそそくさと歩く。病院までは徒歩約3分と近い。


子供のころから病みがちなのでこの物件を選んだのは正解であった。


そして、その病院まで行く途中で、私は彼と出会うのであった。永久に忘れる事の出来ない、彼に。


彼は、ふらふらになりながら歩く私を、その大きな目で見つめていた。身長は150センチほど、見た目は小学5年生程なのになぜか妙に服装が妙におじさん臭い、チェック柄の長袖のシャツに少し色の褪せたジーンズ。なにせこんな朝なのにランドセルを背負っていない。


―にしても、凄い見てくるなぁ。


少しはっきり言って怖い。目をこれでもかと開いているのに額に皴一つ寄っていない。目は背筋が凍るかのような黒。しかしどこか奥行きがあるような黒である。


そのおじさん臭い少年は此方を見る、いや睨んでいるかのような視線を向ける。


とその少年は私をまじまじと眺めたのち、にやり。と口角を引きつらせ、気色の悪い笑みを浮かべた。そして私の方へと歩み寄ってきた。


「嘘っ!?」


私は驚きと恐怖のあまり声が漏れる。


少年はその三日月のような不気味な笑みを見せながら近づいてくる。その口が開き、声を発しようとする前に私はその重たい体をたたきあげ、全速力で走った。


―やばかった、あのままじゃ…!


走りながら振り返り後ろを確認すると、少年はさっきまで私が居たところに棒立ちになりながら突っ立っていた。


―変質者…かな?嫌だなぁ。変なのに目ぇつけられられたくは無いなぁ。今度あの阿保に相談でもしようかなぁ?


ここでのあの阿保というのは親不知和尊のことである。


息を荒げながら走るペースを落とす。病院に到着したのだ。にしても疲れた。意識がふらりと遠のきそうになる。熱も上がってしまったかもしれない。全てあの少年が悪い。


―次会ったら覚えときなさい!会いたくないけど!


エレベーターの三階を押し病院へと向かう。このエレベーターの上昇時にかかる圧力でさえ私の体に対しての攻撃の様に思えるほどに体が重い。はぁ。と私は今までで一番深いため息をつく。


 時間は少し流れ、診察は終わり私はまたあのエレベーターの中にいた。


結果はというと熱がなければ仮病を疑われるほどに超健康体と言われるほど問題はなかった。

いや、正確に言うと体に問題がないという診断は、最悪である。


つまりは、熱が出ているのに原因がわからない。ということである。


医者には、あと三日この状態が続くようであれば入院も考えると言われた。


それだけは避けたいが…。


エレベーターのドアが開く。


さて帰るかと俯いていた顔を上げ家路に着こうとしたとき、目の前にとんでもない光景が飛び込んでくる。


目の前に居た。先ほどの少年が目の前に居たのである。


「ひっ!」


と私の口から悲鳴が漏れる。


矢張り少年は大きく見開いた目を私に向け、ニヤリと引きつらせた口を開こうとした。


私は、冷静にエレベーターの閉じるボタンを押した。


「あっ、ちょっと…」


と閉じてゆくドアの隙間から少年の声が漏れる。


思ったより清々しい声をしているのであるがそこら辺のB級ホラーより正直怖かった。


しかし、逃げ切ったかという安心もつかの間、エレベーターのドアが再び開く。


まあ、外にもボタンはあるから開くことはできるのであるが、私はそんなことを考えては居なかったので目を大きく見開き腰を抜かしてしまった。


―嘘っ!なんで…


そしてドアが完全に開ききったとき、私はその少年を見上げる形になってしまった。


これがただの変質者とか変態であれば、私は誘拐やらなんやらで人生終了のフルマラソンであるが、意外にも少年は腰を抜かした私にこう言った。


「狗神…ですか?そうですか、いいでしょう。」


「え?」


―…狗神?な、なんなんだこの人は!やっぱ頭おかしいよこの人!


「僕は全く持って正常ですよ。」


―嘘!?


少年は私の心の声をまるで本を読むかのように読み、私の心の中の台詞に的確な返答を返してきた。


私の恐怖レベルは既に、最大に達していた。


「な、な、なんで!私が今思ったことが…!解ったんですか!」


「僕、見えるんです。言霊が。」


「えぇ…」


―やっぱ頭おかしいよ!この人!


「まあ、おかしいと思うのも当然と言えば当然ですかね?」


―ほら又!


「でも、実際、現時点で僕はあなたの思ったことを二度も読んでいる。要するに僕という存在は、現実っ

てわけですよ。」


確かにその通りだと私は考える。


高熱もあるから夢かと疑ったが残念なことにこれは現実ということはあまりにもひどい頭痛のおかげで逆にさえた頭で完璧に理解していた。


確かに今私は覚醒状態、つまり起きて現実を生きているということだ。


―にしても先ほどから何なのであろう、狗神とか言っていたが…


意識が遠のきそうになる。


熱も病院で測ったときには既に39.7を示していた。


ふらつくのも当たり前と言えば当たり前である。


にしてもあまりにも辛い。私はどうする事もできずその場に倒れこんだ。呼吸が早まる。


「うわぁ、ちょっとやばいな。ひどいとは解っていたけどまさかここまでとは…。大丈夫ですか…まあ、そんな訳無いとは思いますが。」


―解っていた…?


「仕方ないですねぇ。特別ですよ、このまま死なれてもなんか気分悪いんで。ほら、手のひらを見せてください。」


「い、嫌ですよ…なんで見せる必要なんて…あるんです…か?」


私は燃えてしまいそうなほどの思考回路を何とか稼働させ言う。


「嫌も何も、見せていただかないと…って、嗚呼。気を失ったか。」


私は辛うじてこのセリフを聞いたのを最後に、目の前が真っ暗になった。

これで賞をとれる自信がない

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