ピーポーパーポー(ショートショート42)
ピーポーパーポー
毎日のように走りまわる、ピーポーパーポー。
昼夜を問わず走りまわる、ピーポーパーポー。
国道沿いにある我が家は、通りを走る車の騒音もうるさいが、ピーポーパーポーのサイレンに比べればはるかにましである。
「サイレンを鳴らさずに走らせてくれ」
オレは何度もお願いをしている。
けれども。
ちっとも聞いてくれやしない。
ピーポーパーポー
寝ている部屋にまでひびいてくる。
うるさくて眠れやしない。
夜勤のあるオレは、おもに昼間に寝るので安眠妨害なのだ。
ピーポーパーポー
サイレンの音が夢の中にまで鳴り渡る。
ピーポーパーポー
サイレンの音が聞こえてくる。
救急車が通りをやってくる。
我が家の中に入ってくる。
部屋の中に入ってくる。
狭い部屋の中を走る。
ピーポーパーポー
サイレンを鳴らしながら走りまわる。
――わあー。
オレに近づいてくる。
どんどん近づいてくる。
このままではオレに衝突する。
もう目の前だ。
人命救助の救急車に殺されてしまう。
――助けてくれー。
そこで目がさめた。
オレはフトンの上に起き上がった。
ピーポーパーポーが目の前にある。
「パパのおでこにぶつかっちゃった」
息子が走り寄ってきた。
――救急車のオモチャなんて、誕生日のプレゼントするんじゃなかったよ。
それからも。
ピーポーパーポー
ピーポーパーポーは狭い我が家を走りまわる。