プロローグ
いつの時代でも、人は自分の事しか考えていない。
そう思ったのはいつの頃だっただろうか。
今日もまた、ぬるま湯のような1日が始まる。
昼間に起きて、夕方からのバイト。
職場は良い人ばかりだし、すごく働きやすいと思う。
接客には自信があるし、サービス業自体は自分には合っているはずだ。
でも、この居心地の良い現状に甘んじてる事を歯痒く思う。
周りは就職して、そろそろ役職をもらい始める時期である。
そんな年齢になっても自分は、俺は俺に甘すぎる。
3兄弟の末っ子だし、甘やかされたせいだとか、今更そんな言い訳も通用するわけもなく、面接に行っては、
「この空白の時間は何をしていたのかな?」
これだ。
その空白の時間は、ただただダラダラとバイトしながら適当に生きていました。
なんて事を言えるはずとなく、社会の厳しさと甘え過ぎていた今までの自分への憤りを酒で誤魔化す日々を送っていた。
「あー、宝クジ当たんねえかな。」
こんな独り言がつい口から出てしまうのは許して欲しい。
それぐらいの夢は俺じゃなくとも、世間一般の人々は思っているはずだ。
バイトが終わって帰る時間には、酔っ払った学生、酔っ払ったサラリーマン、酔っ払った老若男女が電車にひしめき合っている。
「いいな。」と素直に思う。
学生達は友人と楽しく飲んだ帰りであろう。
社会人達は接待や、仕事仲間との愚痴の言い合いでストレスの発散をしてきたのだろうか?
彼等を見るほどに、
「ああ、なんて自分はどうしようもない人間なのだろう。」
と自虐に入り、またそれを忘れる為にコンビニでビールを買って、家で一人で飲むのである。
下らない考えをいつも通り思いつつ、行きつけのコンビニに着いた頃にはすっかり、AM00:00頃である。
今日も今日とて飲めればいいと思うような発泡酒と、少しのツマミを買い、寂しい我が家へと帰るだけ。
帰ってから何をしようか。やっている途中のゲームもあるし、見たい映画が配信されているはずだ。
相も変わらずしょうがない思考だが、少し浮かれた気分で帰っていた。
はずである。
一瞬の瞬きと同時に、自分が先ほどまでいた行きつけのコンビニの駐車場ではなく、薄暗く少し薬品の匂いがする、窓のない部屋にいた。