恐怖─きょうふ─
──窪みが2つ、ジッと見詰めてくる
イスに座らされ、手足はイスに縄で固定され拘束されて動けない。
口にはギャグボールが咥えさせられ、叫び声も満足に上げられない。
暴れてもイスがガタガタと揺れるだけで、何の抵抗にもならず、目の前の恐怖だけが脳内を占領する。
《クワァ……カカカ》
声なのか鳴き声なのか、目玉のない女の子の姿をした怪物は口を大きく開けて、人とは思えない音を発しながら近付いてる来る。
「んん゛、んんん゛ーっ、ん゛ん゛ーっっっ!!!」
嫌々と首を振って暴れて抵抗を示すが、声も出ず無駄な抵抗だと悟ってしまう。
けれど、それでも目の前の恐怖には耐える精神力は、平凡な日常を過ごしていた女の子にはあるはずもなく、ただただ死に迫るのを受け入れられずに圧迫する恐怖に涙が頬を濡らす。
《カカ、カカ……クワァ──カ》
んふー、んふー──呼吸が出来ず、鼻息が荒くなる。
心臓はバクバクと割れそうな程に脈を打って昴る。
怪物は肩を両手で掴み、大きく開けた口──歯も舌もない鈍い赤色の空洞を見せ付け距離を更に縮めて来る。
瞬間、危機に瀕した時の中、どうしてこうなったのか……走馬灯の様に脳内はグルグルと時を遡る──