入学式
今日は入学式。
そう、俺。真田弘樹が中学生になる日だ。
新しい教室、友達、空気、匂い。
数々の物に期待と不安で胸がいっぱいになるほどの緊張感で入学式を終えた。
小学校なら長々しくただただ面倒臭いだけの校長先生の話さえも、なぜか今日だけは新鮮であった。今日から新しい中学生生活が始まるのかと思うと楽しみが膨らみすぎて胸が踊った。
入学式が終わると、小学校からの親友である、佐山翔平が声をかけてきた。
「よ!弘樹ー♪
思ってたよりも緊張しないもんだなー笑」
などと俺とは全く違う心情であったが、こーやって元気に話しかけてくれるのは翔平の良い所であった。
翔平との会話を終え初めて教室にいった。
俺のクラスは1年2組。翔平は1年4組だったので離れてしまった。何人か同じ学校だったやつもいるが、あまり仲の良い奴はいなかった。
そんなとき俺の隣の席に座っていたのは、田口という苗字の女の子だった。綺麗な顔立ちで、すごくいい感じの子だった。
教室に先生が入ってきて自己紹介を全員ですることになった。
先生の名は田島元気。皆にタジゲンと呼んでくれと入学早々面白い挨拶をしてくれて、少し緊張が緩んだ。
自己紹介が始まり、皆緊張しているが上手く話せていた。俺はそのプレッシャーからか二回も噛んでしまったが緊張しているクラスのみんなは笑ってさえくれずにさみしかった。
俺の次は席がとなりの田口という子の自己紹介だった。顔立ちがきれいなせいか、クラスのみんなが一斉に注目したよーに思えた。
しかし彼女は「えーっとー。趣味は体動かすこと!たまに山登ったりするんだようちー笑みんなもまたいこーよー♪」などという見た目からは想像できないような話し方であった。名前は田口麻里矢と言うらしい。
俺はなぜかわからないけどその田口麻里矢と言う女の子に興味が湧いていた。
顔が好みであるのもたしかだかそれ以上に顔と性格のギャップにものすごく惹かれた。
こんな子と付き合って中学生活を送ると楽しいだろうなー、なんてことを思ったりしているうちに自己紹介がおわってしまった。おかげで田口麻里矢さん以外の人の名前は全然覚えていない。
自己紹介が終わると解散と言う事なので帰りのHRを終え、帰ろうとしたら肩をたたかれた。振り向くと肩をたたいたのは翔平だった。「かえろーぜーひーろき♪」
「おう(*^_^*)」
「誰かクラスに可愛い子いたかー?」
などといきなり的を当ててくる翔平。
「い、いねぇーよ!翔平こそどーなんだよ。」
「え。おれ?笑
いたよーすごい可愛い子ー♪
あの子と絶対付き合ってやるぜ」
などと自信満々でいた。
翔平は昔から顔立ちも良くスタイルもいいし、すこしヤンキー絡みが多いこともありもの凄くモテる。
俺もモテないわけではないが翔平ほどではない。
「ま、帰るか?」
「おー。そーするか!」
と言って二人は家に帰った。
家に帰り、まだ四月だというのにやたらと気温の高いリビングにクーラーをつけソファでくつろいでいた。俺の家は両親共働きで父はサラリーマン。母は介護士をしているので2人ともあまり帰りは早くなかった。6つ上でことし成人になる姉がいるが姉は遊びまわっていてあまり家にかえってこない。一人きりのリビングで、ソファに寝ころびながら明日からの中学生活の事を考えていた。友達ができるかな?彼女はできるかな?楽しい思い出をたくさんつくりたいな。そんな風に考えているうちにもう時間は9時になっていた。昔から寝るのが早い習慣がついている俺はいつも9:30には寝つく。
自分の部屋に行くとベットに寝転んで布団を被った。緊張のせいで疲れていたのか随分早く眠りにつくことができた。