第9話 コードクラブ:部員表《リスト》
《登場人物》
アラン・ダイイング 探偵
マリア・シェリー 探偵助手
モーリス・レノール 警部
カール・フリーマン 刑事 モーリスの部下
ジェームズ・クレムリン 容疑者 教師
ジョン・ボルト 容疑者 教師
ゲイリー・ワシントン 容疑者 教師
トマス・ヴィエト 容疑者 教師
トミー・D・ピアーズ 第一発見者 容疑者 警備員
エレノア・カーリッシュ 故人
ロジャー・ワシントン シラーク・カレッジ 学長
シラーク・カレッジサークルボックス
2人はコードクラブのあった部室に向かい、入口ドア前まで来ている。
部室はだいぶ前から閉ざされており、手入れはほとんどされておらず、埃と古ぼけたような匂いが二人の鼻を駆け巡っていく。
アランは口元を手で押さえながら言った。
「ああ~あった。あった。これだね」
「みたいですね。でもだいぶ手入れされてないみたいですよ。これ」
マリアは目の前で浮かんでいる微量な埃のような成分を払ってのける。
鍵をポケットから取り出し、鍵を開けてドアを開いた。
中は当時のままにしてあった様子であり、ときたま学長が部屋に来ては、少しの掃除をしていたらしく、床は綺麗だった。
アランはゆっくり部室を移動しながら物を探してみる。
「もしかしたら、何かあるかもしれないからね」
「だといいんですけど……」
そんなことを2人は言いながら、探し始めていき、マリアがとある棚に一冊の写真用アルバムが置かれてあるのを見て、アランを呼んだ。
「先生! これ」
アランはマリアに近づいて、アルバムを取った。アルバムの名前は《コードクラブのメンバー写真》。
「アルバムだね」
アランは手に取り、パラパラとページをめくっていく。古ぼけた写真もあれば埃や風化によって色あせている写真が何枚も貼られている。
ある程度めくった後で、一度、アランは手を止めた。
「この写真、破られているね。上半分」
アランは顔の部分を破られている写真を取り出し、裏の記録を見た。
《シラーク・カレッジ コードクラブ 部員達と部室にて 2002年 》
「この写真だけか。破られているのは……」
「そうみたいです」
「ちょっといいかな?」
2人は声のする方に首を向けると、ロジャーが本を左手に持って立っている。
「少々時間はかかったが、部員のリストだよ。これは本人達がプロフィールと登録表を書いているから確認してみるといい」
ロジャーは部室の中を空気中に舞う埃や塵を払いながらゆっくり進み、綺麗な灰色のスーツを汚さぬ様に、進んでいき、アランに手渡した。
「どうも」
礼を言ってリストのページを触る。
―― コードクラブ 部員表――
部長 ジェームズ・クレムリン フランクリンゼミ
《一言:暗号解読なら俺に任せとけよ! エレノアの作った暗号も余裕で解いてみせるぜ!》
副部長 エレノア・カーリッシュ フランクリンゼミ
《一言:暗号を作るのが大好き! ジム! 解けるものなら解いてみて!》
部員 ジョディ・クローンズ クラインゼミ
《一言:ダイイングメッセージの推理小説が大好き!》
部員 クリス・サーマナー メイソンゼミ
《一言:暗号を解く! 俺は解くぜ! 解くのが楽しいからな! 誰にも負けねぇ!》
部員 アルフレッド・ロビンソン レイモンドゼミ
《一言:ジム、お前暗号ゲームに負けただろ! 俺に!?》
部員 フリック・ハモンド カーターゼミ
《一言:副部長とともに暗号を作るのが楽しいっす!》
――――――――――――――――――
「いや~~しっかし、放置しておくと汚ないなぁ。更に掃除が必要だな」
マリアは、ロジャーに訊いた。
「この部室、何年使われてないんです?」
「もう10年になるな。そのクレムリン達が最後のクラブ生だよ。彼らが卒業したあとに閉部というか廃部になった」
「そうだったんですね」
「暗号を解くのが得意か……」
「えっ?」
探偵の言葉に助手が反応した。
「もう一度、彼に話を聞く必要があるね」
アランはページを閉じて、ロジャーに返す。
「どうも」
「ああ。いいのか? もう?」
「ええ、もう済みましたしね。なぁ、マリア?」
「これ以上、調べてもあれですからね」
と、マリアは白く綺麗な手を両手にあげて首を縦に軽く振る。
アランは服のポケットから鍵を取り出して、ロジャーに返した。
3人は部室を出ていく。
「マリア」
「なんでしょう? 先生」
「警察署に行こう。もう一回、ジェームズ・クレムリンと話を聞きたい」
「はい!」
ロジャーは部室の鍵を閉めて、二人に言った。
「お二人さんも忙しいんだな。まぁ、頑張って事件解決のためにも頑張ってくれ」
と言った後で、そのまま学長室へと向かって歩いていこうとするが、アランはロジャーに声を投げる。
「ちょっと待ってください!」
「ん? どうかしたかね?」
ロジャーは踵を返して、アランの方向に首を振り向いた。アランは、ロジャーに一冊の本を示す。その本は《コードクラブの手引き》。
「この本ですけど、いつから作られたものです?」
「え~っと確か廃部になる3年前だよ。その時にできてね。そうそうクレムリンだったかな? この元素周期表と裏に記載されている電子殻のページを担当してね。素晴らしい出来だったよ」
「なるほどね……」
とアランはロジャーの答えに理解し、頷いた。
「どうかしたかね?」
「いえ、ありがとうございました」
「まぁ、頑張ってくれ」
ロジャーは2人に手を振り、再び、踵を返して学長室へと向かって歩いていく。
アランとマリアの2人はカレッジの門へ向かって一歩一歩、足を進めた。
「ダメだな。収穫は一つぐらいだな」
「みたいですね。分かったのは部員表で被害者とクレムリンさんが本当に仲が良かったって事になりますね」
アランはマリアの言葉を否定する。
「違うそっちじゃないよ。そっちは事件が起きた後でも皆目見当はついていたさ。このメモ帳の元素周期表とかを彼が作製した事ぐらいが唯一の収穫さ」
カレッジの大きな門をアランは見上げながら歩き、通過した。
「立派な割には、サークルボックスの手入れはひどかったな」
「ええ……そうですね」
マリアはカレッジの門を通り過ぎようとするタクシーを手を上げて停止させる。
2人はタクシーに乗ると、運転手が2人に訊いた。
「お客さんどこまで?」
アランは後部座席の背もたれに体を預け、ゆったりとした感覚を受けながら一言で答えた。
「シュゼット警視庁まで」
第9話です! いかがでしたでしょうか? 次回の展開はどうなっていくのでしょう!?
ではまた、次回をお楽しみに!!