表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

第8話 シラーク・カレッジの学長

《登場人物》

アラン・ダイイング    探偵

マリア・シェリー     探偵助手

モーリス・レノール    警部

カール・フリーマン    刑事 モーリスの部下

ジェームズ・クレムリン  容疑者  教師

ジョン・ボルト      容疑者  教師

ゲイリー・ワシントン   容疑者  教師

トマス・ヴィエト     容疑者  教師

トミー・D・ピアーズ   第一発見者 容疑者 警備員

エレノア・カーリッシュ  故人 

ロジャー・ワシントン   シラーク・カレッジ 学長

 


 シラーク・カレッジ




 アランとマリアは、タクシーに乗って、被害者とジムの出身大学であるシラーク・カレッジに来ていた。

 案内役による案内で2人は学長室へと案内される。学長室のドアに札が取り付けられてある。




 《学長 ロジャー・ワシントン》




 案内役がノックし、反応を待つ。

「はい」

「失礼します。アラン・ダイイング様、マリア・シェリー様をお連れしました」

「入れてくれ」

 ドアを開き、中に一度入って、案内役はアランとマリアに声をかけた。

「どうぞ。お入りください」

 言われるがままアランは学長室に入る。

「ど、どうも」

 マリアは、案内役に一礼して、学長室へ入る。

「では、私はこれで失礼いたしました」

 と案内役は言ってから学長室を出ていき、ドアを閉めた。

 アランが見つめると学長の椅子に太めの男性がパソコンをいじっている。

 太めの男性はパソコンの手を止め、アランの方へ凝視した。

「おお、君たちが弟が言っていた、探偵さんと助手さんかな?」

「やはり、ゲイリー氏のお兄さんでしたか……」

 アランは予想が当たり、うんうんと頷いた。

「お兄さん!?」

 マリアはアランの言葉に気づいたが、アランは無視して、ロジャーに挨拶をする。

「はじめまして。ミスターワシントン。私がアラン・ダイイング。そしてこちらの女性が助手の……」

「おお、なんと美しい方なんだ! はじめまして。私が学長のロジャー・ワシントンです。お名前は……」

 ロジャーはマリアに近づき、いきなり彼女の白い手を触った。

「えっ!? ま、マリア・シェリーです」

 マリアは少々、困惑しながら、名前を言う。

「マリアか……なんて素敵な名前だ! 是非ともお茶をしたいですなぁ」

 ロジャーは眩しい微笑みをマリアに向け、少々、苦そうな顔をしながら探偵助手は答えた。

「またの機会にさせてください。ミスターワシントン」

 アランは2人のやり取りを遠巻きで見ながら咳払いをして、自分の存在に気づかせる。大きな咳払いにロジャーは気づいて、我に返った。

「申し訳ない。さて、話に入ろうか……聞かせてくれ。君たちの要件は?」

「要件は簡単です。ジェームズ・クレムリン氏をご存知ですか?」

 ロジャーは、アランが言った名前を脳裏の中をかけめぐらせていき、数分で答えを見つける。

「ああ、彼か。よく知っているよ。確かカーリッシュ君の婚約者だったね。だが……残念だった。それで、彼がどうしたんだね?」

 ロジャーの質問をアランが言葉を濁しながら、答えた。

「実を言うと彼は今、少々危ない状況にいます。このままですとマスメディアの晒し者になることは間違いないでしょうね」

 アランがどう言う意味で言葉を濁したのか、ロジャーの脳裏で選択肢が2つあった。


①ジェームズ・クレムリンがエレノア・カーリッシュ殺害容疑で逮捕されるか……


②ジェームズ・クレムリンがエレノア・カーリッシュ殺害容疑という嘘を付けられてマスメディアの白いフラッシュを浴びることになる


 この両方は、いずれにせよカレッジにとっても、クレムリンにとっても辛いことになる。カレッジ出身者に犯罪者が出るとすると立場上、少々苦い味を経験しなければならなくなる。ロジャーはそれを避けたかった。ただでさえ、カレッジ出身者が殺害されているから学長としてもこの事件を早く終結させたい思いだった。

「分かった。協力しよう。なんでも聞いてくれ」  

「では、彼の在籍していたコードクラブについて教えてもらっても?」

「懐かしい名前を出したな……残念だが、コードクラブは廃部になったよ。10年ぐらい前に」

「そんな……」

「そうですか」

 アランとマリア、2人共、ロジャーの言葉を聞いて、残念がった。

「まぁまぁ、そんな落ち込まんでくれ」

 ロジャーは自室の机の引き出しを開けて、鍵を取り出し、アランに手渡す。

「コードクラブの部室の鍵だ。今は誰も使われていない。ああ、それと……」

 ロジャーは左奥の本棚の戸を開いて、本を探っていく。

「ああ、あった」

 一冊の本を取り出し、ロジャーの捜索を見ていたアランに手渡した。

 本の題名は《コードクラブの手引き》。

 アランは本のページをめくっていくと、クラブの発足の理由、クラブの掟、その他に各国の言語表と数字記載表と科学で使われる元素周期表が記載されている。

 言語表は英語、日本語、中国語、仏語、ロシア語、韓国語、アラビア語等。

 数学はローマ数字、アラビア数字。

 「これを。コードクラブに入部すると、必ず一冊ついてくるまぁ、生徒用の許可証みたいなものだよ。顧問の先生や有志達が集まって作ったものでね。およそ10カ国の言語表や元素周期表。極め付きに数字も入ってる。それは余ってるから持ってて構わないよ」

「どうも」

「部屋はそのままにしてある。行って確認してくれ」

「あ、もう一つよろしいですか? コードクラブの部員のリスト表を見せてもらってもいいですか?」

「構わんが、取り出すのにちょっと時間が掛かるので、後で持って行こう」

「ありがとうございます」

 マリアはロジャーに礼をした。

 ロジャーはニコリと微笑みながらマリアに言う。

「ミス、シェリー。今度お茶でも……」

 しかしアランの一言が、ロジャーの心に重い一発を響かせた。

「ミスターワシントンやめといたほうがいい。彼女は国家を守る仕事をしていたから変な事を考えているのであれば、あなたの立派な白い歯がなくなる事を覚悟しといた方がいいですよ」

 アランはぎこちない笑みで返して、学長室を出て行く。

「えっ!?」

 マリアも笑顔で返して、学長室を出てアランの後を追う。

 アランは右手の電波腕時計で時間を確認しながらサークルボックスへ向かうために廊下を歩いていく。

「先生! ひどいですよ!」

 彼女の声がアランの耳中を響き渡らせる。その声はいつもより恥ずかしさと怒りが混じっている感覚だった。

「えっ? 何がだい?」

 マリアはアランに理由を少し大きめの声でぶちまける。

「よくも私の経歴を教えてくれましたね! ただでさえ、元軍人っていう肩書きが嫌なのに……今度からは人前で言わない様にしてください!」

 アランはふくれっ面のマリアにやれやれと思いながら返した。

「だってホントの事じゃないか。それにもし、学長が君のお尻を触ろうとしたら、半殺しにする気だったろ?」

 マリアは首を横に振って否定した。

「いいえ半殺しだけじゃ甘いです。いっそ殺します」

 とマリアはうっすらと笑みを浮かべながら、両手の指を握りながら骨の音を鳴らしていく。

 元国家を守る仕事に就いていた人=元軍人の不敵な笑みは、アランの表情から通用していなかったが、心の中では通用していたらしく恐怖でしかなかった。

 アランは、無表情のまま、マリアに一言だけ告げる。

「そ、そうですか……」

第8話です。今回はシラーク・カレッジの学長に出会いましたね。次の展開が気になりますなぁ


では、次回をお楽しみに!!


話は続きます!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ