第7話 5名の容疑者達 1-3
《登場人物》
アラン・ダイイング 探偵
マリア・シェリー 探偵助手
モーリス・レノール 警部
カール・フリーマン 刑事 モーリスの部下
ジェームズ・クレムリン 容疑者 教師
ジョン・ボルト 容疑者 教師
ゲイリー・ワシントン 容疑者 教師
トマス・ヴィエト 容疑者 教師
トミー・D・ピアーズ 第一発見者 容疑者 警備員
エレノア・カーリッシュ 故人
シュゼット小学校 職員室
「ふ~やれやれだ。まさかカーリッシュ先生がこんな事になるなんて……」
「ええ、気の毒です。もうすぐクレムリン先生と結婚する予定だったのに……」
聴取を終えた教頭のワシントンと教員のボルトは、職員室に設置されている喫煙室で、タバコを吸いながら今回起きた事件の事を話している。
「教頭先生、生徒達にはどう伝えましょうか?」
「う~ん、ニュースで報じられている限り、知っている子もいるだろう。注意を払うべきだな」
「そうですね。よく言っておきますよ」
すると、喫煙室をノックする音が聞こえた。
「はい?」
「失礼しますよ~」
ドアを開け、2人の人間が喫煙室に入ってきた。
「あなた方は、探偵の……」
アランは、軽く挨拶をして、近くの椅子に座った。
「どもども。おふた方にお訊きしたい事がありましてね。ちょっといいですかね?」
「ええ」
ボルトは吸っていたタバコを灰皿にねじって火を消した。
アランは、2人にクレムリンについて聞いた。
「おふたりは、クレムリンさんとカーリッシュさんについて何か、ご存知じゃないですかね?」
ボルトは、眉間にしわを寄せて考える。
「う~ん。どうだったかな?」
するとワシントンがタバコの煙をふかしながら言った。
「彼ら2人は、大学で出会ったとか聞いたな」
「えっ? そうでしたか?」
ボルトにとってはそんなことは知らず、教頭であるワシントンだからこそ知る話だった。
「ああ、彼らは、確か謎解きサークルってやつだったかな。そのサークルの出身らしくてね。よく生徒たちに謎解きの問題を解かせていたね。生徒たちは大喜びしていたけどね」
「そうでしたか……」
マリアはふとあの言葉を思い出し、アランの左耳に耳打ちをした。
「先生、そういや、以前の依頼人でカーリッシュさんの経歴が記載しているので、事務所に戻ればわかるのでは?」
アランは、頭を強い鈍器で叩かれたような気分になったがすぐに元に戻した。
「あ、でもダメだ」
「どうして?」
「あの経歴には軽いプロフィールしか載せてない。それに他の情報も返しちゃってるからね」
「あ、そうなんだ。じゃあ、クレムリンさんに訊かないと……」
マリアは肩を落とす。
そんな耳打ちが聞こえていたせいか、ワシントンは一枚の名刺を渡す。
その名刺には、大学名と電話番号が載っていた。
《シュゼット国立 シラーク・カレッジ》
「彼らの出身大学は、これだったはず。一度、行ってみるといい。なんだったらアポをとってあげようか?」
ワシントンはタバコを吸いながらズボンのポケットから携帯を取り出し、ボタンをいじり、電話を耳に当てた。
「あ、もしもし。うん。そう実は、二人ほどそちらの大学にお客として案内してもらいたいんだが……」
探偵とその助手はその間に、ボルトと話をしている。
「夜の7時ぐらいはどこにいましたか? ボルトさんは…?」
ボルトは、顎に手を置いて、剃り残してしまった無精ヒゲをさすりながら答えた。
「その時間はね。家に戻って、家族と食事していたなぁ。シェナに聞いてみてください」
マリアは、メモに記していく。
「おお、そうかい! では、よろしく頼むよ。いえいえ、ありがとうじゃ……」
ワシントンは携帯を切り、大学側から了承を得た事をアランとマリアに伝えた。
「喜べ、お二人さん。アポが取れた。私の事を言えば、入れる様にしといたよ。あ、そうそう電話越しから聞いていたが、事件当夜の時間帯、私は、自宅で映画を見ていたよ……」
「あ、ありがとうございます!!」
マリアは礼を言った。
アランは喫煙室と職員室とつながっている窓から映っているジムと警官の事情聴取を凝視しながらワシントンに訊いた。
「あの、ちなみに彼らが所属していたクラブとかサークルとか知りませんか?」
ワシントンは、携帯をズボンのポケットに戻して、右手で顎を触りながら、頭の中に駆け巡る記憶をたどっていく。
「え~っと、確か……コードクラブだったかな?」
「コードクラブですか?」とマリアは聞き返す。ワシントンは軽く首を縦に振り頷いた。
アランはコードという言葉を聞いて、ワシントンに訊いた。
「もしかして、暗号を解いたりするってやつですか?」
「いや、コードクラブについては詳しい内容を聞いた覚えはないが、文化系の活動をしているとは聞いたな……」
「そうですか。どうも」
アランは軽く微笑んで、喫煙室の教師2人に、礼をして喫煙室を出ていく。
「あ、待ってくださいよ。先生」
マリアも教師2人に礼をして、出ていく。
「マリア。もう一回、現場に行くよ」
「現場ですか!?」
「うん。被害者の死亡時刻を確認したいからね」
「死亡時刻?」
アランは、そのまま現場にもう一度向かって歩いていく。
「ああ、このままだと、レノールのやつジェームズ・クレムリン、彼をエレノア・カーリッシュ殺害容疑で逮捕する予定だろうな」
「えっ!? 何で?」
マリアは、アランの言葉に驚きを隠せず、大きな反応をした。
ズボンのポケットから、レモンティー味のガムを一枚、取り出して紙包みを外し、アランは口に入れた。
「暗号を思い出してくれ。数字と記号の後にメッセージがあっただろう」
マリアは手帳のページをめくり、暗号のページで確認する。
「908(3p、6、18)33 I Love You Jim(愛しているわ ジム)って記されていますね」
「そう。その暗号部分ではなくて、肝心なところはメッセージだね」
「I Love You Jimですか? でもそれって被害者が残したメッセージでは?」
音を立ててガムを噛んでいき、アランはマリアに言った。
「ああ、レノールの奴は頭でっかちだからね。名前が書かれている以上、怪しむだろうね。ジェームズ・クレムリンという男を」
2人は現場に辿り着き、レノールが現場に来たアランに反応した。
「お~い。ダイイング。どうだ? 犯人の目星はつけたか? 今回の俺はちょっと違うぞ」
「《分かったのか?》って僕達に言わせたいんだろう?」
「おお、図星か! 犯人は彼だ! 意外と近くにいるもんだな」
あまりのレノールの犯人を追求しようとする質問を言葉で感じ取ったアランは、否定する。
「残念だが、君が思っている犯人は違うと思う。ジムをしょっぴくのならやめておくべきだ」
「なんでだ? だってメッセージにも書いてあるだろう! もしこれが最後の力を振り絞った告発文なら……」
アランは深いため息をついた。
「I Love You Jimの前に記された暗号が解けていないのに《I Love You Jim》のこの文だけで彼を連れて行くのか?」
レノールは、少し苦い顔をしながらも答える。
「ダイイング。私が呼んでおいて悪いが、時間がないんだよ。怪しいのは奴ぐらいだ。それに、暗号とは別に彼宛のメッセージで残されているし、警察署で話を聞くしかないだろう? 彼には……」
「なるほど、参考人ってわけか」
レノールはアランの左肩に手を置いて一言だけ返した。
「まぁ、任せておけ。この事件はすぐに解決するさ」
アランは左肩に置かれた手を払い、溜め息で、レノールに返し、一言だけ訊いた。
「警部。被害者の死亡時刻、分かるか?」
レノールは現場から離れようと教室のドアを開こうとしながらアランの質問に答えた。
「被害者の死亡時刻は、確実なのは7時半から9時の間で間違いないそうだ」
レノールは左手をあげて別れた。
「どうも……」
アランは、現場を出て行くレノールを見ている。
「先生、どうしますか?」
マリアはアランに訊いた。
ガムを噛みながら、一つの考えをアランは示した。
「この暗号を解く為には、一度、シラーク・カレッジへ行く必要があるかもね。行こうかマリア。シラーク・カレッジへ」
第7話です。今回は5人の容疑者の2人が登場します。
ではでは、お楽しみに!!
話は続きます。