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第5話 5名の容疑者達  1ー1

《登場人物》

アラン・ダイイング    探偵

マリア・シェリー     探偵助手

モーリス・レノール    警部

カール・フリーマン    刑事 モーリスの部下

ジェームズ・クレムリン     容疑者  教師

ジョン・ボルト      容疑者  教師

ゲイリー・ワシントン   容疑者  教師

トマス・ヴィエト     容疑者  教師

トミー・D・ピアーズ   第一発見者 容疑者 警備員

エレノア・カーリッシュ  故人 

 シュゼット小学校職員室



 職員室にはレノールの言われた通り、数名の警察関係者とは別に、事件に関係している者達が、それぞれ自分の椅子に座って警察関係者との聴取をしている。

 フリーマンはそれぞれの容疑者の顔に視線を向けてアランとマリアに説明する。

「あの椅子で、下を見ながら話している人がいるでしょう? あの人が被害者の婚約者であった。ジェームズ・クレムリン氏。職員室の喫煙室で煙草をふかしながら話をしているのが、ゲイリー・ワシントン氏。その隣で、サングラスをかけて部下と話をしているのが、ジョン・ボルト氏。で、クレムリン氏の向かい側で聴取を受けているのが、トマス・ヴィエト氏。ピアーズ氏は、警備室の方で事情を聴取しているはずです」

「なるほどね。ジェームズ・クレムリンと話がしたいのだが……」

 フリーマンは、アランに「待っていてください」と告げ、ジム・クレムリンの聴取をしていたフリーマンの部下である、ボイル巡査に話しかけていく。

「ボイル巡査。ジェームズ・クレムリン氏と話したいそうだ。聴取は良いかな?」

 ボイルは上司の言葉に戸惑いながらも返す。

「ええ、はい」

 ボイルは席を立ち、後ろに下がった。代わりにアランがボイルの座っていた椅子に座り、下を向いているジムを見つめている。マリアは、椅子に座っているアラン、下を向いたままのジムを見つめながら、ジムの風貌についてメモを取る。

 するとジムは下を向くのを止め、目の前で座っているアランを見つめた。

 ジムの目は、すでに涙で赤くなっている。

「あんたか。この事件の捜査手助けをする探偵は……」

 ジムは、エレノアが関わっていた依頼の時にアランと対面していた。会うのは数ヶ月ぶりだったのでアランも軽く挨拶した。

「どうも。なんと言葉をかけていいのか、僕にはさっぱりだが、これだけはあなたに誓おう。必ず犯人を突き止める」

 ジムは、アランの目から視線をそらし、職員室の窓から見える風景を見つめながら昨夜の事について言った。

「昨夜、俺は今喫煙室にいるあのボルトと独身最後の飲み会という事で行きつけのバーに行ってたんだ」

 アランは、喫煙室の窓に目を向けると、確かに、警官と背が高い黒人が2人で話をしているのが見える。

 ジムは探偵の目を見ることなく話を続けた。

「この事はあそこにいるあいつに訊けば分かるし、バーの店主に尋ねたら分かる事だ。エレノアもあとで合流する予定だったんだ。なのにどうして……?」

 ジムの顔を見るも慣れない気まずい雰囲気が周りに立ち込めていくのをアランは肌を持って感じた。マリアも苦い顔をしながら手帳に情報を書き込んでいく。

 アランはジムに質問した。

「昨夜、彼女は日直だったのか?」

「ああ。昨日は彼女の当番だった。簡単な話、この小学校は見ても分かる通り、改装中なの知っているだろう? もしそこに何も知らない生徒が悪ふざけで入って怪我でもしたら大変だろ? 責任問題はいつも担当の教師が責任を取る事になる。だから念には念をという事で警備のピアーズと一緒に学校の警備をやってから報告書を書いて帰っていたんだ」

「じゃあ、報告書はあるのか?」

「報告書はある。だが、彼女は学校にいたんだ。ピアーズは知らなかったと言っているがな」

 アランは話を聞いて、ある事を訊く。

「君は、暗号は好きか?」

 ジムは、アランの質問が分からなかった。

「いきなり、何を言っている?」

 アランは、フリーマンに尋ねる。

「あの暗号を見せても?」

 フリーマンは即答で「ええ、どうぞ」と答え、アランに暗号の写った写真を渡し、アランはその写真をジムに見せた。

 ジムは、写真を手に取り、凝視する。ジムは写真を見ながら訊いた。

「この暗号は……」

 フリーマンが説明に入る。

「その写真は、彼女が亡くなる前に自分の鮮血で書いた君宛の暗号だと思われるんだが、どうだね?」

 説明を聞いたジムの目に透明な水が滴り落ちている。こらえようとしているがどうも我慢ができないらしい。

 ジムは写真をアランに返した。

「俺は、分からない……すまないが、独りにさせてくれ。今は誰とも話たくない」

 アランは「すまなかったな」と告げて、席を立ち、マリアとフリーマンに首で横に振った。

「あの……あなたがミスターアラン・ダイイング?」

 アランは声の方に顔を向けたそこには細めで天然パーマの男が立っていた。

 探偵は質問に対して答える。

「ええ、そうだけど」

「どうも。申し遅れました。僕がトマス・ヴィエトと申します」

 天然パーマの男は挨拶を探偵にしながら左手を差し出し、彼も右手を差し出して交わす。

「ああ、あなたがヴィエトさん。今回は大変でしたね」

 とアランは事件のことについて苦労を労いながらヴィエトに言った。

 彼は、職員室に立ち込める空気に嫌気が差していたのか、アランに提案した。

「あの、ここで話すのはいささかアレなんで、隣の部屋で話しましょう。クレムリンの奴も参ってるので」

「ええ、そうしましょう。フリーマン刑事。ちょっと頼みたいことがあるんですが……」とアランはフリーマンに言う。

「何でしょう?」

「他の人についてこの暗号の事を訊いといてもらえませんかね? クレムリンさんは時間を待った後でいいので……」

「分かりました」

 とフリーマンは了承した。

 アランは頷いてマリアと共に隣の部屋に移動する。職員室の隣にある資料室に入る。

「あいつ、今度、カーリッシュ先生と結婚するはずだったんですよね。まさかこんな事になるなんて……」

 ヴィエトは、片手で両目をおさえて悲しんだ。アランもやるせない思いになりながらも訊かなければならない事を、アランはクレムリンと同じ様に、暗号の写真を見せる。

「これについて分かりませんよね?」

 ヴィエトは、写真を見て、軽く両手を挙げて首を横に振った。

「いや、よくわかりませんね? これはカーリッシュ先生が書いたものですか?」

 アランは、ヴィエトの問いに頷いた。

「ええ、そうですが……」

「そうですか~」

 とヴィエトは悲しげな顔をしている。

 アランはこれ以上の質問は無用だと感じ、ズボンのポケットから紙を一枚取り出して、ヴィエトに渡した。

 その紙は探偵事務所の名刺で、住所と電話番号が載せてある。

「もし何か気付きましたら、こちらの探偵事務所の方にお電話を……できたらほかの先生にもよろしく」

「はい。分かりました。何か気づいたら電話しますよ」とヴィエトは快く受け取り、二人に向けて微笑んで答えた。

「じゃあ、僕達はそろそろ出るとしよう」

「えっ?」

「では、僕達はこれで……さぁ、行こうマリア」

 とヴィエトに礼をして資料室をあとにしようとしたが、途中で止まり、ヴィエトに1つ訊きたい事が浮かび立ち止まった。

「ヴィエトさん。1つ訊くのを忘れてました。いいですかね?」

「ええ、何でしょう?」

「あなた昨日の事件当夜どこにいましたか? 出来たら詳しく……」

「昨日ですか? 昨日は、早めに切り上げて、そうだな~7時ぐらいだったかな。そのぐらいに帰って、自宅でずっと寝てましたね。ここ最近、疲労が大きかったので……」

「そうですか。どうも!」

 アランは一言だけ言って、資料室を出た。

「あと誰、聞いてなかったっけ?」

「え~っと。警備員のピアーズさんとワシントン先生、ボルト先生ですね~」

 シェリーはメモ帳に書いている事に目を通しながら答えた。

「そっか~ワシントンさんとボルトさんは、今、フリーマン君や警部達が聞いているからなぁ。先に警備室でも行くかな」

 アランは学校の警備室へと向かうために廊下を歩いていく。

「警備室ですか? あっ、ちょっと先生!」

 シェリーはメモ帳を鞄に入れて遠ざかって行くアランの後ろ姿を追いかけていく。


 「ダイイング ー死人の教壇ー」 第5話です。


今回から、5名の容疑者が登場します。

お楽しみに!!

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