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第2話 探偵事務所にて

登場人物

アラン・ダイイング    探偵

マリア・シェリー     探偵助手

モーリス・レノール    警部

カール・フリーマン    刑事 モーリスの部下

エレノア・カーリッシュ  故人 

 5月7日   午前9時  ダイイング探偵事務所


 助手のマリア・シェリーは、テレビの画面を見ていた。画面からは学校で起きた撲殺事件のニュース。

 キャスターが撲殺事件の内容を述べていた。




『シュゼッ卜小学校で勤務している。エレノア・カーリッシュさんが遺体で発見されました。カーリッシュさんは、後頭部を殴られており、捜査本部では、撲殺と断定し、外部犯の犯行ではないかと疑いを強めています。更に捜査本部は……』




 マリアは、テレビを消し、リモコンを応接用のソファーテーブルに置いた。

「ありませんねぇ」

 アランはパソコンのワードで報告書を打っている。

「依頼の事かい? あったじゃないか? ウォーレンさん夫妻の浮気調査の報告やロビンソン卿の猫捜し、それにキャンベルさんの遺言書解読とか」

 呆れながら彼女は返した。

「依頼じゃなく事件です! それに先生が言ってた依頼ですけど、ウォーレンさんは浮気じゃなくて、飲み会で上司が酔って口紅がついたって奴で、ロビンソン卿は元々、猫飼ってなかったし、その上、キャンベルさんの遺言書は、あれはなかなか面白い解読でしたねってそうじゃないですよ!」

 マリアのあまりの勢いのある返しに、アランは慌てながら言った。

「まっ、まぁ、落ち着いてくれよ。依頼だけども依頼人にとっては大事件かもしれないのだよ? それを僕達は解決しようとしているから事件と同じじゃないかな?」

 少し考えてみるが、マリアはすぐに鋭い言葉の攻撃をワードを操作している探偵にぶつけた。

「違いますよ。先生! 事件っていうのは、私達を恐怖に陥れる怪人が奇妙な事件を起こして、それを私達、探偵が解く……それが事件というものじゃないですか?」

「それを解決するのは、僕達、探偵の仕事ではなく、警察の仕事です。残念でした~」とアランは、軽くマリアをあしらった。

 彼女は反論することができず、プクーっと頬をふくらまし、ふてくされていた。

 アランは、いつも通り、今日のマリアとの言論戦争を停戦に追い込ませて、パソコンの画面を確認する。すると事務所のインターホンが鳴った。

 彼女は反応し、ドアガラスのシルエットでインターホンを鳴らした人間を確認する。

「は~い」

 アランは、ドアのシルエットで一つの答えを示した。

「警察だね。あの人影はレノール警部だ」

「えっ?」

 マリアは、アランの反応に希望を持った。




【まさか事件の依頼!?】




「入るぞ!!」

 事務所のドアが開き、アランとマリアがドアの方に視点を向けた。そこにはグレーのスーツを着た無精髭の大男が立っている。その男はモーリス・レノール警部だった。

 レノールは軽く咳払いして、机に座った黒縁眼鏡を着け、パソコンに目を向けている短髪の男に視線を向けた。

「ダイイング。仕事だ」

 アランは、パソコンの画面を見ながらモーリスの仕事について答えた。

「小学校で起きた撲殺事件だね。その上、死体がダイイングメッセージを残したのだろう?」

 レノールは、全て先に言い当てられ、自虐的になりながらも発言が合っている事を認めた。

「流石だな。これじゃ、俺達、警察は不必要だな」

 マリアは、目の前の二人が勝手に進めて行く話についていけず、二人の話を止める。

「ちょっとストーーーーップ! 何でレノール警部が来た時点で何故、先生はテレビで報道されていた撲殺事件だってわかったんですか?」

 アランは椅子から立ち上がり、コート掛けに立てていたトレンチコートを着て、マリアに答える。

「簡単な事さ。レノールが来たという事は、少なくとも大きな事件であることは間違いない」

 レノールは相槌をいれる。

「ああ」

 アランは続ける。

「それにミス・シェリー。殺人やこういう事件が起きたのは、今日は、これが1件目だからだよ」

 レノールが再び相槌を入れる。

「ああ」

「なるほど」

 マリアも納得する。アランはさらに続ける。

「その上でだ。レノールの顔をよく見て欲しい。目にクマがある」

 アランに言われたとおり、彼女はレノールに近づいての顔を凝視した。確かにレノールの目にくまがあった。

「確かにありますね」

「そんなに見るな。恥ずかしい」

 レノールはマリアの凝視を左手で遮った。

 2人の反応を見たあとでアランは話を続けた。

「つまり、レノールは、事件が深夜頃に発生し。一睡できていない。それにそういや、君は確か、昨日は郵便局で起きた不審物処理の始末書を書い……」

 まだ誰にも知られていないはずの汚点を友人にばらされたレノールは、ペラペラとしゃべる探偵を止めに入る。

「おうおうおうおうおう。そこまでだ。内容も分かってくれた事だし、手間が省けた事に礼を言うよ。だが、ここで世間話している時間はないんだ。ついて来てくれるかな? おふたりさん?」

 レノールは、事務所を出て階段で下へと降りていく。アランも後を追うが、事務所から出ようとした時、助手に告げる。

「さぁ、君のお望みの事件とやらを解決しようじゃないか!」と言った後で、アランは階段を降りていく。

「はい!」

 手提げ鞄を持ち、マリアは希望とやる気に満ちた表情で事務所のドアにぶら下げている看板をひっくり返し、ドアを閉めた。




 

    《調査中につき、クローズド》






 アランとマリアの両名はレノールの運転するパトカーに乗車し、現場へと急行していった。


第二話です。


今回から、このお話の主人公、登場でございます!

お楽しみに!

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