第11話 監視カメラの故障原因
《登場人物》
アラン・ダイイング 探偵
マリア・シェリー 探偵助手
モーリス・レノール 警部
カール・フリーマン 刑事 モーリスの部下
ジェームズ・クレムリン 容疑者 教師
ジョン・ボルト 容疑者 教師
ゲイリー・ワシントン 容疑者 教師
トマス・ヴィエト 容疑者 教師
トミー・D・ピアーズ 第一発見者 容疑者 警備員
エレノア・カーリッシュ 故人
ロジャー・ワシントン シラーク・カレッジ 学長
シュゼット小学校 午後5時
アランとマリアはもう一度、小学校に向かった。
小学校の監視カメラ故障原因を確認しに行く為に。
「先生。カメラを確認しにって、三台が壊れたって言ってたじゃないですか! 犯人なんか写ってないですよ~」
「いやカメラの映像じゃないよ。確認するのは回線の方さ、もうピアーズさんにも連絡はとってあるから……あ、いた」
小学校の玄関前に警備服を着た初老の男性が、軽くアランの方向に向けて、軽く礼をしている。アランは早歩き気味でピアーズにのいる玄関へと向かう。
「どうも。ピアーズさん。カメラの回線を見せてもよろしいって事で、すいませんね」
「いえいえ、まぁ見てもらったら分かるんですけど、これですよ。見てください。回線が焦げちまってどうしようもできないんですよ」
アランは赤い回線が伸びている中で、一部分が赤からこげ茶がむき出しになり、その中心は黒くなっている所を凝視している。真上は天井で、コンクリートの灰色が一面だった。
マリアはアランが天井についた焦げた導線を凝視している中で訊いてみる。
「どうですか?」
アランは一言、2人に向けて告げる。
「おかしいな。これ、落雷のせいですか?」
「落雷って言われても……」
ピアーズは普通に答えた。
「おそらくですが、そうだと言って間違いはないかと。ああ、思い出したんですが、映像が消える前に光ったんです。だから停電ではないかなと」
するとアランは、視線を上から下へチェンジして、目を凝らして何かを探す。
「せ、先生?」
アランはマリアの言葉をおいて、シーッと声を漏らしながら、人差し指口元に近づけた。しゃがんで周りの地面を見つめていく数歩、しゃがみながら進んで止まる。
「見つけた! これだ」
指で何かを掴んでから、アランはしゃがむのをやめて立った。
「なにか見つけたんですか? 宝物ですか?」
「いや、ちょっと違うね」
マリアの質問に、なるだけ答える形で、アランは左手の手のひらに見つけた物を乗せて2人に見せる。
「これは……!?」
アランが見つけたものそれは爆竹の燃えカス。少々燃えていなかったのか、雨の中でのせいだったのか、燃えカスと同時に微量の火薬も残っていた。
ピアーズは驚きを隠す事ができず、反応する。
「爆竹!?」
「ええ、おそらくですが、事件当夜に使われたのでしょう。それなら検討がつくはず」
ピアーズはアランの言葉を早口とどういう内容かを理解する事ができず、目と口は止まったままでいた。
「おそらく、カメラの映像から見た。光はこの爆竹が発火した時の瞬間ですね」
「どういう事ですか?」
アランはピアーズに分かるように説明する。
「あなたがカメラを見ていた時にフラッシュを見ましたね?」
「ええ」
「フラッシュが起きた瞬間はこの爆竹が火花を散らして回線を燃やしていたんですよ。そして回線が切れて映像が消えた……」
ピアーズは、アランの考えに一理あるのを感じ、納得した。
「なるほど! 雷の光と錯覚したのか……でも誰が?」
「考えられるのはひとつですね」
アランが一つの考えを2人に言った。
「カーリッシュを殺した犯人は、この学校のことを熟知している人間だ」
「先生。それって……」
マリアはアランに訊いた。
「ああ、あの容疑者4人の中の誰かだよ」
探偵の言葉にピアーズはびっくりしている。
「えっ? それって私も入ってるんですか?」
「ええ。でもあくまでそれを捜査するのは、警察の役目。我々は暗号を解く。それが仕事なので……」
「ミスターダイイング!」
とアランを呼ぶ若い男性の声が聞こえた。アランは目を声の聞こえた方向に向けると、ヴィエトが立っている。
「ヴィエト先生」
ゆっくり歩いて行き、ヴィエトは3人の方に近づいた。
「ミスターダイイング。どうも。警察署に向かったんですか?」
「ええ、彼なら、元気でしたよ~」
「ああ、良かった。実は今、警察署から電話がありましてジェームズを迎えに行こうとしていたんですよ」
「そうですか。迎えに行ってやってあげてください。彼は結構まいってます」
「…………そうですよね。彼女が殺されたんですから無理はありませんよね。同情しますよ彼には……」
「彼女を残した暗号を解いてみせますよ! 絶対に!」
ヴィエトはアランに期待の眼差しを向けて言う。
「応援してます! 頑張ってください。おっと、こんな時間だ。早くあいつの迎えに行かないとクレムリンの奴に怒られる。では、僕はこれで……」
ヴィエトは3人に一礼して、自分の車が置いてある駐車場へと向かっていった。
「さて、僕達もカメラの故障原因を知る事ができたし、事務所に戻ろうか」
とアランが言うとマリアも同意見の形で答えた。
「そうですね。それにまだ暗号の答えが分かっていませんしね」
アランはピアーズに告げる。
「ピアーズさん。この事は、警察にも連絡しといてください。事件に関わる重要なことですから、では! 僕たちはこれで!」
そう言って、アランは一礼して、校門に向けて歩き始めた。
「は、はい。分かりました」
ピアーズはアランに言われた通りに警備室の電話を使用しに、校舎へ入り、早足で移動していく。
素早く移動していったピアーズの後ろ姿を見送り、マリアは踵を返して、進んでいるアランに追いつく為に早歩きで追いかける。
横に並んだのを確認して、アランはマリアに言った。
「マリア。帰ったら紅茶を入れてくれ。疲れたしな」
アランは歩きながら背中を左右とゆっくり回していき、背伸びをする。
「残念ですけど、先生。キリマンジェロのコーヒーしかありません」
確かそうだった気がすると、マリアはアランの隣に並んで歩き、少し考えながらそう答えた。
彼女の言葉を聞いて少し落胆しながら皮肉混じりで答える。
「はぁ……。じゃあコーヒーでいいよ。暗号を解くにはもってこいの飲み物さ。まぁ事務所でじっくり暗号についての解き方を考えていこう」
「はい。先生」
マリアはアランの言葉に頷いて、アランの隣に並んで校門に向けて歩いていった。
第11話です。今回はあの監視カメラにスポットが当たりましたね。さて、いよいよこの物語も終盤が近づいておりますなぁ。次回の展開も目が離せません!!
では、次回をお楽しみに!!
話は続きます




