“花”愛でる宴1
短いです。
長くなりそうなので分けました。
なんでこうなったの―――っ!?
どかりどかりという規則正しくも非常に力強い振動に悩まされながら、桜は必死に考えた。
いや考えようと、した。
しかし生まれて初めて馬の背に乗せられ、しかもうっかり口を開けば舌を噛みそうなほど速度を上げられ、その上身体ががくがく揺れるのではまとまる考えもまとまらない。
「おい。ちゃんとつかまってろ」
落ちたら死ぬぞ。
腹に響くような通りの良い声が鼓膜を震わせる。
耳元で言われたとき、桜は全力で声の主を突き飛ばしたくなった。
できなかったのは、声の主の腕ががっちりと彼女の腰に回りびくともしなかったことと、疾走中の軍馬から落ちれば確かに死ぬだろうなと頭の片隅で思ってしまったからだ。
いったい、自分はどうしてこの人と一緒にいるのだろう。
なんでこんなことになったのだろう。
なんで、どうしてと頭の中でぐるぐる回る。
回るだけで、答えらしきものは何も出てこない。
自分は、豊国家の花の宴に呼ばれただけだったのに。
宇佐の国の現当主の嫡男・梶山青嶺。
宴に呼ばれた賓客であるその人にいま、桜は攫われている。
2は明日投稿予定です・・・たぶん。