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仔兎=魔王陛下

「だめだめだめ!!おばけは駄目っ!やだ何それ、死んでるのに動いているの!?ゾンビでしょ!?それゾンビでしょ!?ヤダヤダ!!怖いの駄目、絶対だめっ!」




私のエライ人記録を更新してくれた、『陛下』を見つけたのは墓守さんだ。さっきコーリエという子にジージェとか呼ばれてた気がするけど・・・発音しにくそうだな。

いるかなぁー何て言いながら開けた扉の奥は書斎のようなものだった。ただし広さと書物の量は職業高校の図書館程度はある。

つまり、HR教室よりちょっと広くて蔵書量が微妙な数しかないってこと。


室内で、ぼんやり本を眺めている男がいた。

床にぺったり座って。

子供じみた姿勢で本を読んでいる男は、私たちを振り仰ぎぱぁーと笑って駆け寄ってきた。


「ジジェード!朝からお墓掘ってたの?で、そっちの子は何?」


空色の目と、後ろで一つにくくった瞳と同じ色の長髪。そして首には本日3人目、黒い細かい模様のライン。背丈は私や墓守さんよりも高いのに、なにやらこどもくさい。

というか、嫌な顔されてない・・・。

微かに嬉かったりする。睨まれたり剣呑な顔されたり、流石にいろいろささるんだよ。心に。


「そう。この人についてちょっと陛下に相談がね。彼女、人間なのは間違いないのだけど」


そこまで墓守改めジジェードが言った途端、びくりと全体的に空色の爽やか美形が身をすくめた。・・・コイツ身長は結構あるのに仔兎みたいだな。体長180cmのウサギとかこえー。


「まぁまぁ害は無いみたいだし。で、間違いなく人間なのに脈が無い。なのにしっかり活動している、と」


一拍ポカーンと青い瞳を見開いて、小首を傾げたあとに『陛下』はずざざーっと後じさり、机の影に隠れて大声で泣き言を仰った。




「だめだめだめ!!おばけは駄目っ!やだ何それ、死んでるのに動いているの!?ゾンビでしょ!?それゾンビでしょ!?ヤダヤダ!!怖いの駄目、絶対だめっ!」





なんだ、コイツ。

というのが正直な印象である。ガタイいい、いい年こいた男がなにやっとんだ。ゴキブリみて悲鳴を上げる男並にだらしない。

あ、その言い方じゃぁー私はゴキブリか。すごい自爆。でも実際のところ、男子より女子の方がゴキブリ平気な気がする。あの秋の日の害虫駆除の地獄絵図が思い出せれるぜ・・・・。あ、思考がずれた。

くだらないことを考えている間に、ジジェードさん(思考の中でも舌噛みそうな名前・・・)が『陛下』を必死になだめている。

野郎が野郎を宥めるなんて、ホラー映画でしか見たことない光景を数分見るともなく見つめていたら、少し落ち着いたのか、ちょっと疲労の溜まったしゃぼんの色の目をしたにーちゃんの後ろにこそこそ隠れながら『陛下』が近づいてきた。

が、私の横まで来るとだっと急に加速し、廊下に飛び出し少し行った所で此方をうかがっている。


「そのまま先に進んでください」


私の横に止まったままのジジェードさんが声をかけると、ギクシャクと進み始める。ちょっと進んでは此方を振り返って確認し、私たち(正確には私か?)がある程度近づくと一気に距離をあける。

・・・・普通に進め。


「陛下でないと扉を開けてくれなくて・・・」


廊下に並んだ大きな窓から入る暖かい光に照らされて、淡い金髪になった青年が苦笑しつつ言った。


「引き篭もりの人にでも会うんですか?」


「う~ん?自発的に篭っている気もするけど・・・どっちかというと役職のせいだな」


仕事で篭らないといけないなんて、きっついわー。私は外で動きたい派だから、そんなの絶対無理。


「多分、この国で一番モノ知りなんだろうけど・・・。誰にでも顔を合わせてくれる訳ではないからなー。ヘレネは」


ヘレネさんね。名前からして女性か。気難しい人なのかねー。ってか私の中ではヘレネ=古今東西一番綺麗な人。っていう図式が形成されているんだが、ファンタジックな世界の引き篭もりヘレナさん、美人なんだろうか・・・。

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