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こんなもん面接じゃない

発信ボタンを押した瞬間、辺りは真っ白になった。

一瞬、なんぞ!?

とおもったが直ぐに景色がしっかりする。脳みそに像が結ばれる。


「!?」


その映像はさっきまでいた居間ではなく、どっかの応接室のような場所だった。私はしっかり応接セットのソファーの上に座っている。

携帯にぎったまま。


「えーでは、貴女がニノマエ、イチさんですね」


「あ、はい!県立中央農業高等学校畜産か、っては!?なにこのノリ、って言うか誰ですか!?」


目の前にテーブルを挟んで女の人が座っていた。

しかもものすごい絶世の美女!・・・格好はみょうちくりんだが。

国語で、漢文の勉強をした時に先生が配った資料集のコピーに載っていたような中国のお姫様。そういった格好。着物に似ているのがもっとゆったりして帯に美しい飾りがついている。黒い長い髪にもきらきら飾りがついている。


「面接官ですよ?」


当たり前の様に言うが、普通の企業の人はそんな格好していません!

なんだお前、コスプレか?


「え・・・まぁ、コスプレも時々するけどこれは勝負服です!神様の威厳を出したい時にきます。普段はもっとラフです」


「それは失礼しました」


・・・・・。


「神様っていった!?しかも人の脳内覗き見た!?」


「そう神様だよ!頭の中ぐらいみえるよ!!でも、叫ばないで耳痛いよ!!」


2人(?)してテーブルを挟んで身を乗り出して大絶叫。そして沈黙。今気づいたがテーブルの上にはお茶まで出ていた。

よーし落ち着け私、そう落ち着こう。神様たってこの日の本のお国には800万位いるらしーじゃない。総理大臣よりなれる確率高そうじゃない。議員さんより多いじゃない。学校の先生より多い?じゃない。


「落ちつたかなぁー?いいかなぁ?」


この事態をすっかり受け入れて認識は出来ていないが、とりあえず心拍数は下がったぞ。


「はいじゃぁ、早速お仕事の話しますねぇー。イチさんにはあたしの創った世界に行ってもらって、ぼろくそに惨敗した弱小国家の復興をお願いしますねぇ」


「・・・・。あの、神様ってのはなんかもー認めますけど、日本の何か神様じゃないんですか?」


私は少なからず非現実的な現象に影響されているようだ。

根本的に間違った質問をしている気がする。


「うん。元々はねぇ。でももう必要とされなくなっちゃたから。そのまま消滅しても良かったんだけどね?せっかく神様なんだし、お役目もないしいいかなぁーって思って一個世界創っちゃった」


そんなテヘ、見たいな顔で途方も無いこと言わないで。

ふぅ、と息をはいて超お美しい神様は独白のように続ける。


「この国を見つめてる時にねぇー人間って不便ねぇーって考えてたの。それでね、自分で世界作ったときにちょっとづつ変わった便利なことが出来るヒト達を混ぜたの。全部じゃないよ?全員できたらそれを便利と思わないし、あんまりにもバランス悪いものねぇ。だからそのヒト達はホントに少数なの。・・・あたし忘れてたんだぁ、人間って異端を嫌うのよね。世界が回りだしたら力を持ったヒト達は差別されだしてねぇ。きっとみんな怖かったの。力を持ったヒト達は確かに周りに比べて強い生き物だったけど。圧倒的に数が少なかったから。いつも追いやられてばかりでね」


本当に悲しそうな顔をする。


「追いやられた人たちがね、何とか寄り集まって自分達の所属する社会を作ったんだけどねぇ。それさえも怖がられてみんな敵対しちゃった。数百年はぎすぎすしながらも何とかやってたんだけど、とうとう戦争が起きちゃった・・・。確かに優れた力を持った人たちだったけど、本当に小さな小国と全世界。あっさり負けちゃって。今は本当に可哀想。あたし、そんな風に創っちゃったものとしては、心苦しいのねぇ」


神様なら自分でいくらでも好きなように書き換えられそうな気がするんですが・・・。


「それは駄目。それこそバランス悪くしちゃうからー。でねぇーあたし考えてねぇー。この世界の元締めっぽい神様に『人間もらっていい?』っていったら『いいよー』って」


最後あたりから急に声のトーンが上がる。


「で、適当な人のとこに求人潜らせて置いたら貴女から連絡きましたー。わーい。大丈夫書いてあったとおり衣食住問題なし!必要な物は値段に関らず進呈するからねぇー!しかも無制限!!すてきだねっ」


そうだね、プロテインだね。


「じゃ早速ですが、あちらに出勤してねぇ」


「いやいやいや!しませんよ!?私がアサハカでした、真面目に就活するんでなかった事に。っていゆうか勤務地は明記して」


「ぶぅー。だってぇ、ただでさえ得点だらけで怪しいのにっその上『勤務地 異世界』なんて誰も応募しないじゃないっ。せっかく来たのに逃がしてたまるかぁー!ね~ウチで働いてよぉ。求められて働く何て最高じゃない」


「でも異世界って・・・そんなもん通えないでしょ、下手したらお正月もお盆も帰れないでしょ!両親に悪いでしょ!」


「それはもちろん、帰れないけどぉ。でも大丈夫!この世界から貴女の痕跡は記録からも記憶からも物質からも抹消しておくからね!誰も困らないし心配しないね!親切だねっ」


「親切違うから、私が困るから」


「えぇでも、ココに来た時点で快諾してくれると思ってもう消しちゃった」


「なにしてんのあんた!?てへじゃないだろ!!何で快諾するとおもうの!?」


ぜーぜーと肩で息をしながら、一息に叫んだ。

こんなに大声張り上げるのは体育祭と仔豚の脱走騒ぎの時ぐらいだ。

怒声を上げられた神様は、瞬間、きょとーんと固まってぶわっと泣き出した。


「だ、だってあたしの世界の中の人たち・・・可哀想なんだもん。あ、あたしが魔族だけ助けたら人間が可哀想なん、だ・・・。いまさら大きく変化を起こしたら・・・うぅ、あたしが悪いのは分かってるけど神差は手出しできないんだもんっ、お、お願いだよぉー見捨てないでよぉ、本当に困ってるのぉ。貴女は困った女神様と世界一個見捨てるような薄情なのー?」


うぅ、神様とか世界とか以前にこんなしくしく泣かれると良心が・・・。

しかも私の存在消去済みだと?言い方からしてもう戻せそうにはない様だし。


えぐえぐと泣いている神様をしばし見つめてから、考えをまとめて告げる。


「分かったよ。行くよ。上手い話に良く考えないで食いついた私の自業自得でもあるし、でも本当に私の周りにいた人には迷惑かからないんだね?」


「いえぁー!その点は絶対大丈夫だよっ。あ、ちなみに向こうはは発展上のもろもろで何故か和風に成らなかったの、不思議だね!中世よーろっぱを見たことないけどそんな感じだよっ。きっと!なので言葉も文字も文化も違うけど、その辺はあたしが適当に補正するね!やったね!イチさんの初出勤だねおめでとうだね、でも帰宅はしないねけどねぇ。じゃあ行ってらっしゃい~。あ、忘れてた!移行中めまいや吐き気、もろもろの不都合が起こる場合があるけど気にしちゃいけないよ?ゲロ袋はあげるねぇ。今度こそ行ってらっしゃいっ」


ぴったり泣き止んで超いい笑顔でまくし立てたと思ったら、神様は袖の中からホイッスルを取り出した。

そしてちょぴり悔しそうな顔をして、


「本当はゆびぱっちんしたいんだけど、千年以上練習しても今だにできないんだぁ」


お姫様のような格好に似合わない、黄色いプラスチックの笛をくわえて神様は、ぴーとお吹きになったわけだが。

その瞬間私の周りは全部闇に落っこちたわけで。

遠くのほうから、ウザイ神様の声が聞こえた。


「ゲロ袋と鍵、忘れ物だよぉ~」


ゲロ袋はいらねぇーよ!

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