幽霊あらわる!
ーーーーミンミン、ミンミン
「暑っちぃなぁ、修一。」
「夏だから当たり前だ。じゃあな!」
そう言って僕は親友の大樹と分かれた。しばらくすると、ジャリジャリち足音が近づいてきた。
砂利道だから良く分かるのだ。
「ちょっと待ったーー!!! 見せたいものがある、俺ん家来てくれよ。いいだろ?どうせ同じ家に住んでんだから。」
足音の主はやはり大樹であった。
コイツは俺の親友であり、いとこである。
そして俺たちは寺の跡取り息子達なわけで、同じ寺の一角の家に住んでいる。
一応家なのだが、風貌はまるで寺である。
そして玄関は2つある。この玄関はそれぞれの家族で使っている。
だから、同じ家といっても俺の部屋から大樹の部屋までは案外距離があって面倒なのだ。
それも面倒だが、大樹の勧誘を断る方が面倒だ。
結局、折衷案で明日大樹の部屋を訪ねることにした。
(見せたいものってなんだ……?)
ーーーーミンミン、ミンミン
「やぁ、遅かったじゃないか修一くん。」
そう言ってやつは前髪をなびかせた。
コイツは今すこぶる機嫌がいいようだ。一発殴ってやりたい。
「なんなんだ?見せたいものって。」
「俺たちはいずれ寺を継ぐだろう?そこで、少しは霊に慣れておく必要があると思うんだ!
そこで、コイツの出番だ。カモーン!美咲!」
大樹がそう言うと、僕の目の前に細くて小柄の少女が現れた。
「ど、どうして驚かないんだ? 幽霊だぞ?」
「霊なんかもとから見えるし。……だいたいそこの陰に隠れてたのも分かってたし。」
「げ、お前にも見えてたのかよ…。いつも無視するからてっきり見えてないものかと……。」
大樹がこういうのも無理は無い。俺は出来る限り霊と関わらないようにしていた。それには色々な理由があるが、一番の理由は、寺を継がないようにするためである。
「あ、あの……お取り込み中すいません。私は美咲といいます。……えっと、えっと、す、好きな記号は三点リーダーです。よ、よろしくお願いします。」
霊のくせにまるで人間のように顔を赤らめて、恥ずかしそうに言った。
今回はあえて突っ込まない。いや、あえて突っ込まないでいてあげよう。
「では改めて。僕の名前は鈴木大樹で、好きな記号はアスタリスクです。よろしく!」
大樹は言い終えると僕にアイコンタクトを送った。