医学の発展に尽くした少女
とある時代。
人々が今よりずっと怪我や病気で死んでいた時代。
一人の美しい少女が現れた。
「私を使ってください。人々を救いましょう」
その言葉の真意は今はもう伝わっていない。
だが、一つ。
確かなのは彼女が医学の発展に多大な貢献をしたということだけだ。
彼女の正体については諸説ある。
だが、それらのほとんどが荒唐無稽なものであり、当然ながら現代ではその実在さえ疑われている。
*
現代。
とある施設にて――。
「それじゃ、あの少女の伝説は真実だと?」
この施設に初めて足を踏み入れた青年が研究員に尋ねる。
驚愕の面持ちのまま。
「あぁ。そして、彼女は今も『生きている』んだ」
「なっ!?」
俄かには信じられない。
だが、こんな場所で嘘が飛び交うとも思えない。
「それじゃあ、あの言葉の真意は?」
「簡単なことだ。彼女は不老不死だった」
「不老不死?」
呆然とする青年に研究員は頷いた。
「あぁ。彼女は何をしても死なない。故に自らの体を差し出して言ったのだ。自分の体を役立ててくれ、と。おかげで人々は医学に精通するようになった」
私を使ってほしい――。
その言葉の意味はそう言うことだったのか。
青年は伝説を思い返しながら息を飲む。
「そして。私たちの使命はただ一つ」
研究員が扉を開ける。
そして、その先には。
「なんですか、これ」
バラバラになった少女の体があった。
首と体が離れている程度のものではない。
内臓と骨が分かれている程度のものでもない。
繊維単位で分けられている体だ。
これを、体と理解出来たのも青年がそちらの知識を持っていたからとしか言いようがない。
「彼女はまだ『生きている』んだ。しかし、人間にはそれを直す力がまだない」
「治すではなくて?」
研究員は笑う。
その笑みの響きをあまり深く捉えないように青年はした。
二人の会話を知ってか知らずか。
分解された少女の体が少しだけ蠢いた。
「早いところ直さなければ医学は停滞したままだ」
研究員の言葉に青年は頷くしかなかった。
――今は、まだ。




