第五十一話 準備万端
引き続きアンケートの方募集してます。
まだ一つも来てないので‥‥(泣)
いよいよ障害物競争の時間になった。
今行われている競技が終われば、僕達の出番になる。
ここまで僕達の白軍はぶっちぎりの最下位だった。
「なんとかここらへんで差を詰めないと、午前だけで勝負が決まっちゃうよ」
五泉さんが得点板を見ながら言う。
「まぁ、次は一之瀬達の出番だからなんとかなるだろ」
正岡君が笑いながら僕を見る。
障害物競争には僕、八雲、フミ、正岡君、九重君、三神さん、五泉さん、千夏さんが出場することになっている。
「ところで、さっき真鈴と何を言われたんですか? こそこそ話をしていましたけど」
三神さんが僕の方を見て訊く。
「そりゃあ当然もう聞くにたえないような甘ーいラブラブな応援をされてたんでしょう?」
千夏さんがニヤニヤしながら三神さんに言う。
「ち、違いますよ!」
真鈴に言われたのは、「競技が終わった後二人きりで話をしたい」と言うことだった。
というか、そんなことを思われるほど、真鈴といちゃついてはないと思うんだけど‥‥
「あれ、そうなの?」
「千夏さんはあの人とそういうことしないの?」
五泉さんが満面の笑みで千夏さんに訊くと、千夏さんはびっくりしたような顔をして珍しく慌てる。
「わ、私!? 私はしないわよ!? す、する必要ないしね!」
「まぁ、あの会話は確かに聞くにたえないな、違う意味で‥‥」
八雲が呟く。
「や、八雲!」
「千賀さん、彼氏いるんですか‥‥?」
三神さんはとてつもなく驚いたような顔をする。
「‥‥何よその意外そうな顔は」
「いや、意外というか‥‥よく彼氏が出来たな、と思って‥‥」
「奇跡的にフィーリングがあったとてつもなく心が広いなんですよ」
僕がそう言うと千夏さんがムッとした表情になる。
「何よ、その言い方だと私がよっぽどみたいじゃない!」
「よっぽどですよ」
「よっぽどでしょ、かなり」
「よっぽどだと思うけど‥‥」
九重君と正岡君とフミが素早くツッコミを入れる。
「何よそれ!」
性格云々以前に、千夏さんの趣味趣向に合致する人と出会えるのは奇跡だと思う。
「随分と余裕そうね」
急に背後から声がした。
振り向くと、吉兆さんが立っていた。
「私に負けるなんて考えてないってわけ?」
吉兆さんが挑発するような口調で言う。
「結果はどうなるか分かりませんけど‥‥負けるつもりはありませんから」
僕がそう答えると、吉兆さんは僕を睨みつけ自分の待機場所に戻った。
「どうせなら『絶対勝つ』くらいのこと言いなよ」
フミが笑いながら言う。
「それは‥‥」
ちょっと言い過ぎというか‥‥
「大丈夫だよ。悠なら勝てるから」
「他人事だと思って‥‥」
「ま、他人事だしね。でも応援はしてるよ。本気でね」
フミはそう言うと立ち上がる。
「じゃ、悠と二宮さんのために頑張りますか!」
フミと三神さんが障害物競争のトップバッターだ。
「そうですね」
「三神はアイツに良いところ見せなきゃだしね」
千夏さんが悪戯っ子のような笑顔を浮かべて言うと、三神さんの顔がじわじわ赤くなっていく。
「べ、別に十文字は‥‥」
「へぇ、十文字なんだ」
三神さんが焦りながら小さめの声で言うと、千夏さんも同じくらいの声量で返した。
「え、いや、ちが‥‥」
「三神さんってやっぱり十文字のこと‥‥」
「違います! というかやっぱりってどういうことですか!?」
フミも千夏さんと同じような顔で言うと、三神さんはさらに焦った顔で答える。
「だっていつもお昼ご飯一緒に食べてるし‥‥積極的に話してるし」
「だからあれは‥‥」
『それでは、第五走者までの選手の皆さんは、スタート位置に移動して下さい』
三神さんが全部言い終わる前にモモさんのアナウンスが入る。
「じゃ、行ってくるから!」
僕の後ろにいた五泉さんが九重君の頬にキスをして立ち上がる。
九重君は迷惑そうだけど、いつでもどこでもキス出来るのは‥‥ちょっとだけ、羨ましい。
「じゃ、頑張ってね、アイツの為にも!」
千夏さんが三神さんに笑顔で言うと、三神さんは千夏さんを睨みつけて移動した。
(‥‥実際、どうなんだ?)
八雲が小声で僕に訊く。
(何が?)
(三神、十文字のこと好きなのか?)
(さぁ‥‥一応気にはしてるみたいだけど)
十文字は三神さんのことは好きらしいし、三神さんさえよければ、理想的なカップルだと思うんだけど‥‥
(十文字は三神が好きみたいだから、三神もそうなら両思いなんだけどな)
八雲が応援席の方を見ながら僕が思ったことと同じことを言う。
(八雲、何で知ってるの?)
(‥‥見てれば分かるだろ。千夏さんとか京極とかと態度が違うし)
‥‥相変わらずの観察力だ。