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僕の恋人  作者: 織田一菜
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第五十話  誰かのおかげ

始めは悠視点、途中から真鈴視点です。

開会式を終えた僕達は、また応援席に戻って来た。


今は中等部の一年生が競技を行っている。


城羽の体育祭は三つの軍に分かれていて、殆どの競技はそれを二つに分けて6人、もしくは6組で競技を行うことになっている。


「やっぱり厳しいな‥‥」


真鈴が今行われてる競技を見ながら呟く。


やっぱり白軍は他の二つの軍より成績が悪く、ほとんどの人がビリかブービーで、良くても3位という有様だった。


「これじゃあ白軍が勝つのは厳しそうだな」


八雲が僕達にしか聞こえないような小さい声で言う。


「結構悠と真鈴の話広まっちゃったから、他の軍の子が頑張っちゃってるしね」


「広めたの千夏でしょうが」


千夏さんが笑いながら言うと姫乃さんが呆れたような顔で見る。


僕が吉兆さんに勝負を挑まれたことは、千夏さんによって翌日には学校中に広まっていた。


「まぁ、しょうがないよ痛いっ!」


千夏さんが全部言い終わる前に姫乃さんが千夏さんを叩く。


「反省しろよ‥‥」


十文字が呆れ顔で呟く。


「でも、直接対決した時に勝てば問題ないんでしょ?」


「そう考えると、ずいぶん緩い条件だな‥‥」


千夏さんが僕を励ますように言うと、十文字が続けざまに言った。


「自分が負けるとは思ってないんでしょうね、あの子」


三神さんが敬語で答える。


「自意識過剰かよ‥‥」


「実際凄い子なのは確かなんですけどね‥‥」


三神さんはそう言うとため息をつく。


「じゃあぁ、その長い鼻をへし折らなきゃだねぇ」


京極君がいつもの笑顔で言う。


「‥‥うん。そうだね」


正直、吉兆さんがどう思っていようが、どんな人だろうが、僕には何の意味も持っていなかったし、興味はなかった。


ただ、僕はずっと真鈴の側にいたい。


それだけは、絶対に譲れないことだった。


だから、吉兆さんに負けるわけにはいかなかった。


「そろそろ出番じゃないですか? 一之瀬さん、800メートル走も出場するんですよね」


三神さんが僕に言う。


気がつくと中等部1年生の競技が終わり、次の競技になっていた。


「あ、はい」


「吉兆をビビらせてこいよ」


八雲が笑いながら言う。


言われるまでもなかった。



◆◇◆◇◆



悠は速かった。


もちろん、リレーの練習を一緒にしてきたから、速いのは分かっていた。


だが、今日の悠は今までとは比べ物にならないくらい速かった。


「悠は速いねぇ」


私の隣で椅子に膝を立てながら見ていた京極がグラウンドの方を向いたまま、私と京極の隣にいる砂川さんにしか聞こえないくらいの声量で言う。


「ああ、今までで一番‥‥」


「あれ、きっと真鈴のおかげだよ」


京極が声量はそのまま、口調だけを変えて私に言った。


この前の口調とは、また別だった。


「私の‥‥?」


「真鈴にいいところを見せたいってのもあるし、真鈴のために吉兆に勝ちたいってのもあるし‥‥悠が何て言ってるかわからないけど、本心では真鈴の隣にいることを皆に認めさせたいんでしょ。真鈴の側にいることに足るだけの実力を示して‥‥ね」


京極はそう言うと笑う。


「本気で好きなんだろうね、真鈴のこと」


頬が熱くなるのを感じる。


きっと、顔が赤くなってるんだろう。


でも、そんなことを気にしないくらい、体中が喜びに包まれていた。


私なんかのために、悠が頑張ってくれている。


それだけで嬉しかった。


「‥‥また『私なんかのために』って思ってるでしょ」


京極が呆れたような口調で言う。


どうしてこの男は人の心を読むのが上手いのだろうかと、驚きを通り越して感心してしまう。


私が何も答えないことを肯定と受け取ったのか、京極はため息をついた。


「またネガティブになってるし‥‥自信持ちなって言ったでしょ?」


京極は私の方を向いた。


笑っているように見えるが、ひどく冷めた目をしていた。


「まぁ、"あんなこと"があっても自分を変えずに貫き通すっていう根性は凄いのかもね」


全身が冷水をかけられたように冷たくなっていった。


心臓が止まってしまいそうだった。


この男は‥‥私の"過去"を知っている。


誰にも知られたくない過去を‥‥


「貴様‥‥!」


なるべく感情を押し殺して言おうとしても、どうしても感情を消しきれずに声が大きくなる。


京極は表情を変えずに唇の前に人差し指を出し、静かに、とジェスチャーをする。


「大声だすとみんなにバレるよ‥‥心配しなくても、今の僕の声は真鈴とヒメにしか聞こえないし、ヒメは真鈴のこと知ってるから」


京極がそう言うと砂川さんが私を見る。


「知り合いがあなたを知っていてね‥‥だいたいそいつから話は聞いてるわ」


「それにしても‥‥」


京極はうっすらと微笑みを浮かべる。


「真鈴が感情をそんなに他人に見せるなんてね」


「‥‥何かおかしいことがあるか?」


「それは悠のおかげ‥‥かな?」


京極は私の問いには答えずに質問する。


私が黙っていると、京極はまた前を向いた。


「悠が絵里に何でこんな勝負したのか聞いたら‥‥絵里は真鈴の過去を全部話すかもね」


そんなことは分かっている。


それは、いまさら誰かに言われたところでどうしようもないことだった。


「‥‥だから、その前に私の口から言え、と?」


私がそう言うと京極は首を横に振った。


「僕も分からない‥‥無責任だとは思うけど、僕は真鈴の立場になったことがないから、こうすればいいとか、アドバイスする資格はない。でも、一つだけ言えるとすれば‥‥」


京極はそう言うと真剣な表情になる。


「『嫌われないように生きるのって大変だけど嫌われないように生きてるってバレたら嫌われちゃうよ?』」


京極はそう言うとまた元の表情に戻る。


「まぁ、嘘さえつかなきゃ、悠は言っても言わなくても真鈴を嫌いになんてならないと思うけどね」


京極はそう言っていつも通りに笑う。


心の中がスッとしたような気がする。


心のモヤモヤが無くなった、そんな感じだ。


私が今しなきゃいけないことは、たった一つだけだ。


今回でちょうど50話です。

考えていた話数よりだいたい2倍になりました。

ただ、今現在考えている話をすべてつぎ込むと、話数が大変なことになりそうです。

そこで、みなさんに質問です。

どんな話、誰の話が読んでみたいと思いますか?

今現在、悠、真鈴、三神、由香の過去の話を書くことは決めてあります(悠の話を書くうえで由香の過去も書かなければならず、三神の過去を書くうえで真鈴の過去を書く必要があるので)。

ですが、八雲、京極以外のキャラの過去の話を書くかどうか決めていません(京極は今のところ書く予定がないです。ヒメの話を書くときには若干書きますけど)。

御用力よろしくお願いします。

ちなみに、今現在のキャラは

四条奏

八雲雄祈

五十嵐一二三

七瀬葵

九十九新太郎

千石千夏

百武真琴

砂川姫乃

十文字望海

京極遥

六車京華

結衣

十六夜月

吉兆絵里

です

(他キャラは「キス魔な彼女と草食系僕」にて記載予定です)


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