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僕の恋人  作者: 織田一菜
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第四十八話 自信を持ちなよ

吉兆絵里きっちょうえり――それが女生徒の名前だった。


身長158センチ、体重45キロ、座高78センチ。


僕達とは違うクラスの生徒で、性格は真面目で大胆だけど頑固でなかなか自分の主張を変えようとしない。


そして、どうやら真鈴に何らかの好意を抱いている。


それが京極君が調べた彼女のプロフィールだった。


「趣味に好み、家族構成まで‥‥よくこんなに調べられたな」


真鈴があまりの情報量の多さに若干引き気味に訊く。


「オイラの手にかかればぁ、アメリカの軍事情報だって手に入るよぉ」


京極君は笑顔でとんでもないことを言う。


実際に京極君なら出来てしまいそうで恐い。


「真鈴はぁ、この子と知り合いなのぉ?」


「まぁ‥‥知ってはいるが」


「そうなの? 何で?」


「まぁ‥‥色々とな」


真鈴は言葉を濁した。


「そっか‥‥あ、凄い、この人。帝清学園ていせいがくえんの出身なんだ」


帝清学園は県立の中等一貫教育の学校で、何人も名門大学に進学させてる全国でもトップクラスの進学校だ。


「そうみたいだねぇ」


「何で城羽に来たんだろう‥‥」


城羽も一応進学校だけど、帝清には及ばない。


「帝清は学力上位者と下位者の格差が激しいからな‥‥ついていけなくなったのかもな」


僕の疑問に答えたのは真鈴だった。


「ずいぶん‥‥詳しいんだね、真鈴」


僕がそう言うと真鈴は何故か慌てたような顔をする。


「いや、別に詳しいわけじゃ‥‥ただ知り合いが帝清に通ってるからな」


さすが真鈴の友達、レベルが高い。


「そんなことより、どうするんだ、この子のこと」


真鈴がそう言って京極君が持って来た紙を指差す。


確かに、今一番考えなきゃいけないのはそれだった。


「とりあえず、もう一回会って、どういう意味なのか訊かないと‥‥」


「いや、それは‥‥」


「別にぃ、その通りの意味でしょうぅ?」


京極君が紙を片付けながら、少し焦り気味な表情になった真鈴を見て言う。


「この子はぁ、悠と真鈴にぃ、別れて欲しいってことでしょうぅ? 思い立ったら即行動みたいな人だし、何かで戦える機会ってこういうイベントかテストくらいでしょう? もし、この子が帝清で下位だったら、学力じゃあ勝てないって思ったんじゃない?」


「別れて欲しいって‥‥何で?」


「さぁ? いくつか理由は考えられるけどぉ‥‥まぁ、普通に考えたらぁ、この子が悠のこと好きなのかぁ、あるいはぁ‥‥」


京極君はそう言うと真鈴の方を向く。


「真鈴が好きなのかぁ、どちらかじゃないぃ?」


京極君が再びとんでもないことを言う。


真鈴は俯く。


「真鈴はぁ、女の子にも人気あるでしょぉ」


確かに、真鈴は僕と付き合う前には男からだけでなく女子からも告白されていたらしい。


「それは‥‥多少は‥‥でも、一部だけだ」


「そんなことないでしょぉ? 真鈴、めちゃくちゃポイント高いよぉ? もちろん悠もね」


「え、僕?」


急に僕の方に話を振られた。


「そんなことないよ、僕よりモテそうな人、まだまだいるし‥‥」


それは僕の本心だった。


八雲や十文字みたいに、僕よりかっこいい人は、もっと沢山いる。


すると京極君は、急に真面目な顔になった。


「お前らのそういうとこ、俺は嫌いだな」


急に京極君の口調が変わった。


それは、京極君が誰かを説得しようとしたり、叱咤する時の口調だった。


「二人共、謙遜しすぎなんだよ‥‥ムカつくくらいにね。確かに、悠の近くには八雲や十文字みたいに優れた男がいるし、真鈴の近くには葉みたいな優れた女がいるから、そいつらと比べたら足りないものがあるとか思うかもしれない。でも、客観的に見て二人とも周りが羨むくらい高い能力を持ってるよ。もっと自分を知りなよ。自信を持ちなよ。ポジティブに考えなよ」


京極君はそう言うといつもの笑みを浮かべる。


「自分を‥‥知る‥‥」


真鈴が小さく噛み締めるようにゆっくりと呟く。


「まぁ、今はそんなことよりぃ、この後どうするか考えなぎゃだねぇ‥‥と言ってもぉ、方法は一つしかないけどぉ」


「一つ‥‥?」


「この子に体育祭で勝てばいいんでしょぉ?」


「勝てばって‥‥」


「だってぇ今更話してどうにかならないと思うよぉ。この子ぉ、一度言ったことは絶対に曲げないみたいだしぃ。ねぇ?」


京極君はそう言うと、真鈴に微笑みかけた。


真鈴は京極君から顔を背けて僕を見る。


「とにかく‥‥勝てば問題ないわけないのだろう?」


「それはそうだけど‥‥」


絶対に勝てる自信が無い。


「大丈夫だよぉ、悠なら勝てるからぁ、自信持ちなよぉ」


京極君は笑いながら僕にぽんと叩く。


「‥‥うん」


僕は頷く。


真鈴は相変わらず複雑そうな顔をしていた。


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