第十八話 スクープ
夢魔の巣から帰って来た翌日。
今日も二宮さんは僕のことを迎えに来てくれた。
部活の朝練に行った由香が行ってから、二人きりになる―――はずだった。
「さぁ、じゃんじゃん食べてね!」
そう言って僕と二宮さんの前に立つのは、僕より身長が10センチ以上低い、エプロン姿の、見た目小学生くらいのかわいらしい女の子だった。
「えっと‥‥誰なんだ?」
二宮さんが僕に聞く。
「六車京華さん、このマンションの管理人です」
「管理人!? 子供なのにか!?」
「子供じゃないよ! 私はあなた達より一回り以上年上なんだから!」
「それは‥‥嘘だろう」
「嘘じゃないよ! 悠ちゃん、説明してあげて!」
六車さんが涙目で僕に言う。
「えっと‥‥信じられないことに事実です」
「信じられないってなにさ!」
「そんなバカな‥‥」
「何でよ! もう、ちょっと待ってなさい、すぐに証拠持って来るから!」
六車さんはそう言って僕の部屋から出て行く。
「‥‥何であの人はここにいるんだ?」
「祖父と仲が良かったみたいで‥‥僕と由香の母親代わりらしいんです、あの人」
僕の家に両親が住んでない、ということはすでにもう二宮さんと三神さんには話した。
「城羽のOGなんですよ、あの人」
「じゃあ、本当に年上なのか‥‥信じられない」
「まぁ、僕も最初に会った時はそうでしたから」
僕は驚いてる二宮さんを見て思わず苦笑いする。
「持って来たよ、証拠! ホラ!」
そういって六車さんが二宮さんの目の前に突き出したのは保険証だった。
「昭和生まれ‥‥」
「ね、これで分かったでしょ?」
六車さんが胸を張って言う。
「あ、ああ‥‥」
二宮さんはまだ信じられないというような顔をしている。
「ほら、そしたらさっさと食べて準備しなさい! 二宮さんも食べてって!」
六車さんは笑顔で僕達に言った。
「だ、大丈夫ですか、二宮さん?」
「ああ、大丈夫だ‥‥多分」
学校に来てから、二宮さんが苦しそうな顔で僕の隣の机に(二宮さんの席ではないけど)突っ伏している。
あの後、六車さんが自分の作った朝食を既に朝食を食べていた二宮さんに半ば無理矢理に(泣き落としで)食べさせた。
「そんなことより‥‥皆が私達を見ている気がするのだが」
そう言って二宮さんは周りを見渡す。
「そうですね‥‥なんだろう‥‥?」
昨日や一昨日も僕たちのことを見ていた人はいたけど、今日は何か違った。
「おはよ、二人共」
教室に入って来たフミが僕達に挨拶する。
「ああ、おはよう」
「おはよ、フミ」
僕と二宮さんが挨拶を返すと、フミはにっこり笑う。
「二人共、ベタ惚れなんだね」
「え?」
「どうゆうことだ?」
「ほら‥‥これ」
そう言ってフミが見せてくれたのは新聞部が作った学校新聞だった。
そこには、昨日のインタビューが二宮さんが僕を抱きしめる写真付きで載っていた。
「な、なんだこれは!」
「え、身に覚えがないの? 千夏はガセは書かないけど‥‥」
フミの言葉は、二宮さんに届いていなかった。
すぐに机から立ち上がって、走り出す。
「うわ、速いね」
フミが感心したように言う。
「ところで、フミは何で千夏さん知ってるの?」
「ん、ああ‥‥昔、ちょっとね‥‥そんなことより、二宮さん追いかけなくていいの? 千夏のところに行ったんじゃない?」
「多分‥‥」
そして僕は昨日のやり取りを思い出す。
「止めて来る!」
僕はフミにそう言って走り出した。
今回は短めです。
スイマセン‥‥
「キス魔な彼女と草食系僕」連載中です。
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いまだに使い方がよくわかりません‥‥