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僕の恋人  作者: 織田一菜
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第十話 呼び出し

今回は二宮視点です

朝、私達の関係が皆に知れ渡ってから私達は休み時間のたびに質問責めにあっていた。


皆私が思っているより暇のようだ。


それでも、応援してるから頑張って、と言ってくれる。


一之瀬は「殺意を感じる」と言っていたが、そんな感じは微塵もない。


「皆優しいんだな‥‥これなら葉や七瀬先生の心配は杞憂に終わりそうだな」


放課後、どこかに行こうとしていた葉を引き止め、二人きりになった時にそう話してみた。


「‥‥ここのクラスはお人よしでお節介な人ばかりだから、一之瀬君と真鈴の恋路を応援してくれるだけよ? 安心しちゃダメ」


「でもな‥‥」


「その証拠に、ホラ」


葉はそう言って私に一通の便箋を渡してくる。


「これ‥‥は‥‥」


私は中を見て、絶句した。


それは脅迫じみた言葉で書かれ、私と一之瀬の交際をやめろ、という内容の手紙だった。


「誰が‥‥こんな‥‥!」


「体育の後にあなたの机に入ってたわ。もう一之瀬君と付き合ってるのは学園内周知の事実らしいから、他の学年かもしれないわね。まあ、こういうのは今度からあなたの机やロッカーや靴箱に入ってる手紙を中身を見なければいいだけだから」


三神は冷静な顔で言い放つ。


「それより心配なのは一之瀬君の方よ」


「一之瀬が、どうかしたのか?」


私が聞くと葉は呆れたような顔をした。


「あなたは本当に‥‥頭のネジが2、3本なくなってるんじゃないかしら」


「失礼だないきなり」


私がムッとしながら聞くと、葉はさらに呆れたような表情になる。


「失礼なのはどっちよ‥‥何回言わせるつもり? クラスのマスコット的な人気の一之瀬君と違って、真鈴はアイドル的な人気者なのよ? 異性として見られてない可能性がある一之瀬君と違って真鈴は絶対に異性として見られてる。それに女子が直接暴力に訴えることはないだろうけど、男だったら有り得るわよ‥‥ただでさえ一之瀬君、あんまり強そうには見えないし」


「だ、だったら早く一之瀬を探さなきゃじゃないか!」


「どこかに行った一之瀬君を追い掛けようとしたら、真鈴が呼び止めたんじゃない」


そうだった‥‥


「あれ、ニーノ?」


ふいに背後から世界で一人しか使わない呼び名を使う、聞き覚えのある声がした。


振り向くと、やはり奏がいた。


「どうした、奏? 帰ったんじゃないのか?」


「いや、忘れ物‥‥ってか、ニーノこそどうしたんだよ? 悠呼び出したんじゃなかったのか?」


奏がそんなことを聞いてきた。


「なんのことだ?」


「なんのことって‥‥悠が言ってたぜ、放課後ニーノに体育館裏に手紙で呼び出されたって。照れるのは分かるけど、恋人同士なんだからちゃんと顔合わせて会話しなきゃ――」


その後も奏は私に文句を言っていたと思う。


だけど、私はもう聞いてなかった。


私が出していない手紙で一之瀬が呼び出された―――


導き出される答は一つだ。


一之瀬が、危ない!


「葉!!」


「分かってる!!」


私達が走り出したのは同時だった。




走りながらも、私は悔やんでいた。


なぜ、私はこんなにも浅はかなのか。


葉に言われた通り頭のネジが足りないに違いない。


考えが‥‥甘かった‥‥!


「一之瀬が‥‥私のせいで‥ッ!」


思わずこぼれた呟きに、葉が反応した。


「まだやられてるかどうか分からないでしょ!? クヨクヨしてないでしゃきっとしなさい!! 場合によっては私達でやらなきゃいけないのよ!?」


葉はそう言って私の腰を叩く。


「‥‥そうだな」


私はそう言ってさらに加速する。


「先に行ってる!」


私は振り返らずに葉に告げる。


「さっさと全員倒しちゃいな!」


葉はそう返してくれた。




「ここ、か‥‥」


私は一人で体育館裏の曲がり角に着いた。


乱れている息を整え、集中する。


何も物音はしない。


もしかしてもう‥‥という絶望が体を支配しそうになる。


それに堪え、出来るだけ冷静に角から少しだけ顔を出した。


そこには、一之瀬はいなかった。


いたのは、うめき声をあげながら地面に突っ伏す男達だった。


「おい、大丈夫か!?」


慌てて男達に駆け寄った。


「う‥‥あ‥‥‥」


男達はまともに返答出来る状態じゃなさそうだ。


「七瀬先生を呼ばないと‥‥」


私はもう一度、全力で走り始めた。




七瀬先生によると、男達は鳩尾を突かれ呼吸困難になっていたそうだ。


『全く、ここまでやるのはいくらなんでもやり過ぎだろうに‥‥』


七瀬先生はそう愚痴っていた。


「あの人達って‥‥一之瀬君を呼び出した人達?」


学校から帰る途中、葉が私に聞いてきた。


「そうだろうな‥‥近くに金属バットが落ちていた」


「なら‥‥あの人達を倒したのって‥‥」


「一之瀬じゃない!!」


自分でもびっくりするくらい、大きな声を出していた。


「一之瀬は、そんなことする奴じゃない!! あいつは‥‥自分より、他人を大切にする優しい奴だ! こんなことする奴じゃないんだ!!」


葉はそれを聞くと、少しだけ微笑みを浮かべた。


「信頼してるのね‥‥状況は圧倒的に不利なのに‥‥」


「私の‥‥惚れた男だからな」


顔が赤くなっていくのを感じる。


「なら‥‥確かめに行きましょ」


「確かめにって‥‥誰にだ?」


「一之瀬君本人に決まってるでしょ、他に誰がいるの? ほら、案内して」


「葉‥‥一之瀬がやったと言うと思ってるのか?」


「思ってないわよ。一之瀬君がやったにしろやってないにしろ、否定はするでしょうね。だから、私達で一之瀬君が本当のこと言ってるかどうか見分ければいいでしょ?」


「そんなの、分かるのか?」


「さぁ? でも確認しないと気持ち悪いの」


葉はそう言って私の手を取って歩き出した。




そんな訳で私達は一之瀬の家に来ていた。


私達が来た時には一之瀬は私服になっていた。


私服姿もかっこいいな‥‥


「どうしたんですか、二宮さん?」


一之瀬が不思議そうな表情で聞いてくる。


「あ、いや、なんでもない」


一之瀬に見とれてたなんて言えるはずもなく、ごまかす。


「二人共急にどうしたんですか?」


「ちょっと聞きたいことがあってね」


葉が真剣な表情で答えた。


「一之瀬君、今日手紙もらったでしょ」


「もらいましたよ。二宮さんから呼び出しの手紙」


「それで‥‥行ったの?」


「行ってませんよ。フミにとめられましたから」


「五十嵐君が‥‥?」


予想外の名前が出て葉は面食らってる。


「行こうとしたらフミに『どうせ偽手紙だから行かない方がいいよ。危ないから』って言われて『今日は早く帰った方がいいと思うよ』って言われたのでフミと一緒に早く帰って来たんですけど‥‥もしかして探してました?」


一之瀬は申し訳なさそうな顔でこちらを見る。


「いや、そんなことはないから、気にしなくていい‥‥でも今度からは一言欲しいな」


「すいません‥‥」


そう言って一之瀬は俯く。


「いや、そんな落ち込むことじゃないからな」


私は焦りながらそう言う。


なぜ焦っているのか、自分でも分からなかった。


「ありがとうございます」


一之瀬が笑顔になる。


この顔を見るたびに胸がドキドキする。


これだけはいつまでたっても慣れない。


その後、私達はしばらく雑談して帰った。




「で、どう思う、真鈴?」


家までの帰り道、葉が私に聞く。


「どう思うも何も、私は最初から一之瀬じゃないと思ってる」


「やっぱり、そう言うと思った」


なら聞くな。


「葉はどう思ってるんだ?」


「うーん‥‥一之瀬君がやった可能性はある、って所かしら」


「でも、一之瀬は五十嵐と一緒にすぐ帰ったんだろ? だったらあいつらを倒す時間はなかっただろう?」


「五十嵐君と組んで嘘ついてるかもしれないじゃない。少なからず何か隠してる雰囲気はあったわ。真鈴は一之瀬君に見とれてて気付かなかったみたいだけど」


「み、見とれてなんか‥‥」


「ともかく、明日確認する必要がありそうね」


葉は私を無視して呟く。


「どうやってだ?」


「それは―――」

ストックなくなりました……(汗)


一応頭の中にはある程度あるのですが…

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