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細い山道を、蛇のように縫うようにバイクは疾走する。
枝が五月の頬をかすめ、冷たい空気が刃のように顔を切る。
「この先、崖だから。飛ぶよ!」
少女の声は迷いのない、硬質な響きだった。
「と、飛ぶ!? なに言ってんの!?」
喉がカラカラに乾く。心臓が喉の奥で暴れ回る。
前方に目を凝らすと、確かにそこは断崖絶壁。
下は霧に包まれた闇――高さも深さもわからない。
「そんな無茶、できるわけない!」
叫びかけたときにはもう、少女はアクセルを目いっぱいに捻っていた。
バイクが咆哮を上げて崖へと突進する。
風が渦を巻き、二人の髪と服を激しくはためかせる。
「しっかりつかまって!」
その声に、五月は楽器ごと少女の背にしがみついた。
バイクが地面を離れた。
空中で、世界が軋むような異音を立てる。
空間が、裂ける。
布を引き裂くように、目の前の空がひだのように揺らぎ、
その奥にぽっかりと開いた“穴”が現れた。
それは黒とも白ともつかない、星のように瞬く光の裂け目。
この世界のどこにも属さない、異質のもの。
「いっくぜぇぇぇぇぇ!!」
少女の叫びとともに、バイクはその穴へ一直線に飛び込む。
すべてが反転する。重力も、音も、感覚さえも消えていく。
恐怖と決意が交差する中、
二人は――光の中へ消えた。
ここまで読んでくださった方がもしいたら大変うれしいです。ありがとうございます。
こういった作品を投稿するのは初めてなので、
ちぐはぐですがもしレスポンスあれば続けていこうかなと思います。