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門の前で車両が停止した。
そこにあったのは、
深い森に囲まれた巨大な屋敷。
祖父の家だ。
誰も迎えには出てこない。
静寂だけが、そこにあった。
受けとっていた鍵を取り出し、ドアを開けた。
電子式でも、生体認証でもない。
「今時カギ使うって、古くさすぎでしょ」
中はひんやりとしていて、きれいに整っていた。
ただし、その清潔さとは裏腹に、全体的に古臭い。
木の床、革張りのソファ、壁掛けのアナログ時計。
なんともレトロな内装だ。
端末にアクセスすると、すでに遺品リストが登録されていた。
重要書類の場所、貴重品の保管場所、廃棄対象の一覧。
整理作業は想像よりもあっけなく、簡単に終わった。
「こんなもんかなー」
リビングのソファに腰を下ろし、一息ついた。
「ここで暮らしてたんだなあ、ずっと。
あってもしょうがないし、取り壊しになっちゃうんだろうけど。ちょっと寂しいかな。」
「…コーヒーでも入れますかっ…っと」
立ち上がると同時に、幼いころの記憶を思い出した。
「あれ?そういえば、あのとき一部屋だけ、生体キーの部屋があったような…」
記憶を頼りに書斎に行くと、今は本棚があった。
「なんで塞いじゃってるわけ?怪しいな…」
「動かすか…重った!ぐぬぬぬぬ…」
やっとの思いで動かすと、そこにはやはり扉があった。
「やっぱりあった。これどうやって開けるか…」
悩みながら目を近づけると、なんと登録してあったらしく、電子音が鳴り、ゆっくりとドアが開いた。