SHIN
(………。)
『あ、雲がかかって……』
太陽が雲に遮られて、光を隠す。
『あーあ。暗くなっちまった』
天気予報なんて、まったくアテにならない。
『晴れだって、言ってたじゃねぇかよ』
空に向かって、悪態をつく。
『どうせ、人だって同じだろ』
暗くなった空を睨みつけて、地面に向かって吐き捨てる。
『俺に言ったこと、ちっともやりゃあしねぇ』
真面目に取り組んでるのは俺だけで、他はサボってばかりいる。
それなのに、他の奴が上にいく。
『俺は、一体、何のために……』
決めたはずの覚悟が、胸の中で揺れている。
『この道こそが正しいと……そう、信じてきたのにさ』
俺は何を間違えた?
俺は何をあやまった?
過去のことばかりが、浮かんで消える。
『そうか、やっぱりあの時か』
あの事件があって、俺の心は変わってしまった。
ーーなんて汚ねぇ、この世界
ーーなんて、愚かなこの世界
ーーなんで、俺は生きてんだ……
こんな、世界。
この俺に、酷いことばかりを投げつける。
『ありえねぇ』
真面目にやってる人間が馬鹿を見る。
そんなことがあっていいのかよ。
そんな世界があって、いいのか。
もう、そんなら、いっそ……。
俺の中に火が灯る。
忘れかけていた火が灯る。
『……なぁ、許して、くれるよな?』
ここまで、こんなに頑張ってきた。
それなら、これくらい、わがまま言ってもいいだろう?
『なぁ、神様』
俺は決して信心深い方じゃないけれど、あんたのことは嫌いじゃない。
人は嫌いになったけど、俺にはまだ、味方がいる。
『汝の御心に従いて』
ーー失くしかけた人の心
ーー失くさず済むは貴方のおかげ
どうか、俺に、周りに、救いの手を。
どうか叶えてやって下さい。
みんなの願う、望みとやら。
俺のは最後でいいからさ。
俺のは、あんまりよく分かんねぇ。
だから、神様、お願いだ。
みんなの願い、叶えてやって。
だってよ、あいつら、泣きそうな顔してるんだ。
今にも崩れてしまいそう。
たまんねぇよ、俺。
だから、叶えてやってくれ。
あいつらの楽しむ顔が、見てぇんだ。
それが、俺の夢だから。
嘘じゃねぇよ、ほんとだよ。
嘘に見えても、ほんとだよ。
……貴方にならば、言えるから。