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Suzuran

へたくそで、マジごめん!


 俺の夢は、何だと思う?


 のっけから、つい人に聞いてしまう。


 だって、素直に言ったら、笑われるかもしれないでしょう?


「お前がそんなこと言うか」って。


 だから、恥ずかしくなっちゃって。


 ……そりゃーね。俺は仕事も出来ないし、人付き合いも酷いもんだし、お金だってあんまりない。


 そんな俺が


「Yes! My dream!」なんて叫んだって、人は笑うよね。


『お前に出来るはずがない』って。

『やめとけ、そんなの傷つくから』。

『なんで、そんな叶いっこない夢を』。


 そう言って、悲しそうに笑うんだ。


 まるで、知ってるみたいにさ。


「Because I am fool!」


 そう言って、俺はみんなの顔をうかがうよ。


 どんな顔、するのかな。

 どんな反応するのかな。

 どんな気持ちがあるのかな。


 ……俺の夢を馬鹿にしないでいてくれるかな?


 俺はずっと、分かってる。


 俺が"(くち)だけ(おとこ)"だと。


 言うだけ言って、逃げてきた。


 夢の叶う、その場所へ。


 まだ叶えていないから、俺は確かに"口だけ男"。


 でも、俺はずっと抱えてる。


 みんなで笑える、その世界。


 どんな特性持ってても、「別にいいじゃん、遊ぼうよ!」。


 そう言い合って、肩を組む。


 肩を組めなきゃ、握手する。


 握手できなきゃ、言葉で言って、


 それでもダメなら、目で語る。


 「それでもダメです」と相手が言うなら、

相手の心に向かって語る。


 音を出さずに、心で語る。


『俺は君と仲良くしたいだけ。それは叶わぬ夢ですか?』


 俺の言葉は(やいば)のようで、相手の心を切り刻む。


 相手が、痛い顔をする。


『あれあれ、ごめんね。何かした?』 


 相手は何にも言わないが、顔つきが変わって怒り出す。


『…………!』


 ……よーく分かるよ。俺だって。


 君とおんなじ時があったから。


 まったく同じじゃないけれど、似たような痛みを経験したの。


 俺は、おかしな人間で。


 俺の中に機械があって。


 すべての痛みをネタにする。


 話のネタに、笑いのネタに。

 時には皮肉のネタにしてみたり。


『よっしゃ、これでネタ、ゲット!』


 痛いだけで終わらせない。


 この痛みは、うまく加工して、みんなの元へ。


 みんながくすっと笑えるように。


『どうだ、俺の作品は!』


 みんなにシェアして、自慢する。


『はははは、どうだよ、同胞よ!』


 心の中は王様さ。


 だって、人は言ったもの。


 俺の言葉は力があると。

 俺の歌には力があると。


 誰に言われたか、忘れたけれど、

 確かに言われた記憶がそこにある。


 俺の頼りはそれだけで。


 他には何にもないけれど、それを(よすが)に今日もゆく。


 何となく気の向くところへと。


 俺の夢が指し示す、その場所へと駆けて行く。

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