コーヒーに甘酸っぱい青春は合いますか?
これは喫茶店で働く高校生男女の恋愛模様である。
今後は長期連載で出そうと思ってます!
雨が強く降る6月、ある1人の女性が「雨咲」と看板に書いてる少しモダンな喫茶店に雨から逃げるように入店した。
リンリンリン(ベルの音)
店に入ると客は彼女以外おらず店内は静かでどこか落ち着く雰囲気であった。店内にいるのは、客である女性、高校生2人、猫だけであった。
「いらっしゃいませ」
彼の名前は滝澤仁史、東京都在住の高校2年生である。彼は先月、自分が幼少期の頃から夢見ていた喫茶店を、今まで貯めたお金で喫茶店を開店したので、いらっしゃいませと言った時の表情はどこか初々しかった。そして開店したばかりだったのでメニューは少なく、従業員は3名しかいない(1名は猫)というのが現状であった。
「いらっしゃいませ。あちらの席にご案内いたします。」
仁史がカウンターからお客様に挨拶をすると、落ち着いた足取りでモデルのように美しい少女がお客様の元へと向かった。彼女の名前は西平綾美、彼とは同じ高校であり同級生である。そして、この喫茶店「雨咲」で働く数少ない従業員の1人である。彼女は高校の中では東京の小野小町と呼ばれるほどの美貌であり、良い人柄も兼ね備えているので男女両方から好かれている。彼女曰く、2つ名については恥ずかしいのでかえてほしいらしい。
「こちらお冷やとおしぼりとなります。ご注文がお決まり次第、お声掛けください。」
お客様に対して1通りの接客を行なったあと、綾美はカウンターの中にいる仁史に向かって歩いて行った。
「今日はあまり客入りが良くないね。ねえ滝澤君、何か客入りが良くなる方法ってある?」
綾美がこう言うと仁史は、綾美をお店の前に立たせれば集客ができるのでは、とふと思いついた。しかしこのやり方は綾美に対して申し訳ないな、と思い言うのを躊躇った。
「もしかしてあるの?私にやれることがあったらやるよ。」
「あるにはあるんだが・・・・・・」
仁史が言うのを躊躇っていると綾美はこれをいじるチャンスだと思い、彼をいじるために彼の耳元に近づき手で口元を隠した。余裕ですけどという顔をしていたが、彼女の頬は少し赤くなっていた。
「もちろん、いやらしいことはダメだよ?」
(ヤらしくはないだろ!てかあなた頬を赤らめてますよね?)
「別にいやらしいわけではないんだけどさ、綾美には申し訳ないことかなって思って。」
急に近づかれ思いもしなかったことを言われた仁史は動揺していた。そんな彼と対照的に綾美は何処かご機嫌が良くなっており、挑発的な笑みで続けて話した。
「そんなに気を使わなくても平気だよ。だって貴方は私のマスターなわけでしょ?」
(本当にあとで覚えてやがりください東京の小野小町さん客がいなくなったあと目にもの見せてやるよ)
「それはそうだけど・・・・・・」
「なら教えて。」
完璧に綾美にペースを持ってかれた仁史は綾美に先程考えていたことを伝えた。綾美は心の中で葛藤していた仁史のことなど知らず、えっ、そんなことで?という呆気に取られた顔をしていた。
「そんなことなら最初から言ってよ。じゃあ私やってくるから接客よろしくね。」
そう言うと綾美は店のドアを開けて雨除けの下に立ち、営業スマイルを撒き散らしながら集客を始めた。
「そんなことって・・・・・・まあいいや、俺は自分の仕事に集中だ。」
**********
数分後、仁史は先程とは違う店内の様子には驚いていた。
「えっ・・・・・・うそ?」
喫茶店内の席は全て埋まり外には行列までとはいかないものの人が並んでいた。それもそのはず、先程も述べた通り綾美の容姿は非常良く、程よい長さの黒髪にしっかりと引き締まったボディライン、しっかりと重量感を感じるお山と、2次元のキャラかと言わんばかりであった。
「喫茶店雨咲営業中でーす。もしよければ是非お越しくださいー。」
多少棒読みのような感じだったものの、主に男子や男性を中心としてお店に人が集まって行った。仁史はこれ以上お客様が増えると店が回らずまずいと思ったので集客を止めるために綾美の所へ向かった。
「そろそろ集客はこの辺で終わろうか。これ以上はまずい。」
「はーい。」
綾美は自分の行動が店のためになり嬉しかったのか、軽い足取りで店内に戻り接客をはじめた。そして2人は綾美がおこなった集客によって訪れた沢山のお客様を1人ずつ丁寧に捌いて行った。そうして山場を超えて人が少なくなってきた頃、客としてきた高校くらいの男子が綾美が自分のテーブルあたりに来た所でスマホを取り出して綾美に向けた。
「君、可愛いね。LINEやってる?やってるなら交換しない?」
「えーっと・・・・・・ハハハ」
(こういう場合ってどうすればいいのかわからない・・・・・・)
綾美は作り笑顔を見せながら何とかその場を丸く収めようと思ったが、どう振り切ればいいか分からず、困っていた。そんなことにお構いなく、高校生男子は続けて言った。
「そんな困らなくてもいいよ笑。とりあえず連絡先交換するだけだからさ。」
「・・・・・・」
(一体どうすれば良いのー?!)
綾美はとうとう言葉が思いつかなくなり、連絡先を交換するしかない、という結論に至った。
(交換したくない・・・・・・)
いやいやながらもスマホを取り出して彼に向けようとしたその時、彼女の後ろからはこの店内にいる時によく聞く、不器用ながらも優しい知っている男の声がした。しかしこの時の声は普段と違い優しくはなかった。
「すいませんお客様。このお店では従業規則により、仕事中の個人的な連絡先の交換は禁止となっております。なので必要以上に彼女に迫るのはおやめください。」
(本当はそんな規則ないが、その感じがいやなんだよ。)
「まじっすか?わかりましたよ。じゃあねお姉さん。」
(せっかく交換できる流れになったのに邪魔しないでくれよ)
高校生男子はいやな感情を抑えながらレジにささっと向かい会計を済ませて、店をでた。
「ありがとう滝澤くん。」
「いいよいいよ、次からああいう奴にはもっとビシッと言ってやれ。」
仁史はあの男に対する怒りが顔に出そうになったが我にかえり、心から込み上がる感情を抑えた。
**********
「よし、今日は客もいっぱい来たことだし早めに店を閉めるぞ。」
そう言い仁史は店のドアにかけられている看板を裏に返し、綾美の所へと向かった。
「滝澤くん、今日は改めてありがとうね。お陰で嫌な結果にならなかったよ。」
綾美は少し申し訳なさそうな顔をしながら、改めて先程の仁史の気遣いに対して感謝を伝えた。仁史は綾美の嫌な気持ちが晴れて良かったと思ったのと同時に、いじられたことも思い出し、さらに綾美に近づいた。
「それはよかった。それはそれとして綾美さん。」
「なに、ってえ!?ちょっと滝澤くん!?」
「さっきのお返しだよ。」
仁史は綾美を壁の方へと追いやり、左手を壁に突き出し綾美右耳に口を近づけささやいた。
「今から何されると思うかい綾美ちゃん。」
「えっちょっま!まって!」
((この距離感は色々とまずい!))
仁史、綾美は共に同じことを考えていたが、時すでに遅し、仁史は流れに任せて話を続けた。
「早く答えなよ。」
「・・・・・・やらしいこと?」
綾美は半べそになりながらもとりあえず頭に思いついたことを口に出した。仁史はその回答を聞き、さっき綾美にされたような挑発的な笑みとは違う、少し嘲笑うような笑みを浮かべた。
「別に何もする気なんてないんだけどな笑。もしかして期待してた?」
「仁史のバカ!!」
「あっちょっと待って!」
綾美はとうとう耐えきれなかったのか、顔が茹でだこのようになり、仁史が突き出した腕の下をくぐってドアの方に走り、勢いよくドアを開けた。
「じゃあね、ありがとうございました、」
「そのじゃあねは一体どういう?!」
バタン!(ドアが強く閉まる音)
捨て台詞のようにはかれた言葉に仁史はまずいやってしまったという気持ちになった。その後、残った食器や席の掃除をしていた仁史だったが、明日綾美がちゃんと店に来るのかドキドキしていたという。
「ニャー」(ちゃんと綾美はきたよー)
最後まで見ていただきありがとうございました。