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minus9.肝試し

真夜中の学校。

廊下をライトで照らしながら歩く二人の影が。

「ここですね。七不思議の一番目、ベートーヴェンの目が光る。あとは楽器が勝手に鳴るらしいです」

まず来たのは音楽室。

ドアを開けると静まり返っている部屋の中、ベートーヴェンの肖像画を探す。

「あった。これではないか?」

三千院さんが一つの肖像画を照らす。確かにベートーヴェンだ。

すると目玉だけがギョロギョロと動いた。

気持ち悪い…。

『ビーム!』

男の声がすると本当に目からビームが発射された。

それを跳んで避ける。ビームが当たった床は焦げていた。殺傷能力があるなんて聞いてないぞ!

『ビーム!ビーム!』

何度も発射されるが二人は全部避ける。

それに合わせてさっきから楽器の音がする。曲名は「天国と地獄」気分は運動会だ。

「面倒だな。そろそろ片付けるか」

三千院さんはそう言うと拳銃を取り出し、肖像画に向ける。

『特大ビーム!!』

どうやらベートーヴェンも同じ事を思っていたらしい。目を大きく開く。

発射される直前で三千院さんは引き金を引き、ベートーヴェンの両目を正確に撃ち抜いた。

『卑怯だぞ。飛び道具とは…』

そう言い残して肖像画は落ちた。

「卑怯も何もビームも同じような物だろうが」

眉間にシワを寄せながら拳銃をしまう三千院さん。

楽器達は鎮魂歌を演奏している。ベートーヴェンに向けてだろうか?

「先ほどは良い演奏を聴かせてもらった」

拍手をすると楽器達は静かになった。満足して眠りについたのだろう。

「これで二つは潰せたな。次は理科室の人体模型か」

「はい」


『うわああああっ!ごめんなさい!!』

『待て、コラァ!』

そこに叫び声や怒号と共に廊下を走る音がする。そして飛ぶ薪。

「何だ?」

何と人体模型と二宮金次郎が走っているではないか。

「あれは4番目の人体模型と三番目の二宮金次郎ですね…」

「何をしているんだ?」

『立ち読み禁止ーwwとか言ってすみませんでしたぁっ!!』

『ふざけんな。勉強の邪魔しやがって!』

また薪が飛ぶ。

聞く限り、人体模型が二宮金次郎に絡んだらしい。バカらしくなってきた。

目の前を通過していったと思ったらこちらに走って向かってくるではないか。

『ああー!助けて下さいいいいいっ!!』

人体模型が叫びながら助けを求めてくる。

『どこに行った!?』

見失う二宮金次郎。

「言う事を聞くなら助けてやらなくもない」

三千院さんが提案する。

『聞きます!聞きますから助けて下さい!』

「では、女子生徒を驚かさない事と男子生徒にパズルを挑まない事だ」

『それは…』

何故そこで渋る。

『そこかあっ!』

見つかった。こちらに薪を投げてくる二宮金次郎。

『ひいいいい!!』

三千院さんの後ろに隠れる人体模型。

何とも情けない男だ。

「はあっ!」

カンッ!カキンッ!

刀で薪を叩き落とす。

「さあ、どうする?」

『お、お願いします…』

「よし。ここは俺に任せろ。太刀華は薪を頼む」

「分かりました」

『邪魔をするなあっ!お前らは仲間か!?』

「仲間ではない」

『なら何で庇う』

「取り引きだ。お前が今から出す問題に答えられたらコイツを引き渡そう」

『良いだろう』

「ひいいいい!何を言っているのですか!?相手はあの二金(にのきん)ですよ?」

二金(にのきん)…。そう呼んでいたのか。

「それでは第一問。鎌倉時代成立は何年?」

「簡単だ。1192年」

二金は自信満々に答える。

「不正解。正解は1185年。今までは源頼朝が征夷大将軍に就いた年だが今は支配体制の確立をもって幕府の成立とする」

『そんな事知らないぞ!』

「今の教科書は変わっている」

歴史もできる三千院先生。

『クソ!』

「第二問。アメリカ合衆国の第16代大統領の名前は?」

『リンカーン!』

「不正解。正解はリンカン」

『違わないだろう!』

「グローバル化の加速を踏まえ、なるべく現地の読み方に近い表現で外来語を書き表す為だ」

『ぐっ…』

「これで最後だ。第3問、日本最大の前方後円墳は?」

『仁徳天皇陵!』

「不正解。正解は大仙古墳」

『この俺が全問不正解だと!?二宮金次郎としてのプライドが許さない。こうなったら勉強のやり直しだ!』

そう言いながら走り去っていった。

『ああ、ありがとうございますぅ…』

人体模型は三千院さんの手を握ってブンブンと振り回す。

「大した事はない。約束は守れよ」

『はいっ!それでは』

笑顔(?)で手を振りながら人体模型も自分の場所に戻っていった。

「あとは階段と花子様か」

「はい」


例の階段に行ってみる。ここで田辺先生はケガをした。足を引っ張られたという証言もある。

「行くぞ」

「1、2、3…」

数えながらゆっくりと階段を登っていく。

「…12、13」

「増えてます。昼に来たときは12段でした…うわぁっ!?」

そのときだった。足を何者かに引っ張られる。

見ると階段から無数の手が生えていた。

『ああ…』

『何で』

『痛い』

『助けてくれ』

声が聞こえてくる。

昔、ここで亡くなった者達だろうか。

手を死薇でズバッと斬る。

するとあのくらい多かった手は光に包まれて消えていった。

「亡くなった者達が仲間を求めて同じ世界に引きずり込もうとしていたのでしょう。ですが死薇で斬ったのでもうここでケガをする人はいないと思います。死薇は魂を浄化する刀ですから」

「そうか…」

二人で手を合わせる。

「残りはトイレと鏡だな」


目撃情報のあった3階の女子トイレに向かう。

一つだけ扉が閉まっている個室があった。ここだ。

「行きます」

ノックをする。

「花子様、花子様いらっしゃいますか?」

ギィィィィ…。

扉がゆっくりと開く。

『何?二日酔いだから今日は帰ってくれない?』

床を見ると甘酒の缶が散乱している。おそらくお供え物だろう。

霊も二日酔いするんだ。

「では、これは無用ですね」

『何よ?』

紙袋からある物を取り出す。

ファッション雑誌に載っていた最新のコーデ一式だった。

『ちょっと待って!マジ最高!』

先ほどまでの二日酔いはどこへやら。テンションが爆上げの花子様。

『欲しかったんだよね〜こういう服。だってさ、この服どれくらい着てると思う?時代遅れじゃん。でもこれはマジ感動した!あとは髪型が変わればな〜』

「では私が切りましょう」

そう言って私はハサミを取り出す。

『あなた切れるの?』

「はい。妹の髪をいつも切っていましたのでなれています」

『じゃあお願いするわ』

そうして髪を切っていく。

「上手いものだな」

三千院さんが感心して見ている。

「できました」

持っていた鏡を渡す。

『これよ、これ!』

どうやら気にいってくれたようだ。

「その代わりにお願いを聞いてもらえますか?」

『良いわよ。気分が良いから』

じっくり鏡を見ている花子様。

「こちらに来た生徒達にオールでカラオケに付き合わさせるのはやめてもらっても良いでしょうか?」

どうだろう。

『良いわよ。最近、睡眠が取れてなかったからお肌が荒れてるのよ〜』

案外軽く引き受けてくれた、美容に気を使う花子様。満足したのかすうっと消えていった。


残るは鏡ー。これが最難関だった。

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