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minus8.八番目のコックリさん

コックリさんー。

簡単に説明すると、紙に「はい」「いいえ」「五十音」などを書き、十円玉を乗せて質問をすると硬貨が動くというものである。

「コックリさんは海外にもルーツがあって、少女28人が『ヴィシャ降霊術』を行なった結果、失神して病院に搬送されたという事件もあります。おっと、本題から少しずれてしまいました。すみません。それで一年生が何人か集まり、放課後コックリさんを行なったそうです」

スラスラと語る片野君。


それはある日の放課後。

男女数人でコックリさんをやろうという話になった。誰が言い出したかは分からない。ほんの少しの好奇心からだったのだろう。それが事件に繋がるとはそのとき誰も思いはしない。

必要な物を準備をすると始まった。

「コックリさん、コックリさん、どうぞおいで下さい。もしおいでになられましたら『はい』にお進み下さい」

指を乗せた十円玉はスーッと『はい』に動いた。

「本当に動いた!」

「マジ!?」

皆が騒ぐ。

「それよりも速く質問をしようよ」

一人の女子が待ち切れないようで言い出す。

「そうだった。コックリさん、明日の天気は何ですか?」

「何だよ、それ。もっと面白い質問にしろよ」

すると十円玉は

『あ』『め』

と動いた。

他の一人がスマホで明日の天気予報を確かめる。

「本当に雨だ!」

「当たってる」

「これは本物かもしれない。次の質問しようぜ」

「その前に『鳥居の位置までお戻り下さい』でしわょう?」

「そうだった、そうだった。コックリさん、鳥居の位置までお戻り下さい」

言われた通り、十円玉は鳥居の所に戻る。

それから他愛のない質問が続いた。その度に十円玉は動く。

そしてある一人の男子が質問をする。

「あなたは本当にコックリさんですか?」

今までにない質問だ。

「散々聞いておいて今さら聞いてどうするんだよ?」

「そうだよ」

「面白いじゃん」

「バチが当たるかもよ」

「そんな事ないって」

皆が見守る中、十円玉はススッと動いた。

思った通り『はい』に進む。

「ほら見ろ。コックリさんなんてただの遊びなんだから本気になるなよ。いたとしてもただのそこら辺の低レベルな浮遊霊くらいだろう?」

だが十円玉はまだ動いている。

『あ』『そ』『び』『で』『は』『な』『い』

「遊びではない?えっ!?」

まだだ。

『ふ』『ざ』『け』『る』『な』『し』『よ』『う』『め『い』『を』『す』『る』『お』『ま』『え』『た』『ち』『を』

『の』『ろ』『う』

「ふざけるな、証明をする。お前達を呪う?うわぁっ!何だ、これ!?」

「おいおい、誰かの悪ふざけだろう?」

「私は何もしてないわよ!」

驚いた一人の男子が指を十円玉から離す。

「ちょっと!最後までちゃんとやらないと」

そう、おしまいには『コックリさん、コックリさん、どうぞお戻り下さい』と帰ってもらわなければいけないのだ。

「おっ、俺帰る」

指を離した男子は教室から急いで逃げる。

「ビビリだなー」

それを見た男子達が笑う。

「俺達もそろそろ帰ろうぜ。飽きたしな。コックリさん、コックリさん、どうぞお戻り下さい」

言うと十円玉は『いいえ』に止まった。

「何でだよ!?」

「もう一回やろう。コックリさん、コックリさん、どうぞお戻り下さい」

指を乗せた十円玉は『いいえ』の所をグルグルと回り始める。

「ヤバい!」

「やだっ!」

皆、一斉に十円玉から指を離す。それでも動いたままの十円玉。

「こうしてやる!」

男子の一人が紙をビリビリに破く。

「何するの!?」

「だってこうするしかないだろう?」

あれだけ動いていた十円玉は床に落ちた。

破いた紙をゴミ箱に捨てて、その日は全員すぐに家に帰った。

その翌日、逃げた男子は事故に巻き込まれ右腕を骨折。紙を破り捨てた男子は行方不明になっているらしい。他にいた生徒達も謎のケガや高熱、不登校になっている。

でもこれでおわりではなかった。

ただのよくある学校に付き物の七不思議が本当に次々と起こるようになったのだ。七不思議にあった者は皆、コックリさんを行なった生徒達のように被害にあっている。


「それで我がオカルト研究部は調査の結果『コックリさん』の事件の影響が七不思議を目覚めさせたのではないかと考えたのです!」

「ありがとう、片野君。これが七不思議の8番目です」

「…なるほど。ありがとうございました」

情報は得た。帰ろうとすると

「そういえば貴方、太刀華君って言ったわよね?」

部長が聞いてくる。

「ああ、すみませんでした。僕は一年生です。一年二組の太刀華です」

「たちばな…たちばなってもしかして『太刀華』って書きますか?」

実際に紙に書いてみる。

「ええ、そうですけど…」

「まさかあの刀の名手であり異形退治で裏の世界では有名な一族、太刀華家ですか!?本当に情報が少な過ぎて謎に包まれているというあの太刀華家!」

そんな話になっていたとは。事実には事実だがあまり知られていなくて良かった。でもこれ以上、突っ込まれたら任務に響く。そこで

「関係者というだけですよ。僕は剣をあまり扱えないので詳しい事は教えてもらっていません。修行も無理矢理やらされましたが厳し過ぎて逃げ出してきた弱い男です。ご期待に添えずすみません」

もちろんウソだ。実際は当主代理の地位にある。

「そうですか…。何か貴重な情報が聞けるかと思ったのに」

ガッカリする部長。

申し訳ないが守秘義務もあるのだ。そう簡単に情報を外部に洩らす事はできない。

「ああっ!」

突然声を上げる戸田君。

喋らなかったから存在を忘れていた。ごめんなさい。

「どうした?戸田」

片野君が聞く。

「一年二組だよ」

「何が?」

「コックリさんをやった一年生ってそのクラスだ!一年二組。俺は確かにそう聞いた」

「ええっ!?」

何と一番の情報源、調査対象が自分のいるクラスだったとは。

「色々とお話ありがとうございました!それでは失礼します」

「ちょっと…!」

挨拶をしてダッシュで教室に戻る。

「あーあ、新入部員になってくれるチャンスだと思ったのに…」

『あーあ』

今度は皆でガッカリするオカルト研究部なのであった。

教室に戻る途中「廊下は走るんじゃない」と先生に注意される。

「すみません!」

見ると三千院だった。

「三千院さ…先生!」

「どうした?そんなに急いで」

周りに人がいない事を確認してから小声で言う。

「今、オカルト研究部に行ってきたのですが」

「オカルト研究部?」

「はい。それで色々と話を聞いたのですがどうやら怪しいのは僕がいるクラスのようです」

先ほどオカルト研究部から聞いた話を伝える。

「そんな事が…。怪しいところもあるが可能性も充分ある。今夜調べてみるか」

「分かりました」


「なーんだ。もう気付かれちゃったか。いいか、他のヤツらみたいに食っちまえば」

陰から二人のやり取りを聞いている者が一人。正確には「一匹」なのだろう。そう呟いて消えた。

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