minus2. 太刀華
「当主が亡くなられた。奥方様と跡取りまで」
「これで太刀華の正当な血筋も途絶えた。上位の多智花も田知花も先の襲撃で全滅した。どうしたものか」分家が集まり話し合いをしている。「我ら立花ではアレには敵わぬだろうな」
「たちばなといえばその下の橘はどうだろうか?」
「橘には男がおらぬ。姉妹であろう。実力はあるが」私の父母が亡くなったときは「運が悪かった」というくらいで済まされたのに。ここまでとは。ならばどちらが上か見せつけてやろうではないか。
スイッチが入った。私は持っていた短刀で長くしていた髪をバサッと切る。
「花梨!?」
「お姉様!」祖母と妹が驚いている。二人だけではない。親族皆だ。
「ならば、この橘花梨。今をもって太刀華家の当主、男として生きる!」
「何を言っている!女だろう!」
「そうだ。女のお前では認められない」ガヤガヤとうるさい連中だ。
「ならばこの中に当主として私より実力があるという者はいるか?アレと真っ当に勝負しようという者は!」それまでうるさかった男達が一様に黙る。
下位の「立花」という名に甘んじて修行を怠ってきた者とは違う。私はこれまで厳しい修行に耐えてきた。だからこそ言える。
「了承ととらえた。柚月 、申し訳ないがアレが来るまでここを頼めるか? 」
「お…兄様の為ならば」
「柚月ならば巫女の修行をしっかりしているから大丈夫」
「おばあちゃん、ちょうど東京での任務の話もきている。そこで修行をしてくる」
「男など関係ない。花梨は花梨のままでいておくれ」
「ちょ…ちょっと待て!」
「何だ?」
声をかけてきたのは私より2歳年上の薫だ。
「女より力がないと言われて黙っていられるか!」強がっているだけだ。
「ならば勝負でもするか?」
「お、おう!」
武器は木刀。「それでは始め!」
「おりゃっ!」薫が攻めてきたが余計な力が入っていて、上手くいかない。私はただ流すだけだった。
「何だよ。避けるばかりか?」まるで勝ったような口振りだ。では攻めさせてもらおう。ビュンッ。薫の木刀が飛んでいった。
「勝者、花梨!」
「これで文句はないだろう?」
「…」余程悔しかったらしい。苦い顔をしている。
「他に勝負する者は?」
皆、口を開かない。
「では」そうして私は東京へと旅立つ事に。
結局、「当主代理」として太刀華を継いだ形となった。