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minus11.正体

「ん…眩しい。ここは?」

目が覚めると夜が明けていた。

見慣れない天井にねぼけていると

「起きたか?」

声のする方を向くと、近くのイスに座っている三千院さんがいた。

「おはようございます。あの私は…」

「昨日の夜、鏡の七不思議を退治した後に気を失ったようだったから保健室に運んだ」

「すみません!」

「大丈夫だ。それよりも今は一先ず撤退するぞ。そろそろ人が来るだろう」

「はい」

ガラッ。

そこにドアを開ける音がする。おそらく保健の先生だろう。

『まずい。人が来た。隠れるぞ』

そう言うと三千院さんが私が寝ているベッドに急いで入り込む。

「あら?誰かいるの?」

声と共にカーテンが開く。

「三千院先生じゃないですか。どうしたんです?」

「昨日の夜、残業していたら具合が悪くなってしまって…。それでここをお借りしました。ご迷惑でしたか?」

「あらぁ〜。そんな事ないですよぉ。三千院先生ならいくらでも使って下さい!」

声のトーンが違うぞ、岸田(きしだ)紗栄子(さえこ)32歳(独身)。

と、それどころじゃない。

私はというとバレないようにベッドの中に隠れて、三千院さんに腕を回されガッチリと密着している。こんな事など今までなかった。いくら男で通していても中身は女。意識しない事などできない。岸田先生にバレない事と、この鼓動が三千院さんに伝わらない事を祈るだけだ。

「あ、そろそろ朝礼の時間だわ。私は先に行ってますね〜」

ガラッ。パタパタ…。

「ふぅ…。行ったぞ。出てこい」

「…はい」

色々な意味でスリリングだった。でも岸田先生が速くいなくなってくれて助かった。

「おい、顔が赤いぞ!大丈夫か?」

「あ、あの…」

言えない。ドキドキしていたから顔が赤いなんて。

「強く締めすぎたか?悪い」

「だっ、大丈夫です」

「では俺も着替えたら朝礼に行く」

「分かりました」

去っていく三千院さんの背中を見つめながら考える。

これで七不思議は全て倒した。だが何だ。この違和感は?まだ何かがあるような気がする。


気になる私は放課後、再びオカルト研究部を訪れた。

「こっくりさんは、一般的に狐などの動物霊を呼び出す降霊術の一種だと考えられています。しかし、その起源は西洋の占い『テーブル・ターニング』であり、勝手に動く硬貨が心霊現象だと信じられ、恐れられたことから広まったと言われています。これはご存じですね?」

片野君はスラスラと言う。本当にこういう話が好きなんだな。

「はい…」

「遊び半分とかふざけてやった人が大体痛い目に会うからやめた方がいいのです。動物の霊は1番タチが悪いので。太刀華さんもこれ以上関わらない方が良いですよ」

「ええ…」

有力な情報は掴めなかった。どうしたものかと思いながら教室に戻ると八木が一人残っていた。

「どうだ太刀華。何か面白い情報でも掴めたか?」

「いいや、全く」

「じゃあ俺が取っておきの情報をくれてやろう。狐の妖怪に種類があるのは知っているか?上から天狐・妖狐・気狐・野狐。天狐は千歳生きた狐だけがなれる、千里眼で様々な事柄を見透かし強力な神通力を持ち、神様となった九尾の狐の事。妖狐は年を重ねていて、神通力が使える妖狐の事を言って千里を一瞬で飛ぶとされている。気狐は天狐や仙狐に至る前の修行の身である狐の事を指す。年齢でいえば五百歳〜千歳未満だな。

どこにでもいる狐が仙術を学んでいる状態で、この辺りで尾の数が変化していって妖狐化していく。ほとんどが白狐・玄狐であり、稲荷神の使いは気狐。

野狐は人間に取り憑き幻を見せたり欺いたり、病や災いをもたらす悪狐。妖狐の中では最も位が低く、人間に悪意を持って近づく妖狐を総称として野狐と呼ばれている。それがこっくりさんだな」

「やけに詳しいな」

「それはそうだ。修行をサボって周りの人間にちょっとイタズラをしただけで尾の数を減らされて野狐になった。あの天狐のジジイめ」

「まさかお前が…」

「そうさ。俺が七不思議の8番目こっくりさん、八木(やぎ)狐詠(こうた)だ。こんなに分かりやすく近くにいたのに気付かないないなんて。バカだと笑いをこらえるのが大変だったよ」

何という失態だ。でも今はそれより目の前の敵を片付けねば。

「結界『死角(しかく)』!」

まずはここから敵を逃さないように手で四角形を作り、結界を張る。この死角は他の生徒からも見えないようになっている。

「続いて『鳥居』!殺眼(あやめ)召喚」

部屋からの通路を開き、刀を呼ぶ。

「主人に仇なす者、全て排除する」

殺鬼が剣を抜く。

「やれるものならやってみろ」

狐の姿に変化する八木。

「野狐ごときが。凛様のお手を煩わすほどでもない」

「言うな。狐火!」

青白い炎が吐き出される。

交わす凛と殺眼。

「一飲みにしてくれるわ」

口を大きく開けてくる八木。

グシャッ!

「キャイン!」 

殺眼の刀が八木の両目を刺した。この刀は先で二股に分かれている特殊な刀だ。名前の通り、相手の目を貫通するほどの威力。

「今です。凛様!」

「お前に死薇はもったいない。だが呼んだ生徒も悪いからな。せめて楽に死なせてやろう苦血無死(くちなし)

ザクッ!

刀は名の通り苦しみを与えず、出血もなく死ぬ刀だ。

「狐の…恨みは、深い、ぞ…」

そう言い残して八木は死んだ。


「三千院先生辞めちゃうなんてねー。残念。狙ってたのに」

「太刀華君も転校しちゃったし目の保養がなくなったわ〜」

「それよりも!八木君が刺されて倒れてたんでしょ。しかも死んじゃってたって。自殺かな?」

「まさかいなくなった二人が犯人だったりしてー!」

そうそのまさかであるー。

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