野菜が食べやすくなればいいのに
野菜が食べやすくなればいいのに。
苦いし、色が死んでる(と思っている)やつがあるし。
点々ついてるやつもあるし。くせつよだし。
そう子供の頃に思いながら育った俺は、変革の時を目にしていた。
野菜は変化した。
急激に。
何があったのか分からないけれど、ある時を境に急激に食べやすくなった。
神が悪戯でもしたのかな。
とにかく食べるのに抵抗がなくなった。
子供達は喜んで野菜をたべて、大人達は大助かり。
大人になっても野菜が苦手のままだった人も、感動していた。
野菜の摂取量は、みるみるうちに増えて言って、多くの野菜マニアが誕生。
野菜を活用したレシピなども、多数開発されていった。
うーん。
とても素晴らしい事だけど。
こんなに、一気に変化するものなのかな。
なんか不自然な気がするんだよな。
とあるやけくそな研究者は思った。
俺は野菜が嫌いだと。
なんであんな奴等に味が付いているんだと。
だったら味なんて失くしてしまえばいいじゃないかと。
そうしてやけくそで開発された味の薄い野菜は、偶然にも偉い人達の耳にとどいて。
偶然にも偉い人達が野菜嫌いなのもあって。
なんでかそのまま、開発が進んでいって、味の薄い野菜が増産される事になった。
そんな研究者は今、味の薄い野菜をもしゃもしゃ食べながら、思索にふけっている。
俺は野菜が嫌いだ。
でも嫌いだからといって、野菜の個性を殺してしまって良かったんだろうかと。