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第40話 魔道書の謎



 俺はジェリーに合図をして背中に掛けられている聖剣ラゴーケイトを抜かせる。


「よし、俺が奴を押さえている間にその剣で斬れ!」


「おっけールカ。マロンお願い!」


 すかさずマロンが巨大な前脚でジェリーを掴み、翼を羽ばたかせて上空へと運ぶ。

 そしてルシフェルの頭上までやってきたところでジェリーを投下した。

 非力なジェリーでも上空からの自由落下エネルギーを乗せて斬りかかればルシフェルにもダメージが通るはず。


「てりゃー!」


「ぐあっ!?」


 動けないルシフェルは額に一撃を受けて一瞬よろめいた。


「わったったっ……ばしゃっ」


 ジェリーはそのまま地面に墜落してバラバラになった身体が周囲に飛び散るが液体である彼女にはダメージはない。


 たらりとルシフェルの額から青色の血が流れた。

 ルシフェルは指先でその血を拭いペロリと嘗めて言った。


「ふん、良い連携だが私に傷一つつけるのが精いっぱいだったようだな」


「傷ひとつでも入れば充分なんだよ」


「何!?」


 次の瞬間ドレインの効果が発動してルシフェルの額から生命エネルギーが漏れ出しラゴーケイトに吸い取られていく。


「魔法剣だと!? 貴様よくも……」


「おっと動くんじゃない!」


 俺はルシフェルに向けて魔力を放出し続ける。

 ルシフェルも俺の人化魔法をキャンセルすべく自身の魔力を消費して抵抗するが一瞬でも力を抜くとたちまち人間の姿になってしまうのでその場から動くことができない。


 俺の魔力とルシフェルの生命力どちらが先に尽きるかの根競べだ。


 ……いや、違うな。

 俺とルシフェルが睨み合っている間に飛び散った身体をくっつけて元の姿に戻ったジェリーがラゴーケイトを拾い上げてもう一度マロンの前脚に掴まる。


「もう一発いくよー」


 マロンは再びジェリーを上空まで運び、ルシフェルの頭上から投下する。


「ぐあああああっ」


 ジェリーの一撃は今度はルシフェルの脳天に命中した。

 傷口が二箇所に増えそれぞれから生命力が漏れ出す。


「いいぞジェリー、もう一回いけるか?」


「ちょっと待ってね」


 ジェリーは再び落下の衝撃で飛び散った身体を集めて人の姿に戻ろうとしている。


「ええい鬱陶しいぞウジ虫め、今すぐ消し飛ばしてくれるわ!」


 業を煮やしたルシフェルがジェリーを魔法で消し飛ばすべく指先に魔力を集めた。

 その瞬間ルシフェルの身体は俺の人化魔法の効果で老人の姿に変化する。


「うぐっ……しまった……」


「堪え性なさすぎだろ大魔王さんさあ……」


「くそっ、早く元の姿に戻らないと……」


 ルシフェルは再度魔族の姿に戻るべく体内に魔力を集めるが千載一遇のこの隙を見逃すマロンではない。

 間髪いれずに老人の姿となったルシフェルに向けて灼熱のブレスを放った。


「うぎゃああああああああ!!!!」


 もくもくと上がる黒煙の中から大魔王の断末魔の悲鳴が響き渡った。


 やがて煙が晴れると後に残ったのは火の加減を誤ったトーストのように真っ黒に焼け焦げた大魔王だった者の成れの果てだった。


「生きてるのかこれ?」


 俺は木の枝でつんつんとつついてみる。


「う……や……めろウジ虫ども……」


「すごい、まだ生きてる」


 さすがは大魔王だ。

 台所に出てくるコードネームGに匹敵する程の生命力を持っている。


 このままもう一度マロンの灼熱のブレスで完全に消し炭にするか、もしくはジェリーの養分になるかどっちがいいかな。


「くそっ……またしても人間如きにやられるとは……無念だ……」


 最早ルシフェルは息も絶え絶えに悪態をつくことしかできない。

 こうしている間にもラゴーケイトのドレインの効果でルシフェルの生命力は徐々に奪われていく。

 既に勝敗は決した。

 このまま何もしなくてもルシフェルは力尽きるだろう。

 憐れだとは思うがルシフェルの命を助けるつもりはない。

 彼のせいで国王陛下を含めて多くの人間が犠牲になったんだ。

 その罪は自らの命で償って貰わなければならない。

 俺はマロンに人化魔法を掛けて人の姿に戻し共にルシフェルが永遠の眠りにつく様子を眺める。


「──だから人間への復讐なんて考えなければよかったんだよルシフェル」


「ん?」


 どこからともなくかすかに声が聞こえた。

 少女のような声。


「今何か言ったか?」


「ううん、何も言ってないよ」


「どうしたのルカ?」


 ジェリーとマロンは首を横に振って否定する。

 勿論ルシフェルの声とも違う。

 聞き間違いではない。

 確かに誰かの声が聞こえた。


「この中から聞こえてきた気がする」


 鞄の中に手を入れて探るとその中から一冊の魔道書が出てきた。

 それは人化魔法の魔道書だった。


「そうだ、あの時聞こえてきた声と同じだ」


 俺がこの人化の魔道書と契約を交わした時に聞こえてきた声。

 てっきり呪いによる幻聴か何かだと思っていたが……。


「……」


 俺は無言で魔道書をじっと見つめる。


「どうしたのルカ?」


「いや、もしかすると……俺の考えが正しければ……」


 俺は人化の魔道書に向けて杖をかざして魔力を放った。

 杖の先から閃光が走り何も見えなくなる。



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