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第36話 聖堂騎士団


「ルカさん、聖堂騎士団が現れました!」


「ついに来たか。みんな配置につけ!」


 砦で物見役を担っていたマシューさんからの一報で魔の森の中が慌ただしくなる。

 聖堂騎士団の数は約千人。

 いずれも今まで多くの魔物と戦い葬ってきた歴戦の騎士たちだ。

 その中央には戦場には不釣り合いな程豪華な馬車に乗っている透き通るような白く薄い生地を身に纏ったセインの姿があった。

 聖女セイン自らがご出陣とは、この一戦で確実に俺たちを潰す気だろう。

 俺たちは森の木々に身を隠しながら決戦の時を待つ。


 聖堂騎士団は森の入り口の前で足を進軍を止めるとセインが馬車を降り騎士たちの前に出てきて彼らを鼓舞する。


「皆の者聞きなさい。これより王国の善良なる臣民の為にこの魔の森に巣食う邪悪な魔物たちを一匹残らず駆逐します! これは聖戦であります! 心してかかりなさい」


「おう!」

「我らが聖女セインティアラ様の名の下に!」


 聖堂騎士団は雄たけびを上げて魔の森の中に侵入する。

 俺たちは作戦通りまずは先鋒のケンタウロスたちが離れた位置から矢を放ち、直ぐに森の奥へと後退する。

 聖堂騎士団がケンタウロスを追いかけてきたところで左右に伏せていたオーガとミノタウロスたちが挟撃する。

 通常の軍隊ならこれだけで浮足立つところだがそれでも聖堂騎士団は億することなく持ち堪えている。


「意外と手強いな。一旦退くぞ」


 俺はケンタウロスたちに牽制をさせながらオーガとミノタウロスたちを森の奥に後退させる。

 聖堂騎士団は無理な追撃はせずに落ちついた様子でその場で陣形を整えている。

 よく統率がとれている証拠だ。


「セイン様、この深い森の中では我々は満足に動けません。何か良い手はないでしょうか」


「この森の木々は魔の瘴気に包まれていますね。女神様の奇跡で浄化しましょう」


 セインは両手を組んで跪き祈りの姿勢を取る。

 すると周囲の木々がみるみる枯れ果てていきやがて塵となって消えていった。


 近くの木々に隠れていた魔物たちはその姿を晒されてまだ木々が枯れずに残っている森の奥に向かって逃げていく。


「さすがは聖女セイン様だ。これで魔物達の奇襲も怖くない」


 セインが起こした奇跡を目の当たりにした聖堂騎士団は大いに士気を奮い立たせて森の奥へと進んでいく。


 一方で魔の森の魔物たちは聖女セインの力を見て恐れおののく。


「魔王様見ましたか? ヤバいですよあの力……」

「あれが破邪の力ってやつでしょうか? あんなものにどうやって立ち向かえば……」


 しかし俺はその時既に違うことを考えていた。


「破邪の力だって? いや違うな、あれはむしろ……」


 魔物と違って森の木々はただの植物だ。

 破邪の魔法で樹木が枯れ落ちる道理が無い。

 だとしたらあれは恐らく植物を枯らす枯死魔法だ。

 かつて邪悪な魔法使いがこの魔法で王国の森林を破壊して生き物が住めない環境にしようと企んだことがある為に現在バンビーナ王国では禁忌の魔法に指定されている。

 聖堂騎士団は聖女であるセインが女神の奇跡で邪悪な森の木々を浄化したものだと信じきっている。

 物は言い様だな。


 その後はハーピィたちに上空からの投石攻撃をさせたり魚型の魔物に川からの奇襲をかけさせたりしたが大した被害も与えられないまま聖堂騎士団の進軍を許してしまった。

 やはり一筋縄ではいかない相手だ。


 俺は再度森の奥へ後退して仕切り直す。


 セインが歩いた後には枯死魔法によって草木が死に絶え荒廃した地面が残るのみ。

 芳しくない戦況を見兼ねてマリシア王女が言う。


「ルカ様、私が彼らの前に出ていけば争いは止まるのではないでしょうか」


「いえ、セインの本当の狙いは王女の命です。聖堂騎士団の前に出ていったとしてもきっと自分たちを欺く為に俺が用意した偽物としてセインに殺されるだけでしょう。王女は森の奥で身を隠していて下さい」


「さあマリシア王女、ルカさんたちの言う通り我々と安全なところへ行きましょう」


 俺はマリシア王女をマシューさんたちに任せて再び前線へと向かった。


 セインは聖堂騎士団に守られながら少しずつ森の木々を枯らせて森の奥へ進んでいく。

 このままでは魔の森全域が死の大地となってしまう。


「ジェリー、いけるか?」


「いつでもいいよ!」


「よし、ここで決着をつけるぞ」


 俺は木々に隠れながらジェリーの人化を解いた

 人化率二十五パーセント。

 辺り一帯は巨大なぬかるみができあがる。


「ん? こなんだこの液体は? 気をつけろ、敵の魔法かも知れん」


 聖堂騎士団は突然現れたぬかるみに足を取られて動きが遅くなる。


「今だマロン、足元のジェリーは燃やすなよ!」


「うん、任せて!」


 人化を解かれたマロンは聖堂騎士団の目の前で突如として巨大な漆黒の龍の姿に戻る。


「あれは、漆黒龍だ!」

「ぜ、全員退却!」


 マロンは間髪いれずに聖堂騎士団に向けて大口を開けて灼熱のブレスを放つ。

 完璧なタイミングだった。

 今更回避が間に合うはずもない。


 しかし次の瞬間マロンの目の前に薄っすらと淡い光を放つ半透明な壁が現れていた。

 マロンの灼熱のブレスはその壁に遮られて聖堂騎士団まで届いていない。


「結界魔法……だと!?」


 聖堂騎士団の皆は結界を聖女の力だと考えているようだがそれは違う。

 かつて王国の勇者に討たれた魔族の王は自らの身体を包む結界を張って攻撃を跳ね返し勇者を苦しめたという。

 およそ人間が使いこなせる魔法ではない。


「舐められたものですね。この足元のぬかるみもルカさん、あなたの仕業なのでしょう? 皆さん、足元にいるのはスライムの一種です。落ちついて対処しなさい」


「スライム? そうか!」


 セインの指示で聖堂騎士団達は足元のぬかるみに手にしたメイスを向け魔力を放つ。


「危ない、破邪魔法だ!」


 俺はすかさず彼らの前に飛び出してジェリーに人化魔法を掛ける。

 聖堂騎士団の足元のぬかるみは一瞬で固い地面に戻りジェリーは人の姿になる。


「わっわっ……」


 間一髪破邪の力で塵にされるところだったジェリーは慌てふためきながら逃げ戻ってきた。


「こそこそとネズミのように鬱陶しいですね。次はそこのあなたです」


 聖堂騎士団は続けてマロンに向けてメイスをかざした。


「マロン、お前も下がれ!」


 いくら漆黒龍といえども破邪の力をまともに受ければ大きなダメージを受ける。

 俺は咄嗟にマロンを人の姿に戻す。


「あらあら、悪あがきはこれでお仕舞いかしら魔物を操っている元凶さん?」


 セインは薄ら笑いを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。

 その両側には聖堂騎士団が彼女を守るように歩幅を合わせる。


「魔王様が狙われているぞ! オレたちも加勢するんだ!」


 後ろの木々に隠れいてたトーレンたちが一斉に飛び出してきて俺の盾になるべく聖堂騎士団と対峙する。



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