表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/42

第33話 仮説


「あ、このひと……」


 町の入り口に停めてあった馬車で待機しているマロンが俺と一緒にやってきたゴンザレスの存在に気付いて身構える。

 俺はマロンが以前ゴンザレス盗賊団に集団で暴行を受けそうになったことを思い出した。

 あの時は結果的にゴンザレスが返り討ちに遭って事なきを得たが良い気はしないだろう。

 そんなマロンを見たゴンザレスはぺこりと頭を下げて申し訳なさそうに言った。


「お嬢さんその節はご迷惑をおかけしやした……」


「ん? どういうこと?」


「ああ俺が説明しよう──」


 俺はゴンザレスが過去のことを反省し心を入れ替えたことを説明するとマロンは漸く警戒を解く。


「そう……ルカがそういうのならもう良いよ」


「ありがとうごぜえやす。マロンの姐さんは心が広い。……それでこいつらをどうするんで?」


 ゴンザレスは地面に下ろしたダスターたちを指差して言う。


「こいつらには色々と知っていることを吐いて貰わないといけないけど簡単に口を割ってくれるだろうか」


「そういうことでしたら俺に任せて下さい。荒っぽいことが大好きな子分が何人もいるんで」


「ははは、お手柔らかに……といいたいところだけどこっちも手心を加えてる余裕はない。宜しく頼むよ」


「へい!」


「それから……ちょっと場所を移動した方がいいな」


 さっきから道行く人がたちがこちらを怪訝そうに眺めている。

 魔法卿から借り受けたこの豪華な馬車は目立ちすぎる。

 どこに密偵が紛れ込んでいるかも分からないこの状況では早く人目のつかないところへ移動するべきだろう。

 丁度ドリットの町の北には以前ミノタウロスたちが築いた砦がある。

 俺はゴンザレスにそこで合流するよう告げて砦へと向かった。




◇◇◇◇




 砦に着いた俺たちは意外な人物と再会した。


「ルカさん、お久しぶりです」


「マシューさん、それに皆さんもこんな所にいたんですか」


 ダスターたちに町を追われたマシューさんたちはこの砦に落ち延びて町を取り戻す機会を伺っていたそうだ。

 しばしば町の人たちが差し入れを持ってきてくれるので食料や日用品については困ることはなかったという。


 町の人たちの生活を守る為に日々真面目に働いてきた彼らの人望がなせる業だろう。


 お互いに把握していることを確認し合った後でダスターたちを木に縛り付ける。

 しばらくするとゴンザレスがかつての手下たちを連れてやってきた。


「お待たせしやした。いつでも始められますぜ」


 ゴンザレスたちが手にしている()()を見て俺は身震いをしてしまった。


「くそっ、さっさと放しやがれ。俺たちにこんなことをしてただで済むと思うな!」

「ねえルカ、知ってることを全部話すから……だから酷いことは止めて!」

「ルカさん、こんなことをしなくても魔法で自白させれば良いじゃないですか……」


「いや、俺今人化以外の魔法使えないし残念だけどその希望には応えられないな」


 三者三様で必死に命乞いをするがこっちもマリシア王女を保護している身。

 命までは取らないが全部吐くまで徹底的にやらせて貰うよ。


「さあマリシア王女、後のことはゴンザレスたちに任せて向こうで休みましょう」


「はいルカ様」


 これから起きることを幼いマリシア王女に見せるのは酷だ。

 俺はマリシア王女を馬車に連れ戻してケイトに預ける。




◇◇◇◇




 ダスターたちから聖女セインにまつわる多くの情報が手に入った。


 陛下が亡くなられた後、聖女セインを要するズクニュー伯爵は治安維持の名目で教会の信徒たちに王都を掌握させる。

 当然異を唱える貴族たちも多かったが何故かセインが直接説得をすると皆大人しく従うようになったという。


「ゾンビウイルスを使ったのか……」


 反対する貴族をゾンビウイルスに感染させれば自由に操ることができるようになる。

 周りにはセインの説得によって丸めこまれたようにしか見えないだろう。

 そういえばセインは以前ウィールス子爵の屋敷から俺に魔道書を取ってくるように仕向けたことがある。

 あれは確か他人を意のままに操ることができる魔法だと魔法卿は言っていた。

 ゾンビウイルスと異なるのは魔法に掛けられても対象が化け物(ゾンビ)には変化しないことだ。

 だから後々にもその相手を操り続けて()()()することを考えれば俺がウィールス子爵の屋敷から回収してきた魔法を使った方がいい。


「そうか、あの魔道書が手に入らなかったから仕方なくゾンビウイルスで代用していたのか」


 これはズクニュー伯爵にとっても誤算であったに違いない。

 全てが彼らの思惑通りに進んでいるわけではないということだ


 つまりどこかにまだ付け入る隙があるはず。


 もしあの魔道書がセインの手に渡っていたらと思うと寒気を感じる。

 それにしてもいち伯爵家の人間が陛下を暗殺して王国を乗っ取るだなんて大それたことをよく決行したものだ。

 しかも既に多くの犠牲を出している。

 これでは正しく悪魔の所業だと言わざるを得ない。


「悪魔……まてよ?」


 その時俺はひとつの仮説に辿り着いた。

 魔法とは元々魔族が生み出した法術である。

 そして俺の人化魔法は元々魔族が人に化けて人心を惑わし世を乱す為に作られた魔法だ。


「……あいつら本当に人間か……?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おや?もしかして人間じゃないパターン……? それはそれとしてダスターはこれからどうします?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ