表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/42

第25話 湖の主


 魔法卿の屋敷を後にした俺は次の依頼を探す為に冒険者ギルドに立ち寄った。


「何を騒いでいるんだあいつら?」


 見れば多くの名の知れた冒険者たちが集まり騒いでいる。

 何事かと思って眺めていると俺に気付いたメイアさんが声を掛けてきた。


「ルカさんいところに来てくれました。実は今リバイアサンの討伐のメンバーを募っているところなんです」


「リバイアサンってあの?」


 王都マルゲリタの南に広がるミーカン湖に潜むという伝説の化け魚リバイアサン。

 普段は湖の底で眠り続けているがひとたび暴れれば湖は氾濫し周囲の広域を一瞬で水に沈めてしまうといわれている。


 近頃ミーカン湖の付近で小規模な地震が相次いでおり、これはリバイアサンが活動を再開する前兆だとメイアさんは説明する。


 王国史の記録によると今から百年ほど前にリバイアサンが引き起こした湖の氾濫によって付近にあった多くの町が壊滅している。

 そのリバイアサンが目を覚ましたとなれば甚大な被害が予想される。

 これは大事件だ。

 ギルド内が騒がしくなるのも頷ける。


「分かりました俺たちも協力します」


 俺は二つ返事で討伐隊への参加を表明する。


 魔物の討伐は俺たち冒険者の領分だ。

 王国の軍隊では対応できない。

 直ちにギルドの精鋭五十名によるリバイアサン討伐隊が組織されミーカン湖へと向かった。




◇◇◇◇




 ゴゴゴゴ……。


 ミーカン湖に辿り着いた直後からまるでリバイアサンを討伐に来た俺たちに警告を発するように大地が震えた。

 もう時間がない。

 早速近くの漁村から借りられるだけ船を借りて湖の中へと進む。

 編隊を組んで湖上を進む様はちょっとした提督の気分だ。


「ルカさんお願いしますよ。リバイアサンなんて化け物ルカさんの人化魔法でなきゃどうにもならないですから」

「湖の魔物は俺たちが露払いをしますから」


 ギルドの精鋭といっても伝説級の化け物を相手にするにはさすがに荷が重い。

 必然的に俺の人化魔法に期待が集中する。


 しかしリバイアサンを人化するには魔法が届く範囲まで近付く必要がある。

 普段湖の底に生息しているリバイアサンに船の上から人化魔法を掛ける事は不可能に近いだろう。


「やれやれ、水泳は得意ではないんだがな……」


 俺は湖に潜る為に水着に着替えて準備体操をする。

 魔法が使えない今の俺では魔法使いの服装のままでは満足に泳ぐこともできないからだ。

 普段の格好が水着に近いジェリーはともかく、今回はマロンも水中で戦う為に新調した水着に着替えている。

 漆黒の鱗をモチーフにした幾何学模様が描かれた黒のビキニが何とも可愛らしいが、俺たちはバカンスに来たわけではない。

 準備体操が終わるとすぐさま臨戦態勢に入った。


 俺たちを乗せた船が湖の中ほどまで進んだところで水面が渦を巻き、その中から夥しい数の魔物たちが姿を現す。


「来るぞ!」


 瞬く間に乱戦が始まった。

 湖の中から次々と船に這い上がってくるワニや両生類型の魔物を冒険者たちが連携して迎撃する。


「上から来るぞ!」


 続けて空からは鳥型の魔物が襲い掛かってくると弓の腕に覚えがある者が射落とし、電撃魔法を得意とする魔法使いが上空に雷を呼んで撃墜する。


「今です、ルカさん行って下さい」


「分かった」


 冒険者たちが魔物を押さえている隙に俺はマロンを連れて湖の中に飛び込んだ。

 湖の中は案の定魚型の魔物たちで犇めいていた。

 間髪入れずに俺に襲い掛かってくる魔物たちをマロンが魔法で返り討ちにするがキリがない。

 水中ではマロンの灼熱のブレスは役に立たない。

 他の冒険者たちも援護をしてくれるがやはり水中では陸上とは勝手が違うので満足に戦えない。


 いっそのこと皆まとめて人化魔法で人間にしてしまえとも考えたがすぐに思い直した。

 ちょっと数が多すぎる。

 ザコ相手に魔力を使い過ぎてリバイアサンに人化魔法を使うだけの魔力が残っていなかったら本末転倒だ。


「こりゃ駄目だ、出直そう」


 これ以上は息が続かない。

 俺は一旦船に戻り策を練ることにした。


 船の上ではまだ魔物との戦いが続いていた。

 水中と違って船上では冒険者たちの方が優勢だ。


 しかしその戦いの最中ジェリーが船の端で口を押えて蹲っているのが見えた。


「どうしたジェリー。やられたのか?」


「気持ちが悪い……」


「魔物に毒でも喰らったのか? 大丈夫だ、毒消し薬がある」


 俺はジェリーを仰向けに寝かせて傷口を探した。

 しかしジェリーの身体にはどこにも傷を受けた様子はない。


 こうしている間にも船上では激しい戦いが繰り広げられている。

 次の瞬間冒険者のひとりが放った爆裂魔法によって船が激しく揺れ、ジェリーは顔が真っ青になった。


「うぷ、もう限界……」


「ジェリーもしかして……船に酔った?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ