~第二の錦織圭たちに贈る言葉(40)~『試合中に闘う相手は自分ではない、練習中に自分と闘え』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(40)〜
『試合中に闘う相手は自分ではない、練習中に自分と闘え』
1. まえがき;
2023年のウィンブルドン全英オープンでの西岡選手の一回戦をTVで観た。
4−6、3−6、3−6、のストレートで敗れた。
西岡選手は相手選手の強いストローク打球が滑って来るのに対応できない自分に苛立って、第一セット、第二セット中はどのように対応したら良いのかが判らないため、自分との闘いに終始していた。観客席に居るコーチに向かって「どうすればよいのか?」と聞く仕種が何回も有ったが、コーチは「頭を使え」と云った仕種(人差し指で頭をつつく動作)をするばかりで、打球方法を教えることが出来ないようであった。
結局、相手選手と闘っていない西岡選手は、相手選手の弱点をつく「走らせてストロークをさせるとミスをする」を発見できないまま第三セットも取られてしまった。
ウィンブルドンの芝草コートは、フラットショットの打球は低く滑ってくるのは試合前から判っていることなのに、対策練習がされないまま試合に臨んだ為の敗戦である。
即ち、試合前の練習中に自分との闘いを行なわず、低く滑ってくる打球に対応する技術を身に着けられないまま試合に臨んだのである。
芝コートでの低く滑ってくる球に対応するストローク技術の仕方をここでは述べることにする。
2. 贈る言葉;
サーフェースの速いコートでストロークする時、膝をかがめ、シャガム様にしてストローク返球する女子選手の姿を見た事はないだろうか。
膝をかがめて打球する時、眼球の網膜にボールはどのように映っているのだろうか?
目の高さと真直ぐ飛んでくるボールの高さが同じなら、ボールは網膜のほぼ一点で徐々に大きくなって映る。
膝を伸ばしたまま上から、低く飛んで近づいて来るボールを見ていると、網膜上のボール映像は少しづつ上にあがる(凸レンズの原理)。頭脳は、ボールが下がって行く様に感じる。この為、インパクトポイントの判断に間違いが生じやすい。
しかし、網膜上でボール移動がない場合はインパクトポイントの精度があがる。
網膜から来る映像信号を受け取った海馬(司令塔的頭脳)はラケットを振りだすタイミングとインパクトする瞬間の正しい指示を小脳に命令する(電気信号を送る)ことが出来るのである。
西岡選手は、あまり膝を曲げずにストロークを繰り返すことが多かったため、ミスが目立った。と云うよりも、『早くボールが近づいて来た為に、膝を曲げる準備時間が取れず、インパクト精度が悪かった』、と云ったところかも知れない。
しっかりと膝を曲げ、スクエアスタンスで打球する技術を練修して身に着けていれば勝利はあったかも知れない。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2023年7月6日
追記;技術習得練習について
ダニエル太郎選手も一回戦で敗れた。
4-6、3-6、6-3、6-4、3-6のフルセットの末の惜敗である。
TV放送は3時10分に終了したので、私は第3セットの初めころまでしか
見ていないが、ダニエル選手は冷静に、自分の持てる力をフルに発揮して
いて、素晴らしい戦いぶりであった。
ただ、ロビング技術が稚拙であったために、第一・第二セットを相手に
取られたのが悔やまれる。
ドロップショットが多用される試合において、ネットに引きずり出される
場合が多い。
この時の返球はネット際のクロス返球が主となり、相手もネットに出て
来て返球する。相手のこの返球はロブで頭越しにベースライン近くに落と
されることが多い。
ダニエル選手も、大切なポイントでこのロブに対する返球ロブに失敗して
いた。
ロブの修得練習をする選手は少ない。攻撃的ロブの技術を持っていると、
対戦相手にネットプレーをさせない効果がある。
攻撃的ロブとは、相手のラケットがボールに触れない程度の低い弾道の
やや速い打球のことである。
ロブの修得練習は、次の二つをじっくり行うことである。
① 相手の種々なロブを想定した素振り練習をして体幹を身に着ける。
(膝を曲げ、腰の力を利用してロブを上げる感覚を覚える)
② ボールを使った種々な攻撃的ロブの返球練習で、手に残る感触を
覚える。
※当然、ボールの落下地点はベースライン付近であること。
以上、自分との闘いをしながらロビング技術を習得してください。
2023年7月7日 追記
参考文献;
ニュートン別冊 脳と心 ニュートンプレス社 2010年11月発行
ニュートン別冊 脳とニューロン ニュートンプレス社 2016年9月発行