運命の女神はサイコロしか振らない
なろうラジオ大賞3 参加作品
使用ワード「サイコロ」
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「女神様、この者の魂はどうしますか?」
「え? そんなもの、サイコロ振って決めなさいよ」
「またですか女神様? 運命を司る女神なのに、最近いい加減じゃないですか?」
「うるさいわね、天使のくせに。私がどれだけ大変か分かってるでしょ。毎日毎日、何人も、運命だの宿命だの、生まれ変わり、転生と」
「それはそうですけど……」
「人間だけでどれだけの数になると思ってるの? それに加えてモンスターや魔族、神族。それに異世界の人間まで加えると、とんでもない数よ」
「はぁ……」
「それを私一人で決めろって? 無理に決まってるでしょ!」
「大変だとは思いますが、そこは……」
「じゃあ、サイコロ振るから。1が出たら、その魂はやり直し。6ならスライム転生ね」
「……はい」
そうやって毎日毎日、女神はサイコロを振った。
「2だから、こいつは異世界転生。職業? 3だから村人。レベル? 3と5だから8」
「次はこの者です」
「……4だから、消滅」
「あの……もう少し考えて……」
「早く次!」
そしてある日のこと……
「運命の女神、覚悟してもらおう!」
「な、なに!? 突然!」
女神の前に勇者が現れた。
「お前は多くの人々の限りある命を、運命という名でもてあそんできた!」
「え? なんのこと?」
「お前のせいで、どれだけの人々が苦しめられ、涙を流してきたことか!」
「ちょっと、私は女神よ。魔王か何かと勘違いしてるんじゃ……」
「ここでお前の運命を断つ!」
「待って! 天使、天使はどこ!? ど、どうしよう、サイコロで決めないと……」
「死ね――!!」
「イヤァ―――――!!」
「あれ? 私は……」
「女神さ……いや、元女神」
「て、天使!?」
「あなたは死にました」
「え? うそでしょ……」
「さあ、あなたの魂の行く先を決めます」
「え? ちょっと待って」
天使の手にはサイコロが。
「1が出たらやり直し。2なら異世界転生。……6ならスライム転生」
「待って天使! ごめんなさい、もうしないから! 真面目に働きますから! だから……お願い、もう一度だけ……」
「はっ、ここは!?」
女神が目覚めるとそこはベットの上。
目の前には天使が。
「女神様、おはようございます」
「て、天使?」
「どうかしましたか?」
「そうだサイコロは? サイコロはどこ?」
「サイコロ……ってなんです? ああ、異世界で言うダイスのことですね」
「異世界に行って、取ってきましょうか?」
「いや、いいわ」
その後、運命の女神は、二度とサイコロを振ることはなかった。