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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第二章 ガイノイドが管理する街々

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083 仮想環境

 無理矢理入り込んだ迷宮遺跡。

 これまで攻略してきた場所では機獣が襲いかかってくるのが普通だったが、今のところその気配はなかった。ただ……。


「迷宮遺跡の中の方が砂漠してるデスね」


 迷宮遺跡に入って意気揚々と多弁になったオネットが告げた通り、屋内の地下空間であるはずが視界の中はイメージ通りの砂の砂漠と化していた。

 カンカン照りの太陽が眩しい。

 熱で世界が揺らめいている。


「暑苦しいな。見た目が」


 温度計の表示は摂氏五十五度を超えている

 もし肌を晒していたら間違いなく火傷するだろう。

 勿論、この程度ならば先史兵装(PTアーマメント)【エクソスケルトン】の耐火性能と温度調節機能のおかげで身体的には全く問題ない。

 だが、さすがに視覚的に嫌気が差してしまう。


「足元の砂以外は偽物……映像だけどね」

「砂にしても十数メートル先からは実体がありません。部屋の中ですので」


 ドリィの言葉に【エコーロケイト】の力で判別して補足を入れるアテラ。

 部屋として見ると広いが、目に映っている風景程には広くない。


「おかー様、出口はどこでしょう」

「……反響定位だけでは分かりませんね。ドリィ」

「はいはい。軽く傷をつければいいんでしょ?」


 アテラに呼ばれた彼女は、即座に意図を読み取ってレーザーを周囲に放った。

 この部屋は床以外、ほぼ全ての壁がモニターになっているようだった。

 迷宮遺跡の入口から降りてきて部屋に入った瞬間、この光景だった訳だが……。

 驚きと共に振り返り、階段へと続く小綺麗な廊下が砂漠と青い空の地平線に被さるように存在している様を見て、即座に映像だと理解した。

 故に、壁を破壊していけば出口が見つかるはず。

 それをなすための光線が到達した壁面から、一定範囲の光景が失われていく。


「あそこですね」


 やがて【エコーロケイト】に怪しい反応が返ってきたのか、アテラは一方向を指差しながら言った。

 その方向に全員揃って向かうと、既に壁のモニターは再生していた。

 しかし――。


「よくよく見ると、薄ら繋ぎ目があるわね」


【エクソスケルトン】で補正された視覚やガイノイドのアイセンサーでようやくといったところだったが、微かに映像が分断されている部分があった。

 それも扉状に四角く切り取った形で。


「さっさと進みましょう」


 迷宮遺跡の入口と同じく抉じ開け、速やかに次のフロアへ。

 そうして通路を進む間に、見る見る内に室内温度が下がっていく。


「今度は極寒の環境か……」


 部屋に入る前に既に視界に入っていたが、砂漠の次は猛吹雪の氷原だった。

 ブリザード吹き荒れる南極がこんな感じだろうか。

 温度表示は摂氏マイナス百度。先程の砂漠と温度差が百五十度以上だ。

 環境変化が厳し過ぎる。

 それでも【エクソスケルトン】や比較的新しいフィアやドリィは特に問題なく耐えることができていたが、アテラの最低使用温度を大幅に下回っており――。


「すみません、旦那様。身動きが取りにくく……」


 駆動部がうまく働かなくなったらしく、氷の大地に倒れ込んでしまった。

 このままでは機能停止してしまいかねない。

 だが、砂漠の段階である程度想定はしていた。


「常時復元しながら歩いていこう」


 マグはそんなアテラの体を支えて立ち上がらせると、自身の超越現象(PBP)を用いて彼女を常温の状態に戻した。


「ありがとうございます、旦那様。助かりました」


 再び動くことができるようになったアテラにホッと胸を撫で下ろす。

 それから彼女の【エコーロケイト】で次の出入口を探し、マグ達は極寒地帯を通り抜けて新たなフロアに至った。

 今度は湿度百パーセントの湿原。濃い霧で視界が遮られた空間。

 ぬかるみに足を取られて難儀したが、反響定位のおかげで簡単に突破できた。

 その次は過去類を見ないような暴風雨。

 元々は鉄砲水や崖崩れ対策のシミュレートでも行っていたのか、それらを再現したような現象に絶え間なく襲われたが、こちらは主にフィアのシールドで防いだ。

 風はアテラの【フロートバルク】とスカートの装甲で防壁を作って対処した。


「何なのよ、ここ」

「環境シミュレーターみたいです」


 うんざりしたようなドリィの言葉にフィアが答える。

 ドリィもそれは分かっているだろう。

 単純に不満を吐き出しただけだ。

 ともあれ、愚痴を言っていても始まらない。

 更に幾度か特殊環境を潜り抜けていく。


「…………ああ、そういうことデスか」

「だから、彼女はあんなことを呟いていた訳ですね」


 やがて納得したようにオネットとアテラが呟いた。

 その意図を二人に問う前に。


「どうやら、ここが最奥みたいですね」


 これまでの環境とは打って変わり、空調の利いた比較的狭い部屋に至った。

 そこは制御室のように無数のモニターが四方の壁にかけられ、これまで通過してきた各部屋の様子が映し出されていた。

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