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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第一章 未来異星世界

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049 三人寄れば

「旦那様、どういたしましょう」


 高周波音だけが響き渡る空間の中。硬い口調でアテラが問いかけてくる。

 フィアはシールドの展開に集中しており、余裕がなさそうだ。

 体内の冷却装置に加え、全力稼働によって軋みを上げている胸のジェネレーターもマグの超越現象(PBP)によって強制的に新品同然の状態を維持してはいる。

 だが、敵ガイノイドの攻撃は依然としてやまず、状況に変化はない。


「耐久し続ければ、いつかはって考えるのは楽観が過ぎるよな」


 軍用かつフィア以降の世代の機体と推測されるだけに継戦能力に優れ、また、このルクス迷宮遺跡から何らかのバックアップを受けている可能性も高い。

 直接的、物理的に機能停止に追い込むまで終わることはないと思った方がいい。

 ならば、どうするのか。

 名案が浮かばず、マグは眉間にしわを寄せて考え込んだ。


「せめて、あのレーザーの幕さえなければ、私が突っ込んでいけるのですが」


 隣ではアテラもまた口惜しげに呟く。

 幕と表現はしているが、よくよく観察すると実態は隙間が視認できない格子状。

 射出口は上下左右の壁面に、交互に並んでいる。

 それを破壊して隙間を作ろうにも最低三ヶ所は撃ち抜かねばならない。

 迷宮遺跡が自動修復してしまうことを考えると、ほぼ間髪容れずに。

 しかし、フィアに対して既に超越現象(PBP)を使用してしまっているため、遠距離武器である【アイテールスラッグ】にまでは適用できず連射不可能な状態だ。

 シールド頼みの強行突破も考えたが、一歩動くだけで射出口の配置が変化する。

 敵ガイノイドも距離を保つように動き、互いの位置関係は変わらない。

 管理コンピューターは持久戦を選んだようだ。

 こうなると撤退も意識するが、最深部の入口はいつの間にか閉ざされている。

 八方塞がりな状況に思え、自然と視線が下がり……。


「おとー、様!」


 声を振り絞るようにフィアの呼びかけに、マグはハッとして顔を上げた。


「フィアに、もっと頑張らせて下さい!」

「え? いや、それは――」

「できるのですか?」

「はい! フィアは、おとー様とおかー様を、絶対に守ります!」


 何か無茶をするつもりかと一瞬躊躇ったマグとは対照的に。

 アテラは即座に確認するように問いかけ、フィアはそれに迷いなく答える。

 出会って一日も経っていないが、似た者母娘としか言いようがない。


「リミッター解除! シールド範囲拡大!」


 マグが口を挟むより早く、フィアが力の限り宣言した直後。

 光の膜が一層の輝きを放ち、急激に風船のように膨らんでいく。

 同時にジェネレーターから明らかな異音が放たれ、火花が撒き散らされる。

 破損上等の荒業だ。


「う、ううううっ!!」


 耐えるように、苦痛に塗れた声を上げるフィア。

 マグの超越現象(PBP)のおかげで絶え間なく元の状態に戻ってはいる。

 とは言え、破壊と再生の繰り返し。

 本来なら数秒と耐えられないだろう異常を常時受け続けているようなもの。

 まるで拷問だ。自分の娘としてある彼女の苦しむ姿は見るに堪えない。

 この状態を長引かせる訳にはいかない。

 心に逡巡は残っていたが、ここに至っては早く終わらせることがフィアのためだ。

 マグはそう己に言い聞かせると。


「アテラ!」


 修復を維持しながら、合図するように声を張り上げた。


「はい! 旦那様!」

「おかー様!! あっちのジェネレーターも、胸部のはずです!!」

「分かりました。行きます!」


 その言葉と同時にアテラが姿を消す。

 シールドの拡大は射出口の移動速度を上回ってレーザーの幕を一気に押しのけていき、マグ達に攻撃を集中させていたガイノイドの姿が顕になる。

 彼女が移動できる空間はもはや僅かもない。袋の鼠だ。

 ツインテールの先端二門、背中の帯と展開したスカートで二十門以上。

 急激な状況の変化に、咄嗟の判断に迷ったように僅かに照準が揺らぐ。

【アクセラレーター】を前に、その刹那は命取りだ。


「終わりです」


 そして次の瞬間、マグ達の傍にアテラが再び現れる。

 遅れて、相対する機械人形の胸の辺りが横一文字に断ち切られ……。

 放たれていたレーザーが明滅し出し、やがて胸部から体が二つに分かたれて倒れ込んだのと同時に彼女は全ての機能を停止させた。

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