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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第一章 未来異星世界

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010 簡易適性試験と再構成

 機械仕かけの狼達による急襲。そして男に迫った命の危機を、アテラがその身を盾にすることによって何とか切り抜けた戦闘。

 その全てが男達の能力を確認するために仕組まれたものだった。

 門番の口から語られたその説明を受けて。


「――そんなことのために、私の愛する旦那様を危険に晒したというのですか?」


 アテラが問いながら、ディスプレイを赤一色に染め上げて怒りを表す。

 意図的に輝度を上げているようで少し眩しく、感情の程度がよく分かる。

 そうした非人間的な外見の変化や固く握った拳が軋む金属音などは彼女が機械であることを思い出させるが、それらとは裏腹に言動自体は実に人間的だ。

 主人を想う純粋な気持ちがヒシヒシと伝わってくる。

 だが、今にも殴りかかりそうな彼女の勢いに、男は内心ひやひやしていた。


「待て待て。落ち着け。文句は街の管理者に言ってくれ。俺に権限はないんだ!」


 門番もまた焦ったように弁明しながら、威圧されたように一歩後退りする。

 その分だけアテラは黙って距離を詰め、対する彼は一層の早口で言葉を続けた。


「それに、万が一の時にはすぐ助けが入る手筈だった。命の危険はなかった!」

「状況が作られたものだったとしても、私達が抱いた思考、感情は本物です」

「勿論、それは分かっている。だが、ああいった状況でもなければ見えてこないものだってある。そこを見極めるための簡易適性試験だ」


 にじり寄るアテラに、猛獣を宥めるように掌を突き出しながら釈明を重ねる門番。

 その姿は厄介な案件を押しつけられたクレーム処理係のようで同情を誘う。


「……アテラ。まずは話を進めよう」


 何となく心が痛み、男はアテラの肩に手を置いて制しながら諭した。

 窓口を責め立てるのは酷というものだ。


「旦那様がそうおっしゃられるのであれば」


 打って変わって素直に引き下がる彼女だったが、ディスプレイは黄色一色。

 門番への敵愾心が残っていることがありありと分かる。


「すまない。助かった」


 それでも門番は安堵したように言い、小さく息を吐きながら姿勢を戻した。

 急に及び腰な態度だ。

 しかし、彼はこの場での対応を責任者から一任されている存在。

 当然、来訪者が暴れ回る事態も考慮した上で選ばれていてはずだ。

 狼に手こずる相手なら容易く鎮圧できる程度の備えがあってもおかしくはない。

 あるいはアテラに怯んだ反応も適性試験の一環で、全て演技の可能性もある。

 最初は頭に血が上ったが、冷静に考えるとこれで済んでよかったのかもしれない。

 いずれにしても、情報源になりそうな相手と揉めても百害あって一利なしだ。

 男はそう自分に言い聞かせ、質問を続けることにした。


「聞いた限り、俺達があそこに現れるのは分かってたってことか?」

「ああ。時空間転移には予兆があるからな。それに、あの草原は配置的に丁度稀人が現れやすい座標の一つで、この街が管理しているんだ」

「稀人というのは、俺達みたいな転移者のことか?」

「そうだな。別の時空間からの来訪者達をそう総称している」

「来訪者達……つまり、俺達以外にも稀人は多数存在すると?」

「稀人というだけで即座に保護するとはならない程度には珍しくないな」


 働かざる者食うべからず、などとすげなく言われるぐらいだ。

 その肩書きを頼みにはしない方がいいのだろう。


「とは言え、転移時には肉体が再構成され、身体能力が向上する。加えて各々固有の特殊能力を得るからな。その辺りは把握しておかないとリスクが大きい」

「固有の特殊能力……」

「超人のように強くなったり、魔法のような力を発揮したり、まあ、色々だ」

「……確かに、それを街で受け入れるとなると慎重にならざるを得ないな」

「だからこその簡易適正試験だ。ある程度危機的な状況に陥らないと、どういった性質を持つか明らかにならないものだからな。人格面も含めて」

「…………成程な」


 門番の言い分に男はそう応じて頷いた。

 心のしこりが全てなくなった訳ではないが、一定の理解はできた。

 これでアテラも少しは落ち着いてくれただろうかと隣を見る。

 すると、多少納得がいってバツが悪くなったのだろう。

 彼女は誤魔化すようにディスプレイを暗転させて空を見ていた。

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