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第5話 自己紹介 カイル

 淡い光が収まり、目の前にいる彼女は七海だ。


「ふあ~、すごいね、聖女様、ザ・聖女!って感じだね。」


 ご自分の事ですよ、分かってんのかな、この人。


「ねえねえ、それよりさ、カイル君の事教えて、この家のこととかさ、」


 いきなり君付け? 


 思い切り怪訝な顔をしてしまったが、どちみち説明は必要だろうと意識を切り替える。


「俺は、家出をしてきた。この家もそのために用意していたんだ。

 しばらく隠れるつもりでいたから、日用品や食料も用意してあるし、もちろんお金も。」


「なんで、家出したの?」


 水色の瞳が興味深そうに、俺を見てる。

 人格が変わるとこんなにも印象って変わるんだ。

 美少女なのは変わらないが、神秘的で凛とした浮世離れした美しさが月の光なら、

 今の彼女は生命力に溢れた陽の光がお似合いだ。


「俺は、生まれた時から前世の記憶を持っていたんだ。大学を卒業して8年務めた会社を辞めて、居酒屋を始めるつもりだったんだ。店舗の契約を済ませて、さあ、これから、ずっとやりたかった居酒屋をやれるんだ!って時に交通事故にあった。森山 大地。31才。七海さんより年上だよ。」


 ちょっとびっくりしてるな。

 そりゃあ、目の前の18才の少年が中身は30オーバーなんて、違和感しかない。

 分かってるけどしょうがない。


 だいたい自分だって聖女の中身が元・女刑事でギフト:狂戦士ベルセルク持ちなんて、

 違和感というより最早、偽造品。 別物ですよ。



「で、この世界で体が動くようになってから、いろんな本を読んで知識を詰め込み、体も鍛えた。

 魔法も覚えた。でもさ、俺、気が付いたんだけど、料理好きなんだよ。たまに厨房に入り込んで

 料理作ったりしたけど、なんか、すげー不満でさ。公爵家に比べたらしょーもないような田舎貴族だけど、やっぱ格式っていうか、習慣っていうかあってさ、せっかく料理を作っても着替えて、ダイニングテーブルに座らないと食べれないし、まして父が亡くなってから、俺が食事をしないと屋敷の者が誰も食事出来ないなんてばかげてると思うんだ。」


 なんか同情的な目で見られてるけど、やっとわかってもらえる人がいた!

 そう思うと、ついつい熱が入ってしまう。


「この世界の常識しか知らない人から見れば、俺が何を言っても、何をやっても”カイル様はお優しいが、貴族としてのお振舞も大切なこと、平民や使用人と同じテーブルで食事などありえない事でございます。”とかなんとか言われて、貴族らしい貴族を要求してその先陣を務めてるのが、私の義母、フォルセティアで、義弟のジェフリードも同じなんだ。」


 ・・・・ただ、二人共、私に良かれと思ってやっているだけに、嫌いはしないが、少々うっとおしい。


「俺は! 普通でいいんだ!  皆がぐちを言ったり、バカな話をしながら酒を飲み、俺の作った料理

 をおいしいって言ってくれる、そんな場所が欲しかったんだよ!!」


 本人にとってはとても大事な熱い思いをきいて、


 転生者として貴族に生まれた時点で普通じゃないけど、と思ったが黙っていた。


 それは、貴族としての義務を義弟に丸投げしたのでは? だが、空気の読める七海さんは黙っていた。


 貴族としてのストレスもあっただろうが、貴族としての特権も享受していたはずで、

 平民に生まれたら生きていくのも大変だったのでは? ・・・それ以上突っ込むのは止めた。



 下手に口出しして、シュバーツェン家に戻られたら困る。

 今、一人きりになるわけにはいかない。

 いつだって女性のほうが現実的である。



 そして、元刑事としての経験から情報や協力を求めたい相手に対しては、不快に思われそうなことは口にしない。そして、相手に対して共感を示す。


 女性としての経験から、とならないところが残念な七海さん。


「そっかー。カイン君もいろいろ大変だったんだね。」


「いや、フレイア様に比べたら俺なんて・・ぜんぜん。」



 カイルの七海に対する好感度があがった。↑    ちょろい奴。



「ところで、カイル君の前世の名前って聞いてもいいかな。」


「俺は、森山 大地。」


「じゃあ、ダイチって呼んでいい? 私の事はナナミって呼んで。」


「そうだね、お互い身を隠すんだから、そのほうがいいよな。

 よろしく、ナナミ。」


「こちらこそ、よろしくダイチ君。」


「えっ、俺ってやっぱり君づけ?」


「だって、ナナミは27才だよ。」


 それを言うなら、俺も31だけど、まあ、いいか。




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