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第36話 傷ついた囚人

~ダイチの家~


ナイフを振りかぶった男はまだブルブルと震えていた。オレ、いつまでこのまま?


「ねえねえ、ハットリ、この村人Aは、いつまでこのままにゃの?」

「ずっと、このままにゃら、血が通わなくなって腕が壊死するのにゃ。」

「にゃるほど。」

「どーでもいいのにゃ。」


良くねーから! なんで、どうでもいいんだよ、村人でもねーしよ、

村人Aの扱いが耳に入った村人B,Cはとばっちりを恐れて寝たふりを決め込んでいた。

そして、見た目は厳ついが、優しい巨人族のドローウィッシュは、同情を湛えた目で村人Aを見ている。


「ところで、イルガーとサイゾーくんは大丈夫かにゃ?」

しのぶがボソッとつぶやいた。


「サイゾーが、張り切り過ぎてなきゃいいんだけどにゃ。」

みんな、おなじ心配をしている、サイゾーはとても優秀なのだが、戦闘能力は一番低いため、第一線に出ることはほとんど無い。縁の下の力持ち的な役割なのだ。


だからなのか、最前線に出ると張り切り過ぎてしまうことが、何度かあったのだ。それで一度調子に乗りすぎて苦い目に合ったことがあり、それはもう、見るも無残な落ち込みかただった。


普段は目立たず、淡々と任務をこなすのだが、その反動なのか、スイッチが入ってしまうと浮き沈みの激しいおとこ、それがサイゾーくんなのだ。


張り切りすぎてなきゃ・・・、その言葉は猫又達を不安にさせた。一緒に行ったのは、脳筋、いや、武闘派のイルガーだ。サイゾーを上手くあしらうというより、振り回される光景が浮かんでくる。


「・・行きますかにゃ、」

ため息をつきながら立ち上がるハットリと姫子。

「待って、私も行くわ、前から気になってたのよね、ダイチの家のこと、領主の後継ぎが家出して何も無しっておかしくない?  なんか臭うのよね、フレイアも落ち着かないみたいだし。」


元刑事のカンが騒ぐらしい。

「わかったのにゃ、なら、私が留守を守るから、安心して行ってくるのにゃ。」

と、シノブが答えて、じゃあ、早速と出掛けようとする一人と二匹に後ろから声がかかる。


「・・・・これ、どうすればいい?」

ドローウィッシュが指さしたのは、村人Aだ。もうかなり顔色も悪いし、指先が白くなっている、あまり、血が通っていないのだろう。


「好きにしていいのにゃ。眉間にささっている針を抜けば体は動くのにゃ、ザコ過ぎて忘れてたのにゃ。」


泣きそうな顔の村人Aと、気の毒そうに見つめるドローウィッシュ。

「・・わかった、好きにする、・・・あと、ダイチ、どうする?」

ダイチは危機感も無く眠りこけている。

「そのままでいいわ、今は役に立たないし、主役はあとから来ればいいのよ。」


役に立たない主役と、ザコキャラ村人A、B,C。誰からも必要とされないまま物語は進む。




◇    ◇    ◇


~シュバーツェン男爵家~


ジェドを置き去りにしたまま、近づいてくるエリナとバーサック、


「あーあ、せっかく、暗示をかけておいたのに、魔石だってチョー大量に使ったのに、なに、邪魔してくれてんの、この、ダメ虎とダメネコは。」

「しょせん、頭の悪い獣は、我々の崇高な使命など分かる訳もない。」

「そっかー、頭悪いから、しょうがないのか、なーんて、言う訳ねーだろ、弁償しろよな。」


バーサックが壁に手を触れると、魔法陣が浮かびあがる。

「導きの鎖を身につけしもの、大いなる英知の下に姿を現せ、召喚呪、その楔をもって応えよ。我らの敵を滅ぼすために。」


詠唱が終わると、魔法陣が揺らぎ、その中から、両目、両耳を潰され、塞がらない傷口から血を流し、のたうつように蛇人が現れた。


「キャハハハ、そいつは目も見えず、耳も聞こえない、ただ、相手を殺すしか出来ないおバカさんなんだよ、あんた達の相手にちょうどいいでしょう。」


巨大な蛇の体は4~5メートルはありそうだ、憎悪を刻んだ顔をゆっくりとイルガー達に向け、殺意を撒き散らしている。蛇人の殺意を浴びながら、ゆっくりと後ずさるイルガーとサイゾー。


強者の覇気に怯えたのではないが、戦いたくなかった。囚われて傷つけられ、抗うことも出来ずに憎しみを操られているものを、これ以上、傷つけたくなかった。後ろで耳障りな笑い声をあげているものならば、容赦なく戦えるのに、傷を塞ぐことすら許されず流している血が涙のように見える蛇人に手を振り上げることをためらってしまうのだ。


どう戦えばいいのか?    じりじりとフェルミーナを庇うように後退していく。


だが、そんなイルガー達の気持ちなど届くわけも無く、がむしゃらにつかもうとする手をはたき、大きく開けた口から滴る毒液を避けることで精一杯だ。冷たい汗が背中を伝って落ちる。


「さっさと、始末しなさーい、エリナも手伝ってあげるから、感謝してよね。」

いつの間に用意したのか、手には槍を持っている、それは勢いよく投げられ、蛇人の体に突き刺さる。


キシャアアアー!声にならない悲鳴をあげてのけぞる蛇人の後ろから、更に響く笑い声。

「ほーら、早くしないと、もっと痛い思いするんだよ。キャーハハハ。」


さすがに、反撃するべきかと、重い心を無理やり奮い立たせる。仕方がない。

いっそのこと、この苦しみを終わらせてあげるほうがいいのかもしれないと、ぐッとやるせない思いを呑み込み、体に力を込め、蛇人の体に飛びついた。


目が見えぬままに、振りほどこうと更に暴れる蛇人に、しがみつき腕に力を込めるイルガー。これ以上傷つけることなく気を失ってくれればと、ギリギリとその腕に力を込めていく。

力と力のぶつかり合い、そんな空間が一瞬にして、固まった。


【ギフト:狂戦士ベルセルク、ギフトスキル:怒髪天。】



実は、少し前にこの場に到着していたのだが、じりじりと後ずさるイルガー達を見て、少し様子を見ることにしたのだ、何かあればこの距離ならすぐに動ける、そう思い潜んでいたが、エリナ達のあまりの態度に我慢出来なくなったのだ。


「し、師匠、い、いいところに、きて・・・くれた。力を、貸して、くれ。」

途切れ途切れに言葉を絞り出す。


ギフトスキル:怒髪天は敵味方の区別なく、その場にいる者全員に一瞬の硬直をもたらす。敵だけでなく、イルガーもまだ体に力が入らない。


「そんなに手こずるようじゃ、まだまだ特訓が足りないようね。」


一人、悠然と近づいていくナナミ。近づく気配に睨みつける蛇人に少しも構うことなく、近づき、手を触れる。柔らかな光が辺りを包み込み、何もない空間が、パリンと音を立てて、割れた。蛇人の体に埋め込ま手いた魔石が、砕けて破片となり、体から零れ落ちる。砕けた破片は黒い霧となり、薄れて消えた。





お読みいただきありがとうございます。


初めて1話の中で、場面転換してみました。上手く繋がり読みづらく無ければいいのですが・・。


よろしけば、ブクマ、感想、評価↓☆等をポチッとしていただけると、一番の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


1日1話、更新していく予定です。


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