第21話 フロアボス
3つの洞窟が見えてきた。
「こんなところに、洞窟があったんだな。これは、気が付かねーかもな。」
「本当に、近くまで来ないと分からないわよね。岩陰に隠れるように入り口があるんだもの。」
イリアンとアナが洞窟の入り口で話込んでいると、
「んなとこで、突っ立っておらんで、さっさと進まんかい。」
気合いの入ったバルサがずんずんと進んで行く。
「おー、ここじゃな、確かに鍛冶神様のシンボル、炎と刀が刻まれており、あと、この言葉は何じゃろう?ワシにはわからんのう、じゃが・・・ふーむ、それにこの大岩はなにやら結界がかかっておる、近くまで進むことは出来るがな、」
コンコンと何も見えない空中を叩くと、軽い音がして手がはじき返される。
・・・ダイチとミハルは何も言わず、少し後ろに立ち、祈るようにタイガーヴァイスのメンバーを見ていた。その結界より先はダンジョンエリアとなり階層を踏破しないと進めない。まさか、ミハルの・・・・ダンジョンによる結界などと、分かるはずもない・・・大丈夫だ。
そう、思い、言い聞かせても不安が募る。ここでばれたらお話にならない。
しばらく、緊張した時間が続くが、おそらく1~2分程だったろう。
「これ以上、見てもわからんわ。じゃが、気になる点もあるんで、なあ、ダイチとナナミが良ければ、ドワーフの長老を連れてきたいんじゃが、構わんか?」
ホッとした様子を悟られないようにしながら、
「俺達は、別にかまいませんけど・・なあ?」
こくこくとナナミが頷く。
「気になることって、なんですか?」
さり気なく聞きながらも心の中では、なんかマズイ事やったか・・・・? ヤベエ、ドキドキする、心拍数があがっていた。
「ワシらドワーフは、読み書きは出来てもな、人族のように何かを本に残すことはあまり無いんじゃよ、鍛冶の技術は本に残すものではなく体に刻むものだといわれておるからなあ、ただ、長老ならワシの知らんこともでも何か知っておるかもしれんと思ってなあ。イリアン達もそれでいいかのう?」
「俺らは別に・・・バルサの好きにすればいいと思うけど、ダンジョン見てから決めれば良くね?」
「そうね、はっきり言ってこの場所より、ダンジョンのほうが興味あるし。」
「だよな。」
「オレも、そう、思う。」
そうと決まればと、四人はさっさとダンジョンへ移動する。バルサは、何か気になるように後ろを振り返りながらも進んで行った。
1階層は、スライムやゴブリン、時折コボルトが出る程度なので、このメンバーの実力では何の問題も無くサクサク進む。ドロップ品は俺が拾ってアイテムボックスに入れる。
後で分けましょうと言ったがたいして金にならないものしかないので、どうでもいいといった感じの顔をされてしまったよ。そんな事よりドロップ品が出たことで、ここはダンジョンに間違いない!と、盛り上がっている。
ダンジョン以外で討伐された魔物は、ドロップ品にならないからな。
そして、フロアボスのビッグスライム(アース:土属性)ランクD。
ビッグスライムは魔法が効きにくい。かといって打撃もプルプルのスライムボディにはあまり効かないんだよな。どうやって攻撃するのかと思って見ていた。・・・・だって俺の時は戦ってないからさ。
そうしたら、アナさんが一歩前に出て、杖を構えた。
「凍てつく乙女の息吹よ、その白き腕を広げて、己を示せ、【白氷霧】。」
ビッグスライムの周りに霧が立ち込め、3メートルほど広がったところで、カキンと凍りついた。
その後は、虎人族のイルガーさんがビッグスライムをタコ殴り。表面が薄っすらと凍っていたので、ヒビが入り、更に殴られ削られてそのまま核を破壊した。力任せかよ、 スゲーな。
ビッグスライムを討伐し、下層に向かう途中で、俺の時は、同じビッグスライムでも(ウオーター:水属性)でしたよと話しをしたら、フロアボスが何種類かランダムに入れ替わるダンジョンもあるが、そういうダンジョンは攻略が難しいことが多いと言っていた。
次の階のフロアボス、ワイルド・ブルーボア。
ワイルドボアは1メートルほどの大きさで頭から一直線に突っ込んでくるだけだが、ワイルド・ブルーボアは体も一回り大きくなり、カーブをかけて体の側面でぶつかってくることもある。ちょっと厄介な敵だ。
巨人族のドローウィッシュが体当たりを受け止め、イリアンが大剣で切りかかり、バルサが戦斧で止めをさした。
格下の相手なので当たり前のように倒していたが、この世界で冒険者達が魔物を狩るのを初めてみた俺は
実はワクワクしていた。
俺も貴族の息子として剣も魔法も習ったが、どちらも人並みどころか魔法に至ってはすべてLv,1で・・・・・光球を灯したり、道具に組み込まれた魔石に魔力を込める。なんていう、いわゆる生活魔法で、攻撃魔法は使えないという・・・程度だったからさ。
ナナミも興味深そうに彼らの戦いを見ていた。彼らにダンジョンまで来てもらったのは、一般的な冒険者のレベルでどれくらいのスピードで
進むのかを見たかった為もあったしね。
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