ゴブリンの収穫物
一言で言えば、大量だった。
採取でも「大漁」って使って良かったんだっけ? 言わないね。うん。
捕虜――母ゴブリンたちが採ってきたのは、山菜各種。これはいい。
けど、困ったことに「雑草各種」まで採ってきていた。
このあたり、僕らと野生の母ゴブリンたちの間にある、大きな認識の溝を露呈させた。
すなわち。
「(お腹が壊れるかもしれないけど)食べても死なないのが、食べてきた植物」という事。
野生のゴブリンに必要なのは栄養価とか、味とか、香りじゃないんだね。
すべては満腹感のため。
飢えに苦しむのが嫌だから、雑草とか、木の皮とか、食べられなさそうな、お腹を壊しそうな物まで採って食べる。水が足りなきゃ泥をすする。
生産性の低い集落では、立場の低いゴブリンはそこまで悲惨な生活だったか。泣けるね。
僕は彼女らが採ってきた物の中から、食べられると思える物だけをピックアップ。あとは香り付けなどに使えそうなものを残す。
で、残りは廃棄。母ゴブリン達も食べたくなさそうなものを特に選ぶだけの簡単な作業だった。
だったらなんで採ってきたのか?
集落にいた頃に食べたことがあったから、僕が「採ってきたら美味しい物が食べられる」って言ったからです。
完全に僕のせいみたいだ。
……気になったのは「食べたことがある」って記憶。
ダンジョンがリセットされては新たに生まれるゴブリンたちに、どうして過去の記憶があるんだろうね?
不思議だなー。
ゴブリンたちが採ってきた中で、特にうれしかった収穫は「アスパラガス」と「ジャガイモ」だ。
森で採れるものなのかと思ったけど、採れたんだから喜んでおこう。理不尽かもしれないけど、ダンジョンだからの一言で済ませればいいんだよ。何も持ち込まない人のための救済措置かもしれないし。
と言うか、全然気が付かなかったよ。どこにあったんだ? 地中のジャガイモはともかくアスパラガスは見れば分かるんだけどね。
分からなかったから、あとで地図を確認しておこう。
ついでに、食べられるけど嬉しくないのがグリーンピース。
細かい事を言うと「サヤエンドウの成熟しきる直前」なんだけどね。全然嬉しくないよ! もっと早くに手に入っていれば「サヤごと食べてサヤエンドウ」とか意味不明な事を言えたのに!
逆にもう少し後ならエンドウ豆。こっちはこっちで苦手だったりするんだけどね。グリーンピースよりはマシかな?
残るそこそこ嬉しい物は、ヨモギとかレモングラスのような香草。
写真判断では「行者ニンニク」と思われるものもあるけど、正直、見た事も使った事も無い食材だけにどうすればいいか困るモノなど。
一応は試してみようと思うけど、ちょっと怖いね。
食べれそうなものに関しては、ある程度は栽培してみることにした。
もちろん畑を購入することなく、ただの土地に森の土を盛って。
すぐに増えることは――やりようによっては可能だろうけど――無いので、普通に栽培してみるつもりだ。
アスパラガスやジャガイモはそこまで手間がかからないので、畑作初心者の僕らにピッタリだと思う。
ダンジョンのホームで作物を育てても上手くいかないって話は聞いているけど、うん、何とかなるんじゃないかな、たぶん。
ならなかったとしても大きく被害が出ることは無いと思うし、ローリスクハイリターンだと思うよ。
まずは、やってみる。
たとえ失敗したとしても、笑ってごまかせばいいんじゃないかな。




