現地協力者
まぁ、素人考えの保存食が、そういくつも上手くいくはずもないよね。
僕は自分の現状に少し泣きそうになった。
瓶詰は上手くいったけど、瓶がそんなにたくさんあるわけではないし、そんなにたくさん持ち込みたくもない。
つまり、あんまり意味がない。
保存食の開発というか、それが上手くいかない原因の一つである食材の少なさを僕は問題視した。
……というか、ネットで相談したら総ツッコミされた。
とにかく作物の種類が増えない事には何もできないって言うのが結論だ。
肉は猪肉がメインだけど兎肉っていう変化球があるからそこまで細かい事は気にしていない。
兎肉って、鶏肉みたいな部位があるから色々応用がきくんだよね。
ただ、野菜関係は僕が力を入れていなかったこともあり、タケノコぐらいしかない。
で、あとは穀物担当のドングリが残るだけ。
……五穀が一つたりともないとか、僕は何をしているんだろうね?
ダンジョンで作物を増やすための方法は二つ。
ダンジョンから持ち込むか、EPで日本の作物を固定・交換するかだ。
こっちで何か見つけるのはコストがかからないけど、運次第。
ダインジョンにある作物は僕が選べるわけじゃないからね。
逆にEPで固定・交換するのは大きくコストがかかるのが痛い。
それに交換はまだできない理由がある。畑をまだ購入していないんだよね。
オーヴァーランダーのホーム拡張にはいくつか制限がある。
その一つが「種や苗とのEP交換は畑の購入を済ませている事が前提である」というもの。
畑を買わずに土地拡張と竹の増殖力だけで済ませていると、こんな落とし穴に引っ掛かるわけだ。
畑の購入費用は500Pで、小屋の改築貯金の1割ぐらい。ついでに、作物と交換するときにもEPは要る訳で。1000Pは使う事を考えないといけない。
正直、今はそこまで使いたくない。その前に小屋の改築を終えたいんだよね。そしてすぐに換金をするんだよ。
こうなるともう、乾麺大量持ち込みで誤魔化してやろうかと思ってしまう。
最初期のアドバイス、「食料は乾麺持ち込みが一番効率が良い」って言葉に従ったおかげで、まだかなりのストックがあるからねぇ。ちょっとずつ持ち込んで消費しているけど、インスタントラーメンはゴブリンたちにあんまり評判が良くないからあんまり減らないんだよね。
まぁ、冗談は横において。
「そんな訳で、諸君には「食べられる草など」を持ってきてもらう」
「ギュギャッ!?」
「卜伝。森の案内と護衛、よろしく」
「ギュイッ!」
僕は捕虜ゴブリンを前に、初めてのダンジョン活動を命じた。
こいつらは非戦闘員なので、卜伝と刀4匹を護衛に付ける。
目的は山菜など、森の恵みだ。
とりあえずさ、原住民に食べられるものを持ってきてもらうっていうのが一番いいと思うんだよね。
僕らと違って、もともとこの森から恵みを受け取っていた連中なら、食べられるものを知っていると思うんだよ。
念のため、目的はちゃんと説明するよ。
「これはより美味しい物を食べるために必要な事なんだ。
みんなが集めてくれたもので、今より良い物が食べられるようになる。頑張ってもらえないかな?」
「ギュッ!!」
美味しいもの。
そう説明すると、捕虜ゴブリンたちは顔をほころばせて元気よく頷いた。実に現金な連中である。
……そして何気に、こいつらも僕の言葉が分かるみたいな? なんでだろうね? 実はゴブリンって賢い?
育てる場所については、綿花の時に作ったポットの追加生産で。
我ながら貧乏性だとは思うけどさ、節約できるところは節約したいんだよね。




