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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
若鳥オーヴァーランダー
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コミュニケーション

 午後になり休憩が終われば、それぞれが与えられた仕事に向かう。

 僕の場合は仕事の指示を出す方なので、全体の方針を考えるのがお仕事になる。


「信綱らは――動かさない方がいいよね。

 蔵人らは――いくつか頼みごとをした方がいいかな? 家畜を育てるなら、放牧用の柵とか家畜小屋を作らないと駄目だし、そっちからかな?

 刀らの仕事ぶりは、まぁ、こんなものかな。体も出来てないし、まだまだこれからだよね」


 全体を把握するためには、誰に何が出来てどの程度どれくらいで出来るかを知っておく必要がある。

 あとは僕らが何をしなければいけないのかの把握が大事。

 そうでないと指示が出せないからね。

 一見仕事をしていないように見えるリーダーのお仕事って、だいたいこんなものだと思うよ。



 で、僕は蔵人たちに、捕まえる予定の猪用に、小屋を作るように言っておく。

 捕まえる前に用意しないと、酷い事になるからね。畜産用の小屋の写真や動物ふれあい関係の動画を使ってイメージを教えておく。僕は実物を何度か見たことがあるけど、それを言葉にできるほど語彙があるわけじゃないからね。分かりやすい方法を採った。


 ついでに、刀たちには僕らがいない間にロープ替わりの蔦を集めておくように言ってあったのだけど、それを蔵人に渡しておいた。

 これは柵を作るための建材として使って欲しい。

 他にも、溜め込んである木材の使用許可を出しておく。小屋を作れって言うなら必要だよね。


 細かい話をするなら、切ったばかりの木材は建材として使えない。乾燥していない木材は中に水分があるので、乾燥の過程で反ったり割れたりと、酷い事になるのだ。

 でも、僕らはそこまで細かい事を気にするレベルに無いからね。そのあたりは教えてあるけど、基本的に何もしないで使っているんだね。

 もっとも、乾燥を待つ時間が無いって言う事情もあるけど。





 指示出しが終われば、あとはフリータイム。

 ドローンの練習はバッテリーの都合で出来ないので、魔法の練習や簡単な戦闘訓練をするけど、露天風呂用に

石材でも集めようかと思う。



 ダンジョンは森の中という事もあり、

様々な素材が手に入るようになっている。

 でも一番はやっぱり木材で、次点に猪やドングリのような食材、そしてポットや畑に使えそうな土ときて、石材はあんまり手に入らない。


 石材欲しさに古代の人々は山を掘り尽くして平地にしたとかいう話を聞いたことがあるけど、やっぱり山の一つでもないと良い石は手に入らないのかもしれない。



 それでも僕が両手で抱えないと運べないような重くて大きな石はあるわけで、その辺の回収も刀の仕事として振り分けている。

 石やその他素材の位置は毎回固定なので、刀たちには巡回ルートを作って効率よく回収するように言い含めているんだけどね。今のところ、回収しきれていないというのが実情だ。


 僕は、そんな刀たちの取りこぼした石を中心に集めて回る。

 そこそこ大きめの竹籠一杯に石を入れると持てなくなるから、半分ぐらい、たぶん30㎏の分量で持ち帰るようにしている。


 ネットで調べてみたんだけど、20㎏以上は1人で持ち運ぶ重さじゃないんだってね。20㎏以上は2人作業で運びなさいって、労働者の健康管理業務担当者、安全衛生管理者? そんな役職の人が管理・監視するみたい。

 この年でぎっくり腰は嫌だなぁ。

 腰を痛めたらオーヴァーランダーで稼げなくなるから、重い物の持ち運びには注意しないといけないよな。


 そう思うとバトル系のゲームや漫画のキャラってずるいよ。

 どんなに重い物を持っても、体に負担のかかるバトルをしても腰を痛めたりしないんだから。重い物を持つより体に負担かけているよ、絶対。

 でも、激しいバトルの結果、腰を痛めました、ヘルニアになりましたじゃ恰好が付かないからしょうがないよね。



 そんな風に、僕が石を集めて露天風呂の資材を溜め込んでいると、刀たちが切り倒した木を、3匹がかりで運んでいるのが見えた。

 僕が石を集めるって言いだしたから、その余力で木材を優先したみたいだ。前にやや小柄な2匹、後ろに大きい1匹といった並びだ。で、小さい2匹は鉈を持って付き従っている。

 体の大きい3匹は荷運びで、残る2匹は周辺警戒をしているらしい。なかなか考えているね。



 あの子たちは長さ4mぐらいの針葉樹を運んでいるけど、実際にはもっと背の高い木を切って、先端や枝を切り払ってから運ぶようにしているんだ。

 枝も乾燥させれば薪として使えるんだけど、運ぶ時に邪魔だし、何よりそういった処理をした方が木材は軽くなる。


 これは後で聞いた話だけど、刀5匹は初日に枝払いとかの作業を行い、しばらく放置して少しでも乾燥して軽くなることを期待しているって話だ。

 きっと数10gしか変わらないだろうけど、それでも色々と考えながらしているっていうのは良い事だよ。





 刀たちは僕に気が付いて挨拶しようとするけど、先に荷物を置いてからだと言って追い払う。

 僕は現場の邪魔をしたいわけじゃないからね。優先順位を間違えないように、あとで誾に頼んでおこう。


 そこでふと思ったんだけど、誾以降、日本語をしゃべれるゴブリンが増えないよね。

 僕らのコミュニケーションに言語の壁が立ちはだかるわけだけど、これ、どうにかならないかなぁって思う。


 僕がゴブリン語を覚えるか、新しい、別のゴブリンが日本語対応になるか。

 どっちでもいいから、通訳になれるゴブリンがもう1匹ぐらいは欲しいと思う、今日この頃。

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