ドローンの練習
仮組みした拠点で一夜を明かし、迎えた翌朝。
最後に不寝番をしていた信綱と誾は眠そうだが、義輝ほどではない。
不寝番は蔵人と卜伝が最初で、一番嫌な間は義輝1匹、最後に信綱と誾という順番だ。
これは今居る5匹の中でも特に森に強い義輝が一番厄介な時間帯を請け負った格好となっている。
うがいをして、ご飯を食べたらみんなに眠気覚ましの黒ガムを渡しておいた。森では眠いからって無様を晒すのは危険だからね。
ただ、受け取ったみんなの顔は一様に微妙だ。眠気が飛ぶのは確かだけど、好んで口にしたくないっていうのが正直な感想なんだろうね。
食事の片付けが終われば撤収だ。
僕らは荷物をリュックにまとめると食後の休憩もそこそこに移動を開始した。
「それにしても、信綱たちが出くわしたっていうゴブリンは出なかったね」
「ここよりももう少し先でしたから。おそらくですが、縄張りギリギリだったのか、こちらを襲う為の戦力を整えている最中なのでしょう」
「……後者かな、たぶんだけど。
縄張りの近辺っていうなら、何もしないっていうのはあり得ないよ。前回と違って人数がいるから手を出せなかった、が正解じゃないかな」
撤収を急ぐ理由だけど、無駄な戦闘をする気が無いからなんだよね。
前回偵察に出た信綱たちは拠点から少し先まで探索ををして、休憩して、戻る最中に襲われたらしい。
今回の拠点製作中、それらしい連中を見かけなかったのは少し気になっていたんだよ。
人でも時間も足りないから、拠点製作にウェイトを置いていたぶん、“周辺探索はまた後で”にしていた。
ちゃんと調べれば、この周辺に新しいゴブリンの集落があると思う。それをどうするにしても何にしても、先に進むなら殺る事を殺らないといけないのは間違いないと思うんだよね。
次回以降を考えると、攻撃的な防衛設備も必要だろうね。
お泊りから帰ってくると、残る時間はそんなにない。
ホームに戻り寝て起きてと体を休めれば、すでに滞在時間は半分を切っていた。
それでもやる事は変わらず、みんなは窯作りや衣服の作成を行う。
で、刀が猪の解体やタケノコやその他の採取を終わらせているのを確認し、僕はその輪を離れ、ドローンの操作練習をすることにした。
「GPS機能は使えないから、そっち系の機能は調べなくてもいいかな?」
僕はドローンの電源を入れ、軽く宙に浮かせるところから始めてみる。まるで据え置きゲーム機のコントローラーみたいな物を使って操作開始。
基本の操作は簡単で、初心者の僕にでも簡単にできた。
進行方向をカメラで確認できるから、僕は基本的にそれを見ながら操作すればいい。その操作も上下、前進後退、左右への旋回と、とても簡単にまとめている。
ちょっと変わったところでは、タッチパネルを使っての追跡設定と、録画ボタン。
僕が覚えておきたい操作はそれぐらいだ。
使えないのはGPSと連動している自動帰還機能と、マップ機能。
人工衛星やら周辺マップなんて有るはずもないので、この2機能が使えないのは当たり前だ。
まぁ400万円以上出せばその2機能がダンジョンでも使える、超高性能ドローンも手に入るんだけど。……自力でマップを作って位置情報を把握するとか、最近のドローンはすごいよね。オーヴァーランダーのプレイヤー向けに開発されたって話だよ。
僕は約1時間の操作でバッテリーが空になるまでドローンで周囲を飛び回った。
それを見ていたゴブリン達が騒いでいたけど、ドローンの細かい説明はしないよ。だって、どうやって説明すればいいか分からないし、もしかしたらこれも魔法のネタになるかもしれないじゃないか。
もしかしたら、近い未来には背中にプロペラを付けたゴブリンが空を飛ぶようになるかもね。




