ドローン
信綱が魔法を使えるのは分かったけど、正直、覚えたての魔法は文明の利器に頼らず「火を点ける」だけの物でしかなかった。
あんまり言いたくないけど、ゲームでも序盤で覚える様な攻撃魔法のような使い方は出来ないみたいだ。アニメなどで想像力を補えばマシになるかな? 今後の課題って事にしておこう。
信綱の火魔法は、ラノベなんかで言う『生活魔法』がそのイメージに近い。魔法で何が出来るのかを試してもらったけど、結局は「棒状の物の先端から火を出す」のが限界だ。
有用であることは間違いないんだけど、ライターの一つでも持たせれば代用できるんだよね。どうせなら水を出すような魔法も覚えて欲しい所だけど、≪火魔法≫は有っても≪水魔法≫は無いから、今は無理なんだけどねー。
もっとも、使えるって事が一番重要なんだけどね。たとえ上限が100でも0と1の差は本当に大きいんだ。
≪火魔法≫はスキルなんだし、使う事で熟練度が上がっていくのは間違いない。
しばらくは限界まで魔法を使うように言っておこうか。
熟練度が上がればできる事が増えるかもしれない。
信綱が魔法を使える事は、他のゴブリン達にも広めておいた。
とりあえず「頑張ればできるようになる」実例があれば、他のゴブリン達も魔法使いになれるかもしれない。
僕も同じことが出来ないか、1日に10分程度の時間でもいいから頑張る事にしてみた。
ただ、僕がそうやって頑張るところは見せないでおく。
僕がcome着火で火を点けるところを見せて、火魔法のイメージを固める方が重要なのであって、「僕が練習している=あれは魔法ではない」なんて考えられるとジャマをすることになりかねないからだ。
なので、僕は練習にあまり時間を割けないし、人目のあるところでは絶対にやっちゃいけない。
次の魔法使いが誰になるかは分からないけど、もしかしたら刀の誰かって事も十分にあり得る。
若いうちから魔法に触れていると、出来るようになるのが常識になるかもしれないからね。
そんなわけでちょっと頑張る事が増えて、今回のアタックも無事に終了。
ホームでもできる木工用の表面塗料の作り方を調べるとして、僕は日本でやらなきゃいけない課題をこなす事にした。
そうやって日本ですごしていると、インターホンが我が家への来客を告げた。
「新田さーん、お届け物でーす!」
オーヴァーランダーをやるうえで、とても便利でいろんな人が使っているもの。
ダンジョン攻略をする為の、重要なアイテムを運んできたんだ。
ただ、これってかなり大きいんだよね。
持ち込むのがとても大変で、運用も難しい。
使いこなせるかどうかは僕しだいって言う難物でもある。
今度のアタックはこれの練習だけでたくさん時間を使っちゃうだろうね。
アタック39回目。
僕は普段の荷物に加えてドデカい箱を無理矢理抱えてホームにやってきた。
箱の中身は、来たばかりの無人偵察機だ。
1万円未満の安いオモチャ程度の物ではなく、10万円出して買った、それなり以上にしっかりした作りのものだ。
オーヴァーランダーのプレイヤーは、かなりの数がこのドローンを運用してダンジョン攻略をしている。
ダンジョン攻略は航空機を用いての情報収集が有効であることが多く、ドローンはその条件に見事に当てはまるんだ。
僕としてはもっと早く欲しかったんだけど、手持ちの資金に問題が無くても、完全受注生産のために発注してから今日までの時間が必要だったんだ。
選んだモデルは性能への信頼からプレイヤーから人気があるからね。在庫は全て捌けているんだよ。ずいぶん前に予約してようやく届いたんだよ。
ドローンがどれぐらい有用かと言うと、前回の信綱らが8時間かけて頑張って偵察した範囲であれば1時間もあれば余裕で往復できるっていうほど、移動速度がある事だ。日本では利用に色々と制限があるからできない事も、こっちでなら出来る。
まぁ、地上からの視点と上空からの視点で栄えられる情報に差があるから、信綱らの行動が無駄だとは言わないんだけどね。
ドローンの投入は襲撃が終わった後を予定している。
さすがに一回も触った事が無い物を戦場に持ち込む勇気は無い。
10万円は僕にとって安くない金額だからね。
上手く扱えるわけでもないし、まずはホームで練習してからでいいと思うよ。




